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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(119)電力料金の値上げの原因は原発停止ではないはずという思い込みについて

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前回触れた「まさのあつこ」氏がまた「原発を動かさなくても値上げは必要ないはず」とでも言いたいかのような記事を書いているようです。

東電廣瀬社長に代わって燃料費増加の原因を探る(上)(まさのあつこ)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20140718-00037512/
東電廣瀬社長に代わって燃料費増加の原因を探る(下)(まさのあつこ)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20140718-00037514/

「東電広瀬社長に代わって」・・・なんて私はとても使う勇気のない表現ですが、まあそれはおいといて。かなりの徒労感を感じつつ、ではありますが一応検証しておきましょう。

といっても、そもそも「まさのあつこ」氏が何を言いたいのかよくわからないのですが、とりあえず上記両記事の前に出ていた

暑い夏がやってきた!だが、東電は原発再稼働なしで、関電・九電に売るほどの電力がある(下)(まさのあつこ)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20140713-00037343/

↑この記事のリード部分が本題と思われます。

夏の原発分は節電で補っているので、電力料金の値上がりは原発が再稼働しないせいだとは言えないことを東電のデータが示している。

もっとわかりやすく言い換えてあげましょう。これを素直に読めば

電力料金の値上げを迫られた原因は円安と燃料価格の上昇であり、
それらがなければ、原発を稼働しなくても電力料金は上げずに済むはずだ

と言いたいようです。「原発停止絶対善」論者のようなので、とにかく「原発を止めていることが電力料金上昇の原因の1つ」だと都合が悪いのでしょう。

実際、電力料金の上昇により事業縮小や廃業を余儀なくされる業界/会社も少なからず存在しますし、家計も直撃します。

「電気料金の値上げは限度を超えている。とっとと原発再稼働してくれ」

という声が日に日に高まるのは、まさのあつこ氏のような原発停止絶対善論者には不都合でしょう。そのために

「電力料金の値上がりは原発が再稼働しないせいだとは言えない」

と書いてミスリードを図っているようですが、当の本人が「東電廣瀬社長に代わって燃料費増加の原因を探る(下)」では次のように書いています。

財界が大合唱する「原発が稼働しないから電気料金が上がる」や廣瀬社長の「原発が動いていたらもっと安く済んだ」は、燃料単価の増加と円高分を引いたところで真実だと言える

「原発が動いていたらもっと安く済んだ」は、「真実だと言える」と認めているわけです。

それは当たり前の話で、さすがにそこまで否定することは出来なかったようですね。実際、2010年に比べて東電の化石燃料消費量は約3割増加しています。その分、燃料費が増えるのも、値上げしないければカバーできないのも当然です。しかし、であれば

「電力料金の値上がりは原発が再稼働しないせいだとは言えないことを東電のデータが示している」

というリードも撤回するのが筋でしょう。こういう目立つところに根拠に乏しい「疑い」の声を書いておくのは、悪い印象を与えるための印象操作の典型的な手法です。

さらにもうひとつ、まさの氏はどうやら

「燃料単価の増加と円高分を引いたところで真実だと言える」

という記述からして「燃料単価の増加」と「原発の停止」が関係ないと思っているようですが、それも大きな間違いです。

平成25年度エネルギー白書 概要 (資源エネルギー庁)のp.12掲載のグラフですが
http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2014gaiyou/whitepaper2014pdf_h25_nenji.pdf

2014-0723-1.PNG

日本のLNG輸入価格は2011年3月の震災を境にして約3割程度上昇しています。欧州があまり変わらず、米国が下がり気味なのに比べてはっきり違います。「需要が増えれば値が上がる」のは当然で、原発停止によりLNGをはじめとする化石燃料調達を増やさざるを得ないことが、燃料単価の増加ももたらしているわけです。

たとえば↓これは産経の記事ですが、

【ビジネスの裏側】燃料交渉「悔しければ原発動かしてみろ」と言われた関電...シェールガスは日本を救うか(3/3ページ) - MSN産経west
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/130216/wec13021618010001-n3.htm

「(燃料購入の)交渉中に『悔しいなら原発を動かせ』といわれたこともある」という関西電力の担当社の発言もあります。原発を動かせれば「LNGは高いから買いません」と言えますが、動かせないのでいくら高くても買わざるを得ない。というこうしたエネルギーの現場の事情を全部無視して原発を止めてきたのがこの3年間だったわけです。

まさのあつこ氏はそうした事情を何も知らずにあのような記事を書いているのでしょうか。
それとも、知っていて黙っているのでしょうか。

どちらにしても、ジャーナリストとして信頼がおける書き手とは言えません。

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Comment(3)

コメント

PAPA

足下を見るという言葉を知らないようですね。

輸出先から見ればちょっとでも高く売りたい訳ですよ。
儲かりますから。
日本人が困るから安くしましょうなんて言う発想はある訳ありません。
また、安く売らなければならない義務もないです。

希土類磁石の件を見てもそれは明白でしょう。
中国が輸出規制をかけた時(足下を見てきた時)、一時は価格が高騰しましたが、日本は技術革新やリサイクルなどでその目論見を外し、結果的に価格の下落に至った訳です。
電力で言えば開米さんのいう原発再稼働がそれと同じ。

ここでは特に関係ないですが、電力の自由化でも同じ事がいえると思います。
安く発電できるからといって、安く売る義務はない訳です。
商売ですからね。
発電コストが競合よりかなり安くても、消費者に対しては気持ち安い値段(例えばKWあたり0.1円でも安く)に設定すればいいわけで、結局足下を見られるのは国民なんですよね。

早く原発をばんばん再稼働させて、電気代を安くして欲しいものです。

開米瑞浩

ちなみに原発の燃料コストは1kWhあたり1円ぐらいで、圧倒的に競争力高いんですよね。せっかくある原発を止めておくのがいかに非合理的かと。

凡人

日本は「言論の自由」の国です。
しかし、代替案の無い”NO”はいけません!
「私は燃料代増加分の数万円の値上げを快く受け入れますから原発反対です!」
「私は原発を稼働する電力会社と契約しませんから、原発反対です!」
「私は電気を自家発電しますから、原発反対です!」
「この方法なら原発に代わるエネルギーを安価に得られるので原発反対です!」
と叫んで頂きたいものです。
1968年に提唱された宇宙太陽光発電システム(SSPS)が商用として実用化
されれば、ベース電源として使用可能なので、原発稼働分を補えるかもですが。
(想定供給量を知りませんので、単なる推測です)
主張に何の責任も持たない人達の事は放といても、自分たちの子・孫以降の事
を考えると、原発のみならず、化石燃料の世界的枯渇に備えて、代替エネルギー
を世界的に考える時が迫ってきているでしょう。
リスクを負わず、自分の利益だけを甘受しようというメディア報道は暴言でしか
ありません。

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