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デジタル化は、スポーツをどのように変えていくのか

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コロナ禍によるロックダウンによりスポーツイベントが概ね中止となっているため、TVネットワークは通常通りの番組を放送するのに苦労している。そのため、最近ではスポーツチャンネルでもeスポーツを見かけることが多くなっている。これが、スポーツのデジタル化をeスポーツと同一視する人が多い理由の一つかもしれない。しかしながら、スポーツとデジタル技術の融合は、流行りのビデオゲーム大会だけに見られるものではない。

スポーツ業界は、他にも多くの点でデジタル化の恩恵を受けている。まずデジタル技術は、より高品質で魅力的な試合映像の配信を可能にしている。デジタル化の発展により、視聴者はマルチアングルや完璧なタイミングでの再生やスローモーションカットを楽しむことができる。また、ボールトラッキングシステム「Hawk-Eye」のようなAIを活用したソリューションは、審判の判定や得点を、より正確に視聴者に表示する方法を提供している。これらのソリューションは、試合に人間が関与することの欠点に対処するものともいえる。

しかし、スポーツのデジタル化がもたらすインパクトは、スポーツクラブやイベント管理、ファン体験、競技のパフォーマンスの分野でも多く見られる。これらはカメラからは見えないところで起こっているとはいえ、チームのオーナーやマネージャー、スポーツ愛好家、アスリート自身は、これらの利点が確かに存在することを知っている。

クラブやイベント運営における改善

雑誌『APSTRACT: Applied Studies in Agribusiness and Commerce(アグリビジネスと商業の応用研究)』に発表されたレポート、「デジタルテクノロジーがスポーツをどのように変えていくか」は、デジタル化とはあまり結びつかないような本質的な視点を提供する。デジタル化による、スポーツクラブやイベントの運営方法の改善である。

この研究では、デジタル化がクラブのインフラやセキュリティ、チームの組織、スポンサーやサプライヤーの管理にどのように役立っているかを明らかにしている。同調査では、2018年ワールドカップでのサッカードイツ代表チームの成功例として、ソフトウェアプロバイダーのSAPの助けを借りてデータ分析を採用したことが挙げられている。タレントスカウトも、直感や主観的な評価に頼るのではなく、選手の将来性やリクルート情報をデータベースにすることで、デジタル技術の恩恵を受けているといえる。

一方デジタル化により、試合やその他のスポーツイベントの組織化やプロモーションが容易になる。また、スタジアムや施設の管理も、より便利で合理的になる。さらにデジタル技術は、審判、アンパイア、ラインマンなど、審判を行う人たちをサポートする。「ディシジョン・レファラル・システム (DRS)、ホット・スポット、ショート・トレーサー、レーダーガン、スニコ・メーターなどのシステムや革新的な情報技術は、スポーツにおける公正で偏りのないジャッジを提供するのに役立つ」と、前述のAPSTRACTのレポートは指摘している。

ファン体験の強化

ファンも、スポーツ業界のデジタル化から恩恵を受けている。「デジタル技術は、スポーツ業界にかつてない成長の機会をもたらし、革新的でカスタマイズされた体験を通じて、ファンとの距離を縮める可能性を提供する」と、ピート・ジョージオ氏らはDeloitteのコラムで言及している。

スポーツコンテンツは未だにテレビを通して視聴されることが多いが、グラビョによる「OTT Video Trends Report 2019」で発表された調査では、スポーツファンは、スポーツ関連のコンテンツにアクセスするためにスマホを利用する可能性が高いことが明らかになっている。デジタルメディアプラットフォームの普及により、スポーツファンは試合観戦や統計情報の閲覧、お気に入りのチームや選手に関するニュースの閲覧、その他の関連メディアへのアクセスなどに関し、デジタルという、より便利な選択肢を手に入れたのである。

またデジタル化によりファンの熱狂をさらに高めるために、バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)を導入することも可能になった。これらのテクノロジーは、ファンのロイヤリティや顧客管理プラットフォームから得られるデータを活用して、ファン体験をカスタマイズするのに役立つ。さらに、コロナウイルスの健康被害のためにスポーツイベントが未だに禁止されている場所でのバーチャルな交流場所の創出にも役立っている。

さらに、スポーツ業界へのデジタルソリューションの導入は、ブロックチェーンの活用の可能性をも高めている。この技術は、例えばチケットの客引きの問題を解決する可能性があると考えられている。ブロックチェーンはチケット流通の厳格な規制とセキュリティを容易にし、乱用的な客引きを減少させる可能性がある。

またブロックチェーンは、ファンがゲームを楽しみながらグッズなどの商品を購入することを可能にし、ファンにも歓迎されるような新しい収益化の方法をチームに与える。つい最近、デジタル取引所を運営するGCOX社と有名なサッカーリーグのLaLigaが協働し、ブロックチェーン主導のオークションプラットフォームを立ち上げた。このオンラインオークションシステムは、デジタル資産の利用を好むスポーツファンに新しい体験を提供するものだ。

GCOX-LaLigaの共同創設者であるピーター・チャン氏は、「現在のコロナ危機は、消費者の習慣と私たちのチームの運営方法を一変させた。私たちのチームは現在、LIGAのファンに真のシームレスなマルチチャネル体験をもたらすことのできるエキサイティングな試みに取り組んでいる」と、述べている。

アスリートのパフォーマンスの向上

アスリートも、デジタルシフトの恩恵を受けている。「特にデジタルツールの活用は、より効率的なパフォーマンス測定、より良いトレーニング計画、より整理されたデータに基づいた健康とリハビリテーション計画につながる」と、チャン氏は述べている。様々なウェアラブル端末やIoTデバイスは、アスリートのパフォーマンスやコンディションをモニターするのに役立つ。そして、収集したデータを処理・解析し、試合結果を向上させるためのより良い戦略を策定することを可能とする。

「センサーやウェアラブル端末などのIoT技術や分析ツールの利用が増加しているため、これまでスポーツの技術的な要素に関する"隠された"情報だったものが、今後ますますアクセス可能になり、追跡可能になり、一般の人でも目にすることができるようになっている」と、Xiao Xiaoらは2017年にソウルで開催された国際情報システム会議で発表された研究論分で指摘している。

デジタル化はスポーツ業界の全ての面に恩恵を与える

スポーツ業界のデジタル化は、メディア等のビジネスだけでなく、様々な点においてメリットを生み出す。チームやイベントのマネージャーは、様々なタスクを効率的にこなすためのツールを利用できるようになる。ファンは、スポーツコンテンツから、選手や他のファンとのバーチャルな交流まで、新しくてより良い体験を楽しむことができる。アスリートは、トレーニングを指導したりデータを収集したりするデジタルデバイスを利用して、パフォーマンスを向上させることができる。デジタル化は、スポーツの世界では避けて通れないものであることに疑いの余地はない。

イメージ: Pixabay

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