オルタナティブ・ブログ > 開米のリアリスト思考室 >

「誰かが教えてくれることを信じるのではなく、自分で考えて行動する」ためには、矛盾だらけの「現実」をありのままに把握することから始めるリアリスト思考が欠かせません。「考える・書く力」の研修を手がける開米瑞浩が、現実の社会問題を相手にリアリスト思考を実践してゆくブログです。

原子力論考(96) 通信と電力(3) 通信自由化の時とは事情が違う3つの理由

»
こんにちは。本業は文書化能力向上コンサルタントで、電力にも原子力にも何の関係も無いのになぜか原子力論考を書いている開米瑞浩です。

このシリーズを書いているうちにちょっと古い記事が目にとまりました(週刊ポストですけど)

「発送電の分離が実現すれば、大阪の電気料金は半額になる可能性もある」
http://www.news-postseven.com/archives/20111207_74113.html

いや、そりゃ無理です。

そんな期待を持ってしまうのには、通信の自由化にともなうイメージがあるのかもしれないですね。通信の自由化は日本では1980年代から始まっていて、固定電話、携帯電話、ブロードバンド接続サービスなどいずれも「はっきり料金が下がる」という結果を伴っています。

特に10年ほど前のADSLの普及期のことはまだ印象に残っている方も多いでしょう。2001年に関連規制の緩和を受けてYahooBBが従来のほぼ半値という低価格での商用サービスを開始したときは、社会的にも大きな衝撃をもって受け止められましたから。

簡単に言うとこういう構図ですね。

2013-0623-1.PNG

規制緩和による競争促進の結果、従来は従量課金制が基本で高価・不便だったインターネット接続や携帯電話、無線データ通信サービスが定額(または準定額制)になり、安く便利になった。
これは競争促進がもたらした効果である。

電力についても、発送電分離をすれば競争が促進され、安く便利な電気が供給されるようになるはずだ。

というイメージです。

こういうふうに思いたいのは無理もないですが、電力についてはとてもそんなにうまく行くはずがありません。

というのは、通信が「安く便利に」なったのには、「規制緩和による競争促進」ではないところに理由があるからです。そして電力についてはその理由が成り立ちません。「競争促進」だけやっても「安く便利に」といった効果は期待できないでしょう。

ではその「通信が安く便利になった、競争促進以外の理由」とは何か、ですが、簡単に言うと

クオリティ低下への許容性の高さ
急速な技術革新
限界コストの低さ
の3点です。2000年代初頭のブロードバンドサービスではこの3点がいずれも当てはまりますし、それ以前から自由化が進んでいた携帯電話サービスについても事情はほぼ同じです。しかし電力についてはこの3点ともまったく当てはまりません。

2013-0623-2.PNG

長くなるので次回以降3つに分けて書くことにします。


■開米の原子力論考一覧ページを用意しました。
→原子力論考 一覧ページ
Comment(0)