規則に忠実に職務を果たす人間だけで仕事を回すのはあまりに危険だなと思った話
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こんにちは。本職・文書作成能力向上トレーナーの開米です。
今回は、「会社の規則に忠実に職務を果たす人間だけで仕事を回すのはあまりに危険だなあ・・・」と思った話を書きます。
先日あるサービスを申し込んだときのことです。そのサービスは「月額いくら」の会費制のものでした。たとえば携帯電話もそうですが、月額いくらで課金されるサービスはひとつ契約が取れれば継続で売上が立つので、契約申込時のハードルを下げるのが販売促進上重要で、そのために各社いろいろ苦労しています。
そこでよくやるのが「入会キャンペーン」。「○月×日までに入会された方には△△△をサービス!」とかいうアレです。私が先日申し込んだQ社(イニシャルは実際の会社名とは違います。炎上させる気は無いので)も入会キャンペーンをやっていて、WEB上に大々的に
今入会すると、3ヶ月分の月会費が1500円になります!
と書かれていました。通常の月会費4000円のところが1500円になるわけで、かなりのお得感が出ますね(ちなみにこの金額も実際の額とは違います)。
私はそれを見て店舗に行き、入会申し込みをしようとしたわけです。すると、
入会キャンペーンの適用にはオプションサービスのZが必須
と説明されました。Zは月いくらの追加料金がかかるオプションで、ただし申し込み後2ヶ月は無料なので必要ないならその間に解約すればよい、というものです。こういうスキームもこの種のサービスではよくありますね。私はZには何の興味もありませんが、あとで解約すればいいだけなので、ここまでは特に問題ありません。おかしいのは、その後でした。
後で考えて分かったことですが、この時点で店員A氏と私の間にはあるコミュニケーションギャップがありました。これについては別途書きます(次回)。
ここまで応対してくれた店員A氏はとても若く、ネームプレートには「研修生」のマークがありました。こういうややこしい話になると、研修生では対応できないことが多いので、こんなときは店長と話をするに限ります。すると次に出てきたのが店員B氏でした。B氏はA氏よりもやや年長で、「研修生」のマークはありません。店長ではないにしてもこれで話が通じるか、と思ったものの、結果としてB氏はA氏と同じ説明を繰り返すだけでした。A氏と私の間で生じていた誤解はB氏でも解消されなかったわけです。
ここで法的な問題を整理しておくと、この時Q社がとっていた
まあ、法律の知識が無かったとしてもこういう手法はどう考えてもおかしいわけです。詐欺的と言われても仕方が無いようなやり方です。
「今までこれでうまく行っていた」というのは、危険なサインです。
既に書いた通り、これは有利誤認の不当表示にあたる違法な手法です。違法である、という指摘に対して抗弁しうる理屈がないまま、経験だけを頼りに「今まではこう説明してご理解いただいていました」と言うのでは、それを聞いて腹を立てた客がその場は黙って引き下がっても、後で実名で2chやtwitterに書かれると炎上することになります。れっきとした上場企業であるQ社にとってはちょっとまずい事態になります。
なお、念のため書きますがこの問題はその後円満に解決し(その話は次回に)、私はQ社のサービスを問題なく利用しているので炎上させる気はありません。だから固有名詞も金額も一切出しません。この記事を書いている目的は、ビジネスのヒントを得ることです。
ビジネスのヒント、という観点でこの事件を振り返って感じるのが、「規則に忠実に職務を果たす人間だけで仕事を回すのはあまりに危険だ」ということです。
A氏もB氏もおそらく「会社が定めた規則に忠実に仕事をしようとしていた」のですよ。
ところが、それが会社にとってマイナスになってしまう時がある。こういう事態を防ぐためには、「規則を守る」だけの人間ではダメです。「なぜそのような規則になっているのかを理解して、現場の実情を踏まえて運用し、規則が間違っている時はそう指摘し、改善を提案できる」人間でなければいけないということです。
この事件は、会社が規則の設定を間違えたことが発端です。故意ではないと思いますが、その「間違い」は結果として違法になりました。それも、常識で考えればおかしい、とわかるような間違いでした。
こういう条件がそろうとどこかで末端の営業現場で客からクレームが来るので、そのクレームを適切にとらえて間違いを修正するような対応ができないと、小さな苦情を大炎上させてしまいます。
べつにブラック企業ではなくとも、この種の事件はいつでもどの会社でも起こりうるので、経営側としては、「規則を守る」だけでなく、「なぜそのような規則になっているのかを理解して運用し、間違いの指摘・改善提案ができる」そんな社員を育つような社内風土と教育体制を作る必要があるのでしょう。
ということをつくづく感じた事件でありました。
今回は、「会社の規則に忠実に職務を果たす人間だけで仕事を回すのはあまりに危険だなあ・・・」と思った話を書きます。
先日あるサービスを申し込んだときのことです。そのサービスは「月額いくら」の会費制のものでした。たとえば携帯電話もそうですが、月額いくらで課金されるサービスはひとつ契約が取れれば継続で売上が立つので、契約申込時のハードルを下げるのが販売促進上重要で、そのために各社いろいろ苦労しています。
そこでよくやるのが「入会キャンペーン」。「○月×日までに入会された方には△△△をサービス!」とかいうアレです。私が先日申し込んだQ社(イニシャルは実際の会社名とは違います。炎上させる気は無いので)も入会キャンペーンをやっていて、WEB上に大々的に
今入会すると、3ヶ月分の月会費が1500円になります!
と書かれていました。通常の月会費4000円のところが1500円になるわけで、かなりのお得感が出ますね(ちなみにこの金額も実際の額とは違います)。
私はそれを見て店舗に行き、入会申し込みをしようとしたわけです。すると、
入会キャンペーンの適用にはオプションサービスのZが必須
と説明されました。Zは月いくらの追加料金がかかるオプションで、ただし申し込み後2ヶ月は無料なので必要ないならその間に解約すればよい、というものです。こういうスキームもこの種のサービスではよくありますね。私はZには何の興味もありませんが、あとで解約すればいいだけなので、ここまでは特に問題ありません。おかしいのは、その後でした。
店員A:Zをご利用いただくにはアイテムYが必要で、その費用が1000円かかります。
開米 :は? 何ですかそれは。必要ありませんよ。
店員A:いえ、ZはアイテムYで使わないと効果が出ないんです。Yはお買い上げいただく必要があって、それが1000円になります。
開米 :いや、そういうことを聞いてるんじゃなくて、そもそも必要ないって言ってるんですが。
店員A:いえ、これは必須なんですが・・・
開米 :じゃあ、なに、3ヶ月分月会費1500円の入会キャンペーンには、1000円でYを買うのが必須ってこと? そんなことWebのどこにも書いてないよ? 今もらったキャンペーン内容のチラシにだって書いてないよ? 何なのそれは?
店員A:ですがそれが必須条件なものですから・・・
後で考えて分かったことですが、この時点で店員A氏と私の間にはあるコミュニケーションギャップがありました。これについては別途書きます(次回)。
開米 :・・・・わかりました。それじゃちょっと責任者の方呼んでくれますか
店員A:あ、はい。少々お待ちください。
ここまで応対してくれた店員A氏はとても若く、ネームプレートには「研修生」のマークがありました。こういうややこしい話になると、研修生では対応できないことが多いので、こんなときは店長と話をするに限ります。すると次に出てきたのが店員B氏でした。B氏はA氏よりもやや年長で、「研修生」のマークはありません。店長ではないにしてもこれで話が通じるか、と思ったものの、結果としてB氏はA氏と同じ説明を繰り返すだけでした。A氏と私の間で生じていた誤解はB氏でも解消されなかったわけです。
ここで法的な問題を整理しておくと、この時Q社がとっていた
「広告宣伝の段階では見せないオプションの商品・サービスをというスキームは、不当景品類及び不当表示防止法で「有利誤認をもたらす不当表示」にあたる違法な手法です。この話をしていた時点では私は具体的にどの法律かまでは知らなかったものの、なんらかの規制があったはず、ということはかすかに記憶がありました。
契約段階でキャンペーンの必須条件として抱き合わせ販売する」
まあ、法律の知識が無かったとしてもこういう手法はどう考えてもおかしいわけです。詐欺的と言われても仕方が無いようなやり方です。
開米 :そうでしょ? 広告には何も書いてないんだから、その条件は。 おかしいでしょ? その広告見てやってきた客にしてみたら、騙された、みたいに思うでしょ?
店員B:ですが、実際アイテムYでないと使えないのでお客様にはご理解いただいてますし・・・
開米 :これにクレームつけてきたお客さん、いままでいないの?
店員B:はい、今まではこう説明してご理解いただいてましたので・・・
開米 :はあ・・・
「今までこれでうまく行っていた」というのは、危険なサインです。
既に書いた通り、これは有利誤認の不当表示にあたる違法な手法です。違法である、という指摘に対して抗弁しうる理屈がないまま、経験だけを頼りに「今まではこう説明してご理解いただいていました」と言うのでは、それを聞いて腹を立てた客がその場は黙って引き下がっても、後で実名で2chやtwitterに書かれると炎上することになります。れっきとした上場企業であるQ社にとってはちょっとまずい事態になります。
なお、念のため書きますがこの問題はその後円満に解決し(その話は次回に)、私はQ社のサービスを問題なく利用しているので炎上させる気はありません。だから固有名詞も金額も一切出しません。この記事を書いている目的は、ビジネスのヒントを得ることです。
ビジネスのヒント、という観点でこの事件を振り返って感じるのが、「規則に忠実に職務を果たす人間だけで仕事を回すのはあまりに危険だ」ということです。
A氏もB氏もおそらく「会社が定めた規則に忠実に仕事をしようとしていた」のですよ。
ところが、それが会社にとってマイナスになってしまう時がある。こういう事態を防ぐためには、「規則を守る」だけの人間ではダメです。「なぜそのような規則になっているのかを理解して、現場の実情を踏まえて運用し、規則が間違っている時はそう指摘し、改善を提案できる」人間でなければいけないということです。
この事件は、会社が規則の設定を間違えたことが発端です。故意ではないと思いますが、その「間違い」は結果として違法になりました。それも、常識で考えればおかしい、とわかるような間違いでした。
こういう条件がそろうとどこかで末端の営業現場で客からクレームが来るので、そのクレームを適切にとらえて間違いを修正するような対応ができないと、小さな苦情を大炎上させてしまいます。
べつにブラック企業ではなくとも、この種の事件はいつでもどの会社でも起こりうるので、経営側としては、「規則を守る」だけでなく、「なぜそのような規則になっているのかを理解して運用し、間違いの指摘・改善提案ができる」そんな社員を育つような社内風土と教育体制を作る必要があるのでしょう。
ということをつくづく感じた事件でありました。
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