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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

意味が違うものは違う場所に書くことで文書はわかりやすくなる

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 こんにちは。文書構造化職人(謎)の開米です。大量・難解・わけがわからない情報を素人にわかりやすく説明したい、というご相談にお答えするのが仕事です。

 さて、前回、「課題と方法は区別する」ということを書きましたが、このためによく使うのが「書く位置を分けてしまう」というやり方です。

 例として、こんな文を見てみましょう。

厚生労働省では、新型インフルエンザの流行に対応するため、重症患者が増加する可能性を見越した必要な医療体制の構築や、市民に対する感染予防の呼びかけ等を行います。また、新型インフルエンザワクチン接種事業を、今年度は引き続き応急的に行うこととします。

 ↑これは「方法」」だけが書かれていて、「課題」がない文です。「課題」を補うと下記のようになります。

厚生労働省では、新型インフルエンザの流行に対応するため、【治療】重症患者が増加する可能性を見越した必要な医療体制の構築や、【啓蒙】市民に対する感染予防の呼びかけ等を行います。また、【予防】新型インフルエンザワクチン接種事業を、今年度は引き続き応急的に行うこととします。

 【治療】、【啓蒙】、【予防】とカッコ内に書いた3つの言葉が「課題」ですね。

 こんなふうに"カッコの中に書く"だけでも「書く位置を分ける」効果がありますが、図解ができる場合はこんな手が使えます。

2013-0610-03.JPG

 感染してしまった人には治療をするけれど、その前に予防しておくほうがいいので予防策を実施する。しかしそのためには市民への啓蒙が必要なので啓蒙活動をする、という形でロジックがたどれます。

 こんなふうに「課題と方法」を切り分けることで説明文が非常にわかりやすくなることはとても多いのですが、情報量としては同じであっても、これを「文章」で書くのはなかなか難しいし、せっかく書いてもわかりにくくなってしまうことが多いのです。(本稿では実例は省略しますが)

 ですので、上記の例のように図解してしまうことをおすすめします。
 一般法則としては、「意味が違うものは違う場所に書く」ということです。上の例では「課題を左に、方法を右に」分けていることがそれです。 これは文書をわかりやすくするために非常に役に立つ方法なのですが、あまり気を使って書いている人がいません。

 率直に言うと、国語教育で「以下のテーマで800字の小論文を書け」のよう文章形式の設問ばかりやっていちゃダメだと思いますね。論理的に複雑な情報というのはそもそも文章で表現するのには向いていないのです。無理矢理文章で書くような練習ばかり積ませても、ロジックを操作する能力は向上しません。


 それはさておき・・・・

 この例の場合は「課題と方法」でしたが、実際のところ、どのような形で構造化できるかは千差万別です。私はそれを発見するのが早いので、この種の研修を仕事にしています。

以上、今回は出張先のため簡単ですが、この辺で。

 ・・・・・続く

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