5月病を癒すこどもパワーの不思議
風薫る5月、晴天にめぐまれ若葉がキラキラ輝いて見えます。一方で、新年度をむかえてひと月、大人もこどもも頑張りすぎて疲れる5月病の時期でもあります。今年、保育園最後の年を迎える息子とともに、いくつになっても新しいことへの挑戦を恐れずにいたいと、不安の仕組みとこどもの力を見直しました。
■日本人はなぜ自信を持てないのか
ふだん、いろいろな国籍の方と仕事をしていて不思議になるのは、自身を含む日本人が自信を持てない場面でも、いわゆる海外メンバーの多くが自信をあらわにする、態度の違いがどこから来るかです。
その解の一つが、脳内で安心感を生む神経伝達物質「セロトニン」を調整する「セロトニントランスポーター遺伝子(5-HTTLPR)」といわれています。5-HTTLPRが少ない、つまり不安になりやすい人は、西洋人の40~45%に対し東アジア人は70~80%と倍近く、さらに「日本人の97%は不安になりやすい」とされています(引用:2017年7月21日 Japan Times、2015年11月30日 日経グローバルゲート)。ある調査では、日本人の55%が自分の自己肯定感を「中央以上」と答えたのに対し、ヨーロッパ系カナダ人の93%が同じ回答をし、国籍による圧倒的な自己肯定の違いがみえています。(引用:2014年12月23日 Psychology Today)。
日本は伝統的に、共同体で一致団結することで、種を残してきました。他人にあわせることが重視される日本の集団主義では、自己を否定しがちです。これが、西洋にみられる、他人を頼れない個人主義の社会で自己肯定感が育ったのと対照的に、日本人の自信のなさにつながっています。
近年では、不安になりやすい日本人のうち高校生の自己肯定感の研究が進んでいます。2015年からの調査によると、日本の高校生は米・中・韓に比べて著しく自己肯定志向が低く、自己否定志向が高い結果となっています(引用:平成30年3月 国立青少年教育振興機構)。
■大人がこどもに癒される理由
自身が日々通う保育園でも、園児が自己肯定感をもてるようにする見守り方、保護者のあり方が話題になります。こどもがやってみようと思う心が、後に学ぶ意欲につながると聞き、声掛けを試行錯誤して笑ったり怒ったりです。
とはいえ、5-HTTLPRが少ない日本人だからと、一概に悲観することもないようです。世の東西を問わず、思春期までのこどもは、大人より強い自己肯定感を持っているからです(参考:2016年12月28日 奈良女子大学研究院教授 伊藤 美奈子氏)。5-HTTLPRは年齢とともに減少するといわれており、ワシントン大学の調査によると5歳児は大人以上の自己肯定感を持っているのです(参考:UW News, November 2, 2015)。
こうしたこどもの強い自己肯定感は、不安が多い大人に安心感をもたらします。これこそ、大人がこどもに癒される理由でしょう。こどもの持つポジティブさが、社会のこどもへの愛情、こどもをいつくしむ気持ちにつながるのです。
5月5日はこどもの日。5月病で不安になりがちな大人も、いま一度、童心に返って笑いませんか。大人もこども並みに、自分を否定せず、自己肯定したいものです。
※ コウタキ考の転載です。