原子力発電所は東京に作るべき!?
地震発生に伴う世界最大の原子力発電所「柏崎刈羽原子力発電所」の安全性に関する議論が活発に行われている。
行政も電力会社も
「絶対安全。地域住民にも大きな価値がある」 「地震などが起きない地域を選んで建設している」
と言っている。 まずはそれを信じ、前提として考えてみたい。
イノベーションを考えるときに「中間にある、あらゆるプロセス、リソース(設備、人)を排除する」
ということを行う場合がある。 同様の視点で考えると
「原子力発電所は、実際に電気を大量消費する東京に建設するべき」
となる。
まずは、東京、もしくは、その近隣の東京湾沿いに建設した場合のメリットを考えてみると。
①膨大な送電設備の排除による伝送設備の建設・維持コストの排除・低減
柏崎刈羽原子力発電所など多くの原子力発電所は、実際に電力を利用する地域から遠く離れた場所に存在している。 そのために、長大な送電設備の建設、維持のために、膨大なコストと環境への影響(影響が最低限になるように努力が払われているが)が出ている。 東京近辺に置くことで、この経費が最低限になる。
②送電設備を通る過程で失われていく電力の無駄の排除・低減
送電設備を通っていく過程で、少なからず電力は減っていくそうだが、近距離では気にならない電力の減少も柏崎から東京ほどの距離があると、発電所から東京までで、町一つ分の電力が失われるそうである。
東京近辺に置くことで、電力が失われる量も最低限ですむ。
③首都圏の電力を担う東北、中越の原子力発電所を集中化で技術者・リソース集約
ITの世界では、全社にかかわる業務用コンピューターは中央の電算センターに集中化し、各事業所内で利用されるサーバーなどは分散設置することが多い。
原子力発電所も東京近隣に集中化することにより、優秀な技術者(運用管理含む)を集め、共有可能な設備は共有し、集中的に安全対策が施せる(正直、原発の運用の内容を知らないが)。 また、地方は逆に火力発電所を配置するという方法もある。
④政府、政治家、電力会社、そして国民の意識の向上
本来はあってはならないことだが、遠隔地に原発があるより、近くにあるほうが安全対策への意識は向上する。 最も多くの人口をかかえ、主要な機関のの集まった東京(あるいは、その近隣。船橋から横浜ぐらいまでの東京湾岸か?)に置くことで、政府、政治家、電力会社、そして、首都圏の住人の「安全」への意識が高まり、今以上に安全性を上げるための議論と技術革新は早くなるのではないかと予想される(少し甘いでしょうか?)。 恐らく、今以上に必死になって合理化、安全対策に取り組むだろう。
電力各社のホームページによると、原子力発電所の建設の条件は、
(1) 豊富な冷却水 (2) 広い土地 (3) 耐震性に優れた岩盤 (4) 地元の理解
とある。 東京湾岸であれば中央防波堤埋め立て処分場のような広大な土地もあることから、(1)、(2)は問題ないだろう。 (3)に関しては、あれほどのビルを建てる事を禁止していないところを見ると問題ない場所があるだろう。 (4)は大きな議論になるだろうが、東京近隣に作れない理由にはならない。
さて、東京に集中させた場合の問題点であるが、以下のようなものが出た。
a. 安全性に関する漠然とした不安
これがもし、あるのなら、現在原子力発電所が建設されている近隣の住民も同じであろう。安全に不安があるから、地方に持っていって自分たちは安全に暮らし、地方の住民は自分たちが使わない原子力発電所のために不安な毎日を送っているのであれば、これは問題である
b.テロの可能性の増大
もし、本気でテロが考えられたとすると、場所は関係ないだろう。 東京で駄目なら新潟でも駄目だ。 逆に集中化することにより、守りを固めやすいのではないか。
c.土地の価格が高すぎる
品川に既に火力発電所がある。 また、様々な商業施設が湾岸に付近に作られている状況を見ると、大きな要因ではなさそうである。 原子力発電所は、敷地面積あたりの発電量が小さいことが問題になるが、送電施設や地方に点在することによるコスト増を考えれば、代わらないのではないか?(計算していないので言えないが)
d.東京に集中化することにより、大規模災害時には一度に全ての発電所がストップ
コンピューター設備でも、このことが語られる。 現在、例えば、川崎と船橋の2箇所に集中させることで、どちらかの地域が壊滅的な被害を被った場合でも、リカバリーできると考えられる(そう簡単でもないが、解決策はあるだろう)。 現在も首都圏の電力を担っている柏崎刈羽原子力発電所は止まっているが、東京の電気は止まっていない。東京電力のバックアップ・リカバリの仕組みは本当に良く出来ていると正直思う。
素人考えで書いてしまったが、原研関係者の話では「東京に作るのは無理だという前提で、後から理由付けしている。 大規模な地震が絶対に起きないところを作るのは不可能なので、どこに作るとしても東京大震災レベルでも耐えられる施設にしていく必要がある」とのことなので、東京にあっても、何の不思議もない。
私個人としては、原子力発電所が10km程度離れていても「漠然とした不安」があるため、東京には作って欲しくないが、、、それでは不公平だな。
東京電力Q&Aより
<投稿後記>
この話は、先日、マンションの管理組合、防災会(地震含む)での懇親会で原研に関係している方と話している中で出てきた話をもとに書いたものだ。 本人も「コンピューター会社の人が全てのITに詳しいわけではないのと同様に、私も一部分しか知らないわけですが、、、」と言っていた。
彼から「原子力発電に関することをブログに書くと思わぬコメントで炎上する可能性があるので避けたほうがいい」と言われましたが、「議論が活発になるのは良いこと」とも言われたので、思い切って投稿した。
原子力発電の「安全性」に関する議論を行うつもりはありませんので、悪しからずご了承ください。
7/23 23:00 引用のカッコの抜けを追加
3/20 17:35 読者の指摘により出だしの文章を削除し1/3に。