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「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(89)「節電の推進」は「発電手段の選択」とは無関係です

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 こんにちは。本業は文書化能力向上コンサルタントですが、趣味で原子力論考を書いている開米瑞浩です。

 さて、原発問題に関しては、「節電すれば電力需要は減るから原発は不要だ」という主張も一部に存在しますが、残念ながら「節電の推進」は「発電手段の選択」とは関係ありません。
 たとえばこれが逆に

これからは原発をガンガン使います。
従って、もう節電はしません。

 という主張になったら、「そりゃ変だな」と思いますよね。発電手段がなんであれ、少なくとも無理なく出来る範囲で節電はするべきですから。

 もう少しわかりやすく書くとこうなります。

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 日本は「国内資源」がほとんど無い国なので、資源国に金(A)を払って資源を買い(D)、それを使って起こした電気(E)に対して国内需要家が金(B)を払って電気を使い、その電気で作った製品(F)を外国に売って金(C)を稼ぎ、という形で経済が回っています。ここまでは単純化していますが、あたりまえの話。

 そして、「節電」というのはEを減らすということです。これはもちろん重要なこと。

 しかし、もっと重要な「あたりまえの話」は、

Aを減らす努力は、Eを減らす努力とは無関係に必要である

 ということです。

 そして、原子力を使う、というのは「Dを減らす」=「Aを減らす」ために最も効果が高い手段なのです。今はそれを封じたまま化石燃料で発電しています。

 再生可能エネルギー? それが使い物になるのは何年後ですか。10年経っても無理ですよ。そしてそのためにどれだけの投資が必要だと思っているのでしょうか。

 実際のところ「節電をするから、原発は必要が無い」というのは、

「国内で頑張って節電をしましょう。
そして頑張って稼いだお金を、
石炭・ガス・石油の資源国に湯水のごとく払いましょう」


 というそんな主張をしているも同然です。

 そういうリアルな現実を見て考えましょうよ。「原発を動かさない」というのは、世界中から馬鹿にされるような政策なんです、それは。資源国からしてみたら、ただのいいカモです。実際、こんな報道もありますね。

"【ビジネスの裏側】燃料交渉「悔しければ原発動かしてみろ」と言われた関電...シェールガスは日本を救うか"
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/130216/wec13021618010001-n3.htm

 「悔しければ原発動かしてみろと言われた」・・・こうなるのはあたりまえの話です。
 原発の全停止という馬鹿な政策をいまだに改められない国として、世界中から見くびられているわけです。

 そして世界的には原発は今も大増設ラッシュです。「福島原発事故によって原子力の危険性が証明された」なんて考えている国はどこにもありません。
 それでも、原発を止め続けますか?

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