オルタナティブ・ブログ > 開米のリアリスト思考室 >

「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

おしゃれな店舗の中のタコなオペレーション

»

ビジネスの教訓を読み取るために、ある日ある時ある場所で起きた出来事を記録しておくことにします。

教訓を読み取ることが目的なので固有名詞は削ってあります。まあ、誰がどう見てもどの会社のことかは明らかでしょうが(笑) なお、私はその会社の製品を5台は使っているヘビーユーザーです。ちなみに私の友人複数名も同じような体験をしていたそうです。

以下、その記録。

------------------------

(1)【背景事情】使っているタブレット機のうち1台の液晶パネル表面ガラスが破損したため、本体交換が必要になった。
(2)【事前予約】店頭で交換してもらうほうが早いと思われたため、某所にあるメーカー公式ストア店頭でのサポートを予約。
(3)【契約番号】故障時等の費用が安くなるプロテクション契約をしていたので、予約時に本体シリアル番号と契約番号を記入していた。ただし予約フォームにはその記入欄がなく、コメント欄に書いたもの(★A)。
(4)【予約フォーム動作異常】メーカー公式ストアの予約受付Webフォームは日本語で見ていたのに、予約完了画面は英語で表示され、通知メールも英語で来た(★B)。
(5)【店頭へ】当日、予約の10分以上前に店頭へ。店内は待っている客でいっぱい


(6)【受付】フロア入り口の警備員に目的を尋ねられ、近くの赤シャツを着たスタッフ(赤シャツ1)にチェックインをするよう誘導される。スタッフは手にした端末で予約リストをスクロールするが、私の名前を発見できず。(★C)
(7)【予約確認】 そこで、確かに予約があることを確認するために私のほうでメールを見直す。予約時間は3:50で間違いない。もう一度赤シャツスタッフに伝えたところ、名前発見。
(8)【待てと指示】「受け付けました。お呼び出ししますので壁際でお待ちください」と案内される(★D)。店内には同様に待っていると思われる客が40人ぐらいいて、壁際はほぼスキマなく埋まっている状態だが一応待つ。

(9)【待てど暮らせど】・・・・一向に「呼出」がない。しかも店内の他の待ち客に対して「○○様はいらっしゃいますか」といった呼出をしている気配もない。こういうシステムならしょっちゅう呼出の声が聞こえていておかしくないはずだが、このメーカーはどうやって呼出をしているのだろう。(★E)
(10)【30分経過】そのまま30分経過。予約時間を起点にしても20分過ぎて、さすがに腹が立って来てスタッフ(赤シャツ2)を呼び、「いつまで待たせる気か?」と尋ねる(★F)
(11)【言い訳】呼ばれて新しくやってきたスタッフ(赤シャツ3)とのやりとり、こんな感じ。

赤シャツ3:お客様に順番に対応しております。順番が来てから内容をお聞きして対応しますのでしばらくお待ちください
開米:そんなことはわかっている。待ち時間の目安もなく30分以上待たせるとはどういうことかと聞いているんだが?
赤シャツ3:一人一人内容が違うため、目安をご案内することができません。とにかく順番に(以下前言の繰り返し)
開米:内容が違うったって目安ぐらい出せるだろうに。それか受付番号発行して状況表示するとかやればいいじゃないか。なぜやらない?(★G)
赤シャツ3:とにかく順番に対応しますので(以下前言の繰り返し)
(★H この赤シャツ3の対応はカスタマーサポート的に不可。理由は後述)

(12)【エスカレーション?】相当怒っているのが伝わった? せいか、別担当(赤シャツ4)が登場。
赤シャツ4:それではご相談内容をお聞きします。
開米:前面のガラス破損です。
赤シャツ4:そうですか、それではシリアル番号を確認させてください
開米:予約の時に本体のシリアル番号も契約番号も書いてあるけど?
赤シャツ4:えっ・・・(★I)
開米:(見てなかったんかい・・・)

(13)【交換機登場】それでは本体交換になりますので在庫を確認して参ります、と言って奥に引っ込んだ赤シャツ4氏、数分後に段ボール箱を持って戻ってきた。

その段ボールには封がしてあり、私の名前の印刷された伝票が貼られていた。(★J)
カッターで封を切って交換機を取り出し、手続きを進める赤シャツ4。

・・・ここから先はあっさり終わって本体交換が完了し、無事また使えるようになりましたが、この経緯、今思い返してもどうにも「ありえない」レベルです。

文中、★Aのように記号をつけたところに1つずつ注釈つけると・・・

★A このコメント欄がうまく運用されていないらしいことがその後明らかになる

★B 英語がわからない人の使用を想定してないのか、単なるバグか?

★C 実際には名前は出ていたが、珍しい名前のため漢字がわからなかったのか? にしても「どのような字を書くか」とは聞かれなかったし、疑問なのは、担当者は予約を探すためにスクロールするだけだったこと。50音順とかアルファベット順とか部分検索とか、そういう、探しやすくする機能がないのだろうか。そもそも予約時に予約番号を発行しておけばこういう問題は起きないのだが・・・

ちなみにそのスクロール画面は私にも見えたので、予約を入れている他の人の名前も見えた。こういうのは良くないのでは。

★D このとき、同行していた妻は「お呼び出ししますので」という言葉が聞こえなかったようで、「一列に順番に並ぶ」ものと誤解したらしい。フロアでの案内メソッドが洗練および訓練されていない。

★E 店内、大きなディスプレイもあるんだから、病院みたいに受付番号発行して状況表示しておけばいいものを。あと、携帯メールアドレス聞いて、順番が近づいたらメール送るみたいなシステムを作れば待っている間他のところで時間をつぶせるのだが。寿司屋でさえやっているそういうシステムを株式時価総額世界一の会社がやれないわけがあるまいに。

★F この時声を掛けた赤シャツ2は、怒っていそうな客への対応に慣れていない模様。赤シャツ3もそうなんだけれど、ちょっとした言葉遣いとか身体の動きが、火に油を注ぐ可能性があることをわかってないようだ。

★G こういう質問を現場スタッフに言っても無理なのは百も承知だが、そこでどう答えるかを見たかった。明らかにサポート慣れしてない返答だった。

★H 私がしゃべっているのを遮るようにして前と同じ説明を繰り返す、という、ダメなクレーム対応の見本。しかもこっちの話聞いてないし。

★I これで予約時のコメントを、店頭スタッフが読んでないのがばれた。そもそもシリアル番号や契約番号はこの種のサポート時に必要なことが多いんだから、予約時に入力欄を作っておくべきだろうに。そうすれば現場での対応時間も削減できるのになぜやらないのか。サポート業務フローの設計がおかしい。

★J この伝票はいつ印刷・貼付したんだろう? と思ったわけです。いかにも物流伝票っぽいしっかりした作りだったので、赤シャツ4による(13)の手続き後に印刷したものにはあんまり見えなかった。もし事前に用意されていたものであるなら、予約時のコメントを読んで、これは本体交換になるな、ということでバックヤードでは準備していて、しかしそれをフロントのスタッフは知らずに一から状況を聞く、という馬鹿なことをしていたことを意味する。まあ、「事前に用意していたものなら」という前提つきですが。

------------

以上を踏まえて総合コメントを書くなら・・・

某社公式ストア店内はおしゃれに出来ている。
だが、オペレーションは出来が悪い。

この2点にはおそらく何らかの因果関係があるのでしょう。何を読み取るかは、人それぞれです。

Comment(0)