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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

論理思考:要素関連図を書こう!

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こんにちは。たまにエネルギーや安全保障問題についての駄文を書きますが、本職は文書作成能力向上トレーナーの開米です。

さて、前回こういう図を出して↓

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「理想」にまだ足りないものがあります。それは何でしょうか。「原発ゼロ」派の人はこれ、わかるかな・・・と書いておきましたが、「理想」のハコの中をいくら見ても何だか分からない場合、使える手としては

1:詳しい人に聞く (担当官庁、業界団体、シンクタンク等がWebや書籍で出してる情報を当たるのも可)
2:要素関連図を書く
といったものがあります。

「1:詳しい人に聞く」のほうは、わからないから教えてください、ということなのに対して、「2:要素関連図を書く」というのは自分で見つけるための1つの方法です。どちらか片方だけでは限界があるので、両方をやっていくべきです。

で、要素関連図とは何か、ですが、要するに、「関連する要素がどう関連付いているのかを、視覚化した図」です。

・・・・ううむ、何のこっちゃ。名前を言い換えただけやんか、と思われるでしょうが、一定の形式はないので、「要素の関連を視覚化する」という目標さえ達成できれば、要はどう書いてもいいんです。

一定の形式があれば、ロジックツリーとか連関図(QC手法)とか、因果ループ図(システム思考)とか、そういう名前をつけて「はい、こういう手法だから覚えて使ってね」というタイプの説明ができますが、ないのでしかたがないです。

問題の種類によって、「要素の関連を視覚化する」ために必要な図なんて千差万別です。手法はどうでもいいんです。わかればいいんですから、わかれば。

ということで試しに書いてみましょう。この「原発ゼロ」問題の「理想」に求める条件を考えるための要素関連図をざっくり書くとたとえばこうです。

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「電力需用者」が「電力会社」にお金を払い、「電力会社」は「資源国」にお金を払って燃料を調達し、それを電力に変えて需用者に供給する、という構図ですね。
この中で (a)原発ゼロ、(b)電気料金据え置き、(c)電力品質維持 はそれぞれ違う部分についての条件になっていますね。

実はこういう「要素関連図」を書くと、空白の部分が「考えるきっかけ」になります。

資源国に払うお金については何か条件はないのかな(国際政治的にここが問題になる場合は少なくありません。
資源国そのものについて何か条件はないのかな
燃料について何か条件はないのかな
と、こういうふうに「あまり意識していなかった条件を考えるきっかけ」が得られるわけです。

だから、要素関連図を書くと役に立ちます。

マインドマップを使ってもいいです。いつも使えるわけじゃありませんが、使えるときは役に立ちます。
ロジックツリーを使ってもいいです。いつも使えるわけじゃありませんが、使えるときは役に立ちます。
因果ループ図を使ってもいいです。いつも・・・しつこいですね(^^ゞ 以下同文。

(ちなみに、こんなふうに、「手法はどうでもいい、何を使ってもいい」と言われると、かえってやりにくいし、なにをやればいいか迷ってしまう、というのが普通でしょう。だからその「何をやってもいい」自由度を減らして、「じゃ、この手法でやってみてね」というスタイルにするほうが、たとえば研修プログラムとしては成立しやすいのですが、一方でそれをすると手法だけ形式的に覚えて「勉強した気になる」ケースも続出します。研修屋さんの悩みです。まあ、余談ですが)

参考までに、「資源国に払うお金」たとえば日本とイランやイラクとの関係においてここが問題になったことは過去何度もありました。それは現在にまで続いています。
また、「燃料」を運んでくるルートの安全性についても本当は考えなければなりません。

ただ、これらの要素について「原発ゼロ」派の人は聞く耳を持たなかったりしますし、いずれ「阻害要因」のほうに出てくるのでとりあえず後回しにしておきましょう。

実は「原発ゼロ」派の人でも無視できない、ある条件としてこういうものがあります。

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「環境負荷」ですね。

資源を採掘することにともなう環境負荷(シェールガスの採掘にともなう水質汚染は問題になってますね)。
発電・送電にともなう環境負荷(CO2、NOx、SOx、水銀、石炭スラグ等)。
電力需用者の活動にともなう環境負荷。
いずれも無視してはならないものですので、「環境負荷を上げない」という条件を「理想」に追加する必要があります。これを「環境品質を維持する」と表現しても通じるでしょう。

というわけで、足りなかったのは「環境品質」でした。

要素関連図を書くと、こういう「あ、そういえば環境ってのもあるな」という気づきも呼びやすいわけです。

一定の手法があるわけではありませんが、自分が分かる範囲でいいのでとにかく書いてみる、穴だらけでいいから書いてみる、視覚化してみる、ということが非常に重要です。

穴だらけでいいんですよ。それが、「考えるきっかけ、気がつくきっかけ」になるんですから。

「間違えたくないので、正解が見つかる手法を教えてください」 という考え方が近年若い人に増えているというウワサを聞きますが、実際はガンガン間違えるほうがいいんです。そのほうが早く気がつきます。

・・・・・次号に続く


(追記)「要素関連図」というワードで検索しても、たいしたものは出てきません。私が便宜上そう呼んでいるだけのものですから。

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