春は女性を考える季節? ~ AI時代のダイバーシティ&インクルージョン
生命の息吹を感じる春、ひなまつりには女の子のお祝いをし、3月の国際女性デー、4月の新年度を迎え、ことあるごとに女性について考えさせられます。
女性について考えることは、女性以外を考えることです。息子を保育園に預けて企業で働く母親の立場から、次の世代のための課題解決アクションを考えました。
- 100年にわたる女性の権利拡大、縮まらないギャップ
冒頭で触れた国際女性デーが生まれたのは1904年、女性の参政権を求めるニューヨークにおけるデモが発端でした。日本で女性の参政権が認められたのは、第二次世界大戦後の1945年。この70年余りで女性の政治参画は、少なくとも投票という形では浸透し、話題にならなくなりました。
さらにこの30年余りの日本で女性は、ビジネスの場にも進出しました。企業では、多様な違いを内包して、組織も個人も成長を促進しようという動き「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」が活発化しています。同一労働同一賃金という考え方のもと、男女の賃金格差是正の声も上がっています。しかし現実には、国内で男性を100.0とした場合の女性の賃金は73.0(出典:厚生労働省)、女性は約3割安で働いています。そして女性の約4分の1が、いまだ出産を機に「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立が難しい」(出典:内閣府男女共同参画局)という理由で仕事を辞めています。
こうした現状から日本は、世界における男女格差を示す「ジェンダーギャップ指数」2017年版で、144カ国中114位(出典:World Economic Forum, The Global Gender Gap Report 2017)と過去最低を記録しました。教育や健康面では男女格差が解消されているものの、政治と経済の分野、つまり外の世界で女性が決定の機会を持たない不平等さが議論されています。
- 長時間働けど、家庭で頼られない男性
男性は外で、女性は家で働くという意識が強い日本では、女性の家事負担が大きく、かつ男性の勤務時間が長く、いずれもワークライフバランス(生活と仕事のつりあい)が危うい状況です。男女ともに、既成の観念、風土、制度の課題を抱えているのです。
日本の父親は、外で働けど、家庭では頼られていない、という悩みを抱えています。育児する男性(イクメン)であろうとする父親の、低い家庭内評価をなげく声も聞かれます。20~54歳の夫の一日あたり家事・育児時間は、妻(3時間22分)の5分の1足らずの60分以下(出典:厚生労働省)。男性の「子育て参加を大事にする風土(社風)がある」という企業は35.1%(出典:乳幼児の父親についての調査 2014年)、3社に1社程度にとどまります。男性が長時間労働する職務環境で、必然的に「妻は子育てにおいて夫よりも親やママ友が頼り(出典:平成25年度 厚生労働白書)」なのです。
- AI時代のダイバーシティ&インクルージョン
少子高齢化が進む中、今後もロボット(RPA)や人工知能(AI)による労働の置き換えがいっそう進み、人間が担うのは「判断」にかかる分野に集中していくでしょう。今の日本で、男女の教育が平等なのにも関わらず、学校を出て仕事をはじめたら報酬に差がでるのは、外の世界の判断が、男女で異なるからではないでしょうか。これから仕事の中身が変わる中で、人が人らしい生き方をするためには、これまでの判断基準が見直されるべきでは...。男女ともにワークライフバランスを改善するためにも、多様性を内包することで、見落としていた課題に気づき、個人も組織も新たな判断ができるようになるのでは、と考えています。
100年の先達が参政権デモを起こしたように、これからのロボット、AI、男女、LGBTなど多様な要素が構成する社会に向け、ひとりひとりがアクションを起こすと大きなうねりにつながります。多様性を受け入れるために、日々のさまざまなアクション - 会話、SNSのいいね、見る(視聴)、買う(購買)、賭ける(投資)、仕事・家事(業務、人事考査、子育て)を、「これっておかしな偏りがないかな」と見直すことが必要ではないでしょうか。
世の中持ちつ持たれつ、誰もがどこかでマイノリティーです。ひとつの正解はないD&I。息子たちの時代やその先が、いまよりも生きやすい社会になるよう、多様性が、老若男女ひとりひとりの自分ゴトになってほしいと願っています。
コウタキ考の転載です。