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CSVパネル:悲観せずにカルム・ダウン!

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ワールドマーケティングサミット東京2019「CSV経営とマーケティング」のパネルディスカッション報告。午前のパネルディスカッションに続き、日本への悲観論が大きくなる中、世界からの視点は未来への様々な可能性を示しました。

CSVって何ですか?

まず、モデレーターを務めるグロービス経営大学院教授 加治慶光氏が、よく話題に上るCSR(Corporate Social Responsibility)とCSV(Creating Shared Value)を整理。ハンセンズ氏に「CSRとCSVの違い、教授はいかがお考えですか?」と問いかけると「聞く相手が違いましたね、わたしはその略語、知りません」という返しで笑いを誘う場面も。

一般に、CSR(企業の社会的責任)は企業が余剰をボランティアに使ったりする慈善活動を指しますが、CSV(共通価値の創造)は本業を通じて経済・社会課題を解決する活動を指します。キブリア氏は、「CSRは古いコンセプト、CSVは新しい」と説明し、「だからこそソーシャルプレナーシップが次の核になる」と述べました。

CSVはハンセンズ氏が検証する通り、企業が株主だけでなく、顧客や従業員を含むあらゆるステークホルダー(関係者)を重視し、道理にかなった活動をすることで、短期的に利益が低減しても長期的に利益が上がるという経済理論と合致します。

ネスレ日本の嘉納氏は、CSVはネスレに端を発し経済学者マイケル・ポーター氏が定義したものと述べ、「CSRの見解は学者により違う、CSRを否定するわけではない」としながらも、「CSVはネスレの企業戦略の根幹」「社会課題がそのままビジネスチャンス、イノベーション、競争優位性につながる」と説明ました。

様々なイノベーションのカタチ

ここで加治氏が、日本と世界におけるイノベーションの現状を説明。日本では、イノベーションが技術革新と狭義に捉えられていると指摘。経済学者 故ヨーゼフ・シュンペーターの「新結合、新機軸、新しいものの組み合わせ」の定義を紹介しました。

そして「マイケル・ポーター氏の競争戦略は業界内の競合にのみ適用できる」「業界の垣根、業界の距離がなくなるデジタル・エコシステムの中では、新しいものが結びつきイノベーションが起きる」と述べ、コネクテッドカーとスマートホームの結合により、電気自動車のバッテリーが災害時の電源になる例を挙げました。

さらには、2030年までの国際ゴールである「持続可能な開発目標(SDGs)」を例に、「地球上のだれ一人取り残さずにイノベーションを促進する」という一見、無理難題に見える取り組みも、まず理想を定義し解決策を考えるバックキャスティングという考え方のイノベーションにより可能になる、と述べました。

地球最後の世代...

今年を起点とすると時系列でラグビーワールドカップ、G20、TICAD、来年の東京2020オリンピックと世界規模のイベントが続くこと、その先にある2025年大阪・関西万博の目標は、5年後に迫るSDGs達成に沿う日本の国家戦略 Society5.0の実現であることを紹介。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮したESG投資を促進することで、地球(Planet)、人(People)、繁栄(Prosperity)にコミットしたイノベーションが可能になる、と述べました。

そして、SDGsのアジェンダ序文、第50項の「我々は、地球を救う機会を持つ最後の世代になるかもしれない。(just as we may be the last to have a chance of saving the planet)」を読み上げて、各パネリストにメッセージを求めました。

落ち着いて、SDGs達成へ

「わたしはそこまで悲観してないんですよ」とひょうひょうと答えるハンセンズ氏は、近年ロサンゼルス近海で、科学者の努力などにより、水がきれいになり小魚が増えた結果くじらやサメが増えた、という例を挙げ、「コストや経済リスクを恐れるな」「社会、地球に責任ある行動をとり、正しいことをすれば、経済がついてくる」と勇気づけました。

キブリア氏は、「問題を減らすことを考えよう」「週5日勤務を4日に減らしたら人生を楽しむ時間が増えて生産性が上がる、競争力向上のチャンスになる」と述べ「カルム・ダウン(落ち着いて)、それこそが日本が進むべき道」と静かに説きました。

嘉納氏は、「CSVをどう自分ごと化するか、を一社員として考える」「みんなが頑張る姿、お客様を見て、新しい社会問題から新しい課題を見つける」「足元、仕事の中から取り組んでいこう」と述べました。

関連記事:

<午前プログラムレビュー>

基調講演(ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院教授、フィリップ・コトラー氏)

講演(富士フイルムホールディングス代表取締役会長兼CEO 古森 重隆氏、ネスレ日本代表取締役社長兼CEO 高岡 浩三氏)

パネルディスカッション(フィリップ・コトラー氏、高岡 浩三氏、モデレーター:IMD北東アジア代表 高津 尚志氏)

<午後プログラムレビュー>

講演(カリフォルニア大学ロサンゼルス校ビジネススクール教授 ドミニク・ハンセンズ氏)

パネリスト登壇(ワールドマーケティングサミットグループCEO サディア・キブリア氏)

パネリスト登壇(ネスレ日本株式会社 執行役員コーポレートアフェアーズ統括部長 嘉納未來氏)

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転載元:コウタキ考

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