原子力論考(71) その仕事には発がんリスクがあるから仕事をやめなさい! と言われたら、やめますか?
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久しぶりに原子力論考です。
まずはGEPR(Global Energy Policy Research)さんの記事紹介から。
"海外の論調から「放射能よりも避難が死をもたらす」-- 福島原発事故で・カナダ紙"
要点をまとめますと
こんなところですね。
いずれも極めて妥当な話で、本来は昨年3月の段階で日本政府主導でALARAからAHARSへの変更を働きかけるべきでした。
首相官邸の災害対策ページで「計画的避難区域」の説明がありますが、
問題は「居住者の安全を最大限確保するために、国際基準の下限で避難地域を設定」というところで、これでは実際には「安全を最大限確保」することにはならないのですよ。
現在までの放射線防護の研究から、短時間で100mSvの被曝をすると、がんによる死亡率が0.5%上がるということが仮定されています。そもそも日本人の3割はがんで死亡するので、これは30%が30.5%に上がる、という話で、実際にはよほど大規模な調査をしなければわからない程度のわずかな差です。
さて、そこで、自分の職場にある日突然見知らぬ人物がやってきて、次のように宣告されるシーンを想定してください。
・・・と、こういうことを言われたら、どう思いますか?
アホか、の一言で終わりでしょう。普通であれば。
0.5%に怖じ気づいてやってられっかこのボケ、こちとら忙しいんだ邪魔すんじゃねえ、帰れ帰れ、おととい来やがれ、おーい塩まけ塩、塩。
というぐらいの話です。
この話が悪いたとえだと思われるようなら、こちらの資料を御覧ください。
→http://monographs.iarc.fr/ENG/Classification/index.php
IARC、国際がん研究機関による、発がん性リスク一覧表です。↑こちらは英語なので、wikiですが日本語のもリンクしておきます↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/IARC%E7%99%BA%E3%81%8C%E3%82%93%E6%80%A7%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E4%B8%80%E8%A6%A7
Group1(発がん性がある)からGroup4「発がん性がおそらくない」までの4段階に分かれていますが、Group1にはアスベストのような有名なものもある一方で、たとえば「アルコール飲料」「喫煙」「木工家具製造」「靴製造あるいは修理」「石炭ガス製造」「塗装専従環境」「ゴム産業」「紫外線を発する日焼けマシーン」「鉄の鋳造環境」などなど、別に特殊でもない、昔からあるごく普通の職業がいくつもあります。
つまり、「がん死亡リスクが0.5%上がるからこの土地から避難しろ」というのが通用するのであれば、同じ理由で「木工家具製造」も「鉄の鋳造」も「靴製造あるいは修理」も「塗装」も職業として禁止されなければならない、そんな話なんです。
そんな無茶な話はないでしょう。
ちなみに、発がんリスクGroup2Aという、比較的高いグループに、「交替制勤務」「ディーゼルエンジンの排ガス」などもあります。
だからといって、たとえば「木工家具製造業には発がんリスクがあるから仕事をやめる」という選択を普通、人はしません。リスクがあるならあるで、そのリスクを合理的に減らすように手を打って仕事をするものです。たとえば木工家具製造なら「木工粉塵」がそのリスク源なので、防塵マスクをして作業をするだけで相当下がります。
結局のところ、「リスクがどの程度なのか」を量的に見極めてそれに応じて手を打つべきなのであり、「20mSvだから強制避難」のような乱暴な措置はかえって生活を破壊し、多大なストレスを与え、より大きな健康被害をもたらすことにしかなりません。
原発事故直後にはパニック状態になるのも無理はないのでしかたがないですが、もう1年半以上経っています。そろそろ、冷静になりませんか?
■開米の原子力論考一覧ページを用意しました。
→原子力論考 一覧ページ
まずはGEPR(Global Energy Policy Research)さんの記事紹介から。
"海外の論調から「放射能よりも避難が死をもたらす」-- 福島原発事故で・カナダ紙"
要点をまとめますと
1.東電福一事故での放射能の影響による死者は考えられないが、避難によるストレスは多数の死者をもたらす
2.日本政府は、避難によって人々をかえって危険な状況に追いやった
3.日本政府をこのような行動に突き動かしたのは、一般の人が放射線に抱く理屈ではない恐怖症と、怒れる有権者への恐れからによるものであろう
4.厳しい基準は、人命を救うかどうかではなく、政治的な判断で、低い基準に決まりがちだ
5.原子力事故時の避難基準はALARA「合理的に達成可能な限り低く」ではなく、AHARS「合理的に安全な限り高く」へ変更するべきである。
6.そう変更すれば、「避難者数は大幅に減り、将来的に必要が出てくる避難の際の複雑な問題点も減少する」
こんなところですね。
いずれも極めて妥当な話で、本来は昨年3月の段階で日本政府主導でALARAからAHARSへの変更を働きかけるべきでした。
首相官邸の災害対策ページで「計画的避難区域」の説明がありますが、
"計画的避難区域について -首相官邸ホームページ-(H23/4/15)"・・・とあります。
計画的避難区域とは、「今すぐ」ではなく「計画的に」避難すべき地域。
基準は、累積線量が20mSv/年に達する可能性がある地域。
この基準は国際基準(20~100mSv/年)の下限を採用したもの。
居住者の安全を最大限考慮する観点から、国際基準の下限で避難地域を設定した。
問題は「居住者の安全を最大限確保するために、国際基準の下限で避難地域を設定」というところで、これでは実際には「安全を最大限確保」することにはならないのですよ。
現在までの放射線防護の研究から、短時間で100mSvの被曝をすると、がんによる死亡率が0.5%上がるということが仮定されています。そもそも日本人の3割はがんで死亡するので、これは30%が30.5%に上がる、という話で、実際にはよほど大規模な調査をしなければわからない程度のわずかな差です。
さて、そこで、自分の職場にある日突然見知らぬ人物がやってきて、次のように宣告されるシーンを想定してください。
皆様が現在働かれているこの職業は、がん死亡率が有意に高い仕事です。この仕事をしていると、がん死亡率が0.5%上がるという信頼できる調査があります。
いますぐこの仕事を辞めて、新しい職業を探してください。
・・・と、こういうことを言われたら、どう思いますか?
アホか、の一言で終わりでしょう。普通であれば。
0.5%に怖じ気づいてやってられっかこのボケ、こちとら忙しいんだ邪魔すんじゃねえ、帰れ帰れ、おととい来やがれ、おーい塩まけ塩、塩。
というぐらいの話です。
この話が悪いたとえだと思われるようなら、こちらの資料を御覧ください。
→http://monographs.iarc.fr/ENG/Classification/index.php
IARC、国際がん研究機関による、発がん性リスク一覧表です。↑こちらは英語なので、wikiですが日本語のもリンクしておきます↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/IARC%E7%99%BA%E3%81%8C%E3%82%93%E6%80%A7%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E4%B8%80%E8%A6%A7
Group1(発がん性がある)からGroup4「発がん性がおそらくない」までの4段階に分かれていますが、Group1にはアスベストのような有名なものもある一方で、たとえば「アルコール飲料」「喫煙」「木工家具製造」「靴製造あるいは修理」「石炭ガス製造」「塗装専従環境」「ゴム産業」「紫外線を発する日焼けマシーン」「鉄の鋳造環境」などなど、別に特殊でもない、昔からあるごく普通の職業がいくつもあります。
つまり、「がん死亡リスクが0.5%上がるからこの土地から避難しろ」というのが通用するのであれば、同じ理由で「木工家具製造」も「鉄の鋳造」も「靴製造あるいは修理」も「塗装」も職業として禁止されなければならない、そんな話なんです。
そんな無茶な話はないでしょう。
ちなみに、発がんリスクGroup2Aという、比較的高いグループに、「交替制勤務」「ディーゼルエンジンの排ガス」などもあります。
だからといって、たとえば「木工家具製造業には発がんリスクがあるから仕事をやめる」という選択を普通、人はしません。リスクがあるならあるで、そのリスクを合理的に減らすように手を打って仕事をするものです。たとえば木工家具製造なら「木工粉塵」がそのリスク源なので、防塵マスクをして作業をするだけで相当下がります。
結局のところ、「リスクがどの程度なのか」を量的に見極めてそれに応じて手を打つべきなのであり、「20mSvだから強制避難」のような乱暴な措置はかえって生活を破壊し、多大なストレスを与え、より大きな健康被害をもたらすことにしかなりません。
原発事故直後にはパニック状態になるのも無理はないのでしかたがないですが、もう1年半以上経っています。そろそろ、冷静になりませんか?
■開米の原子力論考一覧ページを用意しました。
→原子力論考 一覧ページ
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