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455エクサバイトを保存するDNAバックアップの進化

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今週は175か国から3万人以上の参加登録を数えるグローバルオンラインイベント「VeeamON 2021」が開催されました。ヴィ―ム・ソフトウェア株式会社 執行役員社長 古舘 正清、Veeam Softwareシニア・グローバル・テクノロジスト マイケル・ケードに、バックアップの進化について訊きました。

データ保護に役立つ生命のテクノロジー、DNA

パンデミックとともに生活やビジネスが加速度的にデジタル化するに従い、私たちが作り出し、保存し、アクセスしているデータの量は驚くほど増えています。Raconteur Publishingがまとめた調査結果によると、Google1日に35億回の検索を処理、YouTube430万本の動画を再生、Facebookでは35000万枚以上の写真がアップロードされています。2025年までに世界で463エクサバイトのデータが毎日、生み出されると推測されています。国際電気通信連合(ITU)調査が明らかにした、世界人口の4割近くがまだデジタル化されていないという状況を考慮すると、保存および管理が必要なデータ量は今後さらに急増すると見込まれます。

Veeam地球上で最大のデータ保護専業ベンダーです。2020年は通年で242ペタバイトをクラウドオブジェクトストレージプロバイダー上位3社に移行しました。2021年は第1四半期だけですでに100ペタバイト以上のデータを移行しています。今やデータは、私たちの日常生活のすべてに関係しています。様々なデータが、日々の当たり前の活動、世の中の課題への新たな知見などをもたらし、人間の知性を増幅させて、力をもたらします。

こう考えると、いまあるデータストレージを根本的に見直す必要性が高まっているのは明らかです。なぜなら膨大な量のデータが生成され続ける中、それを支えるデータセンターは、稼働に必要な電力、冷却装置、継続的なメンテナンスおよびモニタリングなど、テクノロジー面の課題に直面しているからです。さらには、サーバーやハードドライブ、フラッシュストレージなどのハードウェアは時間とともに劣化する点は注意を要します。データアクセスの規模および速度がさらに増加し続けると、大きな障害が生じる可能性があります。

そこで手本となるのは、意外にも自然界です。想像しづらいかも知れませんが、生体の遺伝情報を保持している「DNA(デオキシリボ核酸)」は、重要な情報を保存、保管するデータストレージにとって学ぶ点が多いのです。

太古のストレージデバイスにある2つの利点

わたしたちは、遺伝子情報を親から子へと受け継ぐDNAを体内の細胞に保持しています。現在のテクノロジーに代わるもののひとつとして、この超小型で複製が容易なDNAベースのデータストレージが注目されてるのです。DNAテクノロジーには記録保存性と安定性という、2つの利点があります。

  • 記録容量 - New Scientist によると、1グラムのDNAには455エクサバイトものデータを保存できる可能性があります。これは、現在世界中にあるデジタルデータ総量よりも圧倒的に大きなボリュームです。
  • 安定性 - DNA自体は非常に脆く壊れやすいのですが、適切な条件で保存すれば安定性を保ちます。一例として、千年前に化石化した遺体にDNAがそのまま残っているのが発見されています。データのアーカイブやバックアップにおいてDNAは、カセットテープやCDの寿命とは比べ物にならないほど、完璧な素材になる可能性があります。

映画1本分のデータをシリカガラスに

DNAテクノロジーの進歩は始まっています。2018年、マイクロソフトとワシントン大学は共同で、データの保存、管理プロセスを自動化する世界初のDNAストレージデバイスを開発しました。これにより「hello」という言葉を合成DNAにエンコードし、コンピューターで読み込むデータ変換を成功させました。なおこの5バイトの書き込みから読み出しまでには、21時間かかりました。

その他の未来のデータストレージ媒体の候補には、ガラスが挙がっています。シリカガラスは一般的なデータストレージとは違ってわずかなスペースしか取らない上、データセンターのように温度を一定に保つ管理や定期的なメンテナンスを必要としないからです。

マイクロソフトの実証実験「プロジェクトシリカ(Project Silica」では、レーザーによってガラスの構造が永久的に変化する性質を利用して、縦横75ミリメートル四方、厚さ2ミリのシリカガラス(石英ガラス)内に映画フィルムまるごと1本分のデータを保存し、機械学習のアルゴリズムで読み取ることに成功しました。シリカガラスのバックアップ媒体としての可能性に期待が集まります。

今後、DNAデータストレージが商業的に利用できるようには、データ復元の時間とコストが低減する必要があります。2001年にはヒトゲノムの配列決定に1億ドルかかっていたのが、今日では1000ドルで済むようになっています。2012年に始まったデジタルデータをDNAに保存する実験は、上述のとおり2018年にまだほぼ丸一日かかったとはいえ、着実に進歩しています。

DNAテクノロジーによるバックアップ変革の分岐点

まとめると、DNAテクノロジーはバックアップを変革する可能性を秘めています。データのアーカイブやデータセンターといった巨大な体積を排除ができるようになるのです。世界の知識の集大成は、いつか顕微鏡がないと見られないほど小さなものに保存されるようになるかもしれません。これからさらに多くのデータが生成され、現在のストレージ技術が限界に達すると、代替技術の需要は一気に高まるでしょう。

DNAベースのバックアップは、単一記録を一回だけ作成するのみへと、大幅な業務削減を実現するでしょう。そして、人間の記憶をはるかに超えるデータの長期保存が可能になるでしょう。次世代のストレージ技術のカギは、すでに神秘的な生命体の中にあるといえるのです。

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DNAテクノロジーの実証実験が進む(イメージ) Photo by Science in HD on Unsplash

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