スライド1枚にどのぐらいの情報量を入れていいか?
開米瑞浩です。文書化能力向上コンサルタントをしております。今日は珍しく(?)本職の話です。
文書作成技術講座の受講者から聞く、「書く」ことに関する悩みの中にこういうものがあります。
「スライド1枚にはどのぐらいの情報量を入れてもいいのでしょうか?」
よく聞きますね、この悩み。プレゼンテーションをするときは、PowerPoint やKeynoteでスライドを作ってそれを1枚ずつ投影しながら説明するということが多いですが、そこでスライド1枚にどれだけ情報を詰めこんでもいいのか? と悩んだ経験のある方は少なくないことでしょう。
ですが、困ったことに、いつどんな時でも通用する「正解」は、ありません。というのは、一口に「プレゼンテーション」と言ってもその実質は千差万別だからです。
例としていくつか挙げておくと、
【承認要請型プレゼン】
「問題の解決策を提案して承認をもらう」ためのプレゼンテーション。
実務の担当者・責任者から意思決定権者に対して行う場合が多い。
【指示型プレゼン】
「問題の解決策を指示して実行させる」ためのプレゼンテーション。
教育担当から実務担当者に対して行う場合が多い。「教育担当」は、個別の場面によって「先輩」「リーダー」「指導員」「スーパーバイザー」「コンサルタント」などと呼ばれる。
【育成型プレゼン】
「問題の解決策を自ら考えるための手がかりを与える」ためのプレゼンテーション。教育研修の場面で多用されるが、そもそも「プレゼン」とは呼ばれないことが多い。
のようなものがあります。通常、「プレゼンテーション」というと一番目の「承認要請型プレゼン」のことを意味します。育成型などはそもそもプレゼンと呼ばないことが多いですが、「人を集めて話をする」という点では同じですので、ノウハウにも共通のものがあります。
ではそのノウハウとはどういうものかというと、プレゼンに成功するための原則といえばすぐに出てくるのは
「シンプルにせよ」
ということではないでしょうか。プレゼンの教科書には必ず出てくる原則です。とにかく内容を絞り込め、文字を減らせ、ということです。
この「シンプルにせよ」原則は、承認要請型プレゼンの場合は無条件に正しいと言ってよいですが、指示型と育成型の場面ではこれが通用しないときがあります。
というのはなぜかというと、「承認要請型」と「指示型」「育成型」では、プレゼンの内容を「実行する人間」が違うからです。
承認要請型では、プレゼンの相手には「よし、それで頼む」と承認をもらうだけ、実行するのは自分なので細かいことを説明する必要はありません。自分が分かっていればいいからです。
それに対して、指示型と育成型は「相手にやらせる」ことになります。そのため、実行するのに必要な情報を与えなければならず、その分、「細かいことを説明」しなければなりません。当然、情報量が多くなってシンプルさは失われます。
これはどうしてもそういうものなので、「シンプル」原則も有効な範囲をわきまえて使うようにしましょう。