Veeamの展望、結果重視のエッジコンピューティング、ワークプレイスの民主化とは
新型コロナウイルスの世界的な流行が始まってから1年が過ぎました。この間、DXの取り組みが加速。クラウドを利用した新しい勤務形態やビジネスを支えるデータは増加の一途です。企業のクラウド・データ・マネジメントの重要性が高まり、エッジコンピューティングのニーズが顕在化しています。ヴィ―ム・ソフトウェア株式会社 執行役員社長の古舘 正清氏ならびにクラウド・データ・マネジメントをけん引するVeeam 製品戦略担当シニアバイスディレクターのリック・バノーバー氏に、企業の未来を示すIT展望を取材しました。
DXとエッジコンピューティングによるハイブリッド型ワークモデル
グローバル企業におけるIT施策決定権者3,000名以上を対象にしたVeeam経営層調査「データプロテクションレポート 2021」によると、企業は今後 1 年間にわたり DX 推進を加速する必要性を認識しています。今、注目すべきは、DXとエッジコンピューティングによるハイブリッド型ワークモデル(就労規範)の台頭です。
エッジコンピューティングとは、1990年代から存在していた概念で、コンピューティング機能やストレージを、データを収集しているデバイスの近くに設置する仕組みです。クラウドコンピューティングの性能を最適化ならびに拡張します。
今回のパンデミックで、ハイブリッドな新しい職場環境、ワークプレイスについて発見がありました。それは、「企業にはDXが不可欠であり、変革のためにはエッジコンピューティングが不可欠」ということです。そしてエッジコンピューティングのダークホースともいえるリモートワーカーが誕生しました。リモートワークへのアプローチは大きく変化しました。
新型コロナウイルスによる影響は、日本を含むアジア太平洋地域の各市場で異なります。一方、共通項もあります。それは、データがさまざまな場所で生まれ、作成され、変更されることが増えているということです。これに伴い企業は、模索を余儀なくされています。IT意思決定者は、データをキャプチャして保護するための最良の方法は何か、プライバシーとセキュリティのニーズをどう満すべきか、といった数多くの課題を抱えています。
こうした中、働き方が変わる従業員が事業継続性を確保するための最適な方法として注目されているのが、エッジコンピューティングです。新しいワークプレイス環境を、将来にわたって維持するための重要なテクノロジーとして期待されているのです。
結果重視のエッジ戦略が変革スピードのカギ
ジュニパー・リサーチ社によると、エッジコンピューティングは、今後5年以内に全世界で83億米ドルに達する成長が見込まれています。この傾向はIoTデバイスの普及に伴って加速しており、2023年には総支出額が3,986億米ドルに達すると予想されています。
コロナ下の新しい職場では、モバイル、タブレット、スマートスピーカーなど、より多くのリモート端末が存在し、ネットワークの外部エッジで膨大な量のデータが生成されています。しかしエッジ戦略を実行するという任務は、多くの人にとっては難しいばかりか、一部の人にとっては手が出ないものといってよいでしょう。
しかしながらエッジ戦略とは、データ保護やセキュリティ、コンプライアンスへの取り組みを複雑にするものではありません。決して、エッジコンピューティングによりすべてのデータを分析・活用しなければならないと考える必要はありません。むしろ、データを消費、保存、推論、分析し、知識を得るためには「どの集積ポイントが最適か」を確認することが重要です。ある企業では、リアルタイム分析が可能なサーバーを現場に導入するだけで、ビジネスにプラスの影響をもたらすことができます。別の企業では、IoTセンサーを設置して、セキュリティカメラのデータ転送を実現することも可能です。実装検討よりも「結果を重視する」ことが成功の鍵なのです。
エッジコンピューティングを利用することで、企業は最も重要なデータを最大限に活用するようになります。それがひいては、ワークプレイスの変革スピードを上げるのです。
延長線上にある未来の仕事、ワークプレイスの民主化
上述のとおりエッジは、まったく新しいものではなく、これまでの延長線上にあるものです。データセンターの壁を取り払い、クラウドの機能を外に押し出すことでDXを加速してくれます。従来、エンドポイントのバックアップは最も過小評価されてきたテクノロジーでしたが、エッジコンピューティングのメリットが浸透するにつれ、新たな用途が広がっています。企業は、エッジをハイブリッドクラウドアーキテクチャの一部として扱うことで、シームレスで安全なITエクスペリエンスを効率的に従業員に提供できるのです。
まとめると、エッジコンピューティングは従来の職場環境から未来の仕事へのシームレスな移行を実現するために不可欠です。それは、DXと両輪をなすことで、ハイブリッドなワークプレイスを支えて、就労環境を民主化します。こうした可能性を最大限に引き出すために、企業はテクノロジーの導入よりも「結果」に注目して変革を進めることが肝要なのです。
ワークプレースの民主化(イメージ)Photo by Rowan Heuvel on Unsplash