「時間による変化を明示する」のは手間がかかるけれど大事なのです
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昨日、VoiceLinkを使って行ったオンライン講座、
の内容をここに紹介します。
課題テキストはこういうもの。
可用性と信頼性というのは情報システム(など)がどれだけ安定して使えるかを表す指標で、よく情報処理技術者試験などで出題されている概念ですが、この2つ、紛らわしいんですよね。まあ、紛らわしいからこそ出題されるわけですが・・・
実際、前述の課題テキスト原文だけではその違いを区別して理解するのは困難で、本当はもっと詳しく書かなければなりません。しかし、この程度の説明しか覚えておらず、結果として誤解してしまっているケースがよくあります。
試しに「可用性」について簡単に図に書くと、こうなります。赤い部分が、「使いたくても使えない時間」です。
一方、信頼性のほうは「平均故障間隔」と「平均復旧時間」で考えるわけですから、
こんなふうになり、故障間隔と復旧時間の平均を取ると信頼性の数値が出る・・・わけですが、しかしこれ、平均を取ったらそのまま「可用性」の数字になるんじゃないの? という気がしてしまいます。
だから、可用性と信頼性は紛らわしいわけです。
そこで、その紛らわしいところを区別するためにいろいろ調べるとわかってくることがあります。それを簡単な例で書いてみましょう。同じ働きをする2台の機器によってユーザーにサービスを提供するシステムで考えた例です。
こう書くと少しマシになります。ユーザーにとって使えるかどうかという観点で見ているのが「可用性」であり、システムを構成する個別の機器で見ているのが「信頼性」だということはこの図のほうがわかりやすいですね。
しかあし、まだ足りません。
【図解の原則】
1:関連する概念は、どう関連するのか、仕組みが理解できるように明示すべき
2:時間に沿って変化が起きるものはその変化のプロセスを明示すべき
↑図解の原則、と書きましたが、図解に限らず、複雑な概念を説明しようとするときにはこれは大事な原則です。この観点に照らしてみるとまだ足りません。
そこで、足りるようにさらに説明を足してみましょう。
まずはグラフを書きます。
「1台が故障してもサービスは継続できる。ただし性能は落ちる」とあるので、性能指標を縦軸に、時間軸を横軸にとります。
これで、「時間に沿って変化が起きる」状態を表現します。
ここから「可用性」の指標を出すためには、さらに2つの基準値を書かなければなりません。
まずは「性能基準」です。性能がこの基準を下回っていたら、たとえ動いていても「ダメ」と判断する、そんな基準です。たとえば自動車のエンジンが不調になって時速70kmしか出なくなったとしましょう。これは市中走行するには十分な性能ですが、高速道路を走るのは危険です。つまり高速道路と市中とでは性能基準が違うわけです。
もうひとつは「稼動が求められる時間」です。1日24時間365日ノンストップで動かしたい場合と、1日12時間だけ動けばいい場合ではかなり違います。1日12時間だけ動けばよくて、性能基準も厳しくない場合は、一台故障してもサービスが止まるのを待って交換すれば問題ないので、可用性を上げやすいわけです。
↑これはゆるい性能基準で t1~t2 の可用性を計算した例です。赤い部分だけが「使用不能」と判定され、可用性90%ぐらいになります。t2の時間が右にずれるとその分可用性が下がり、左にずれると上がるのも明らかですね。
機器の故障状況(=信頼性)に変化がなくても、「基準を変える」だけで可用性は変わるわけです。
一方、性能基準を厳しくするとこうなります。
性能基準を上げると、やはり可用性の数字は下がります。個々の機器がどのぐらい故障するか、という信頼性と、可用性とは別な概念なわけです。
というわけで、「可用性と信頼性」の違いをしっかり区別して理解するためにはこんな説明が必要です。
【図解の原則】
1:関連する概念は、どう関連するのか、仕組みが理解できるように明示すべき
2:時間に沿って変化が起きるものはその変化のプロセスを明示すべき
「可用性」という概念は、システムを構成する個々の機器の信頼性に加えて、性能などの要求基準によって変わるものですが、その仕組みは冒頭に上げた課題テキスト原文ではわかりません。
また、「時間に沿って変化が起きる」ことを明示するためには手間がかかります。似てはいても微妙に違う図を何枚も書かなければいけないからです。その手間を惜しむと「わからない説明」になります。
そんなわけで、今回上げた「図解の原則1・2」を守っていない文書は世の中に非常に多いもの。「なんだこれ、わかりにくいなあ・・」と感じる文書があったら、チェックしてみませんか?
開米の図解ライティング講座 0712 「時間による変化を明示する」
https://www.vlvlv.jp/#!/room2956
時間軸に沿って変化するものについて説明する場合、その変化のプロセスを明示するとしないとで、わかりやすさが格段に違う、というお話です。
の内容をここに紹介します。
課題テキストはこういうもの。
【可用性と信頼性 課題テキスト原文】
可用性とは、システムがその目的の機能を提供できることを表し、指標としてはユーザーがサービスを利用できる時間の比率が使用されます。
信頼性とは、単一の機器の壊れにくさを表し、指標としては平均故障間隔と平均復旧時間が使用されます。
可用性と信頼性というのは情報システム(など)がどれだけ安定して使えるかを表す指標で、よく情報処理技術者試験などで出題されている概念ですが、この2つ、紛らわしいんですよね。まあ、紛らわしいからこそ出題されるわけですが・・・
実際、前述の課題テキスト原文だけではその違いを区別して理解するのは困難で、本当はもっと詳しく書かなければなりません。しかし、この程度の説明しか覚えておらず、結果として誤解してしまっているケースがよくあります。
試しに「可用性」について簡単に図に書くと、こうなります。赤い部分が、「使いたくても使えない時間」です。
一方、信頼性のほうは「平均故障間隔」と「平均復旧時間」で考えるわけですから、
こんなふうになり、故障間隔と復旧時間の平均を取ると信頼性の数値が出る・・・わけですが、しかしこれ、平均を取ったらそのまま「可用性」の数字になるんじゃないの? という気がしてしまいます。
だから、可用性と信頼性は紛らわしいわけです。
そこで、その紛らわしいところを区別するためにいろいろ調べるとわかってくることがあります。それを簡単な例で書いてみましょう。同じ働きをする2台の機器によってユーザーにサービスを提供するシステムで考えた例です。
こう書くと少しマシになります。ユーザーにとって使えるかどうかという観点で見ているのが「可用性」であり、システムを構成する個別の機器で見ているのが「信頼性」だということはこの図のほうがわかりやすいですね。
しかあし、まだ足りません。
【図解の原則】
1:関連する概念は、どう関連するのか、仕組みが理解できるように明示すべき
2:時間に沿って変化が起きるものはその変化のプロセスを明示すべき
↑図解の原則、と書きましたが、図解に限らず、複雑な概念を説明しようとするときにはこれは大事な原則です。この観点に照らしてみるとまだ足りません。
そこで、足りるようにさらに説明を足してみましょう。
まずはグラフを書きます。
「1台が故障してもサービスは継続できる。ただし性能は落ちる」とあるので、性能指標を縦軸に、時間軸を横軸にとります。
これで、「時間に沿って変化が起きる」状態を表現します。
ここから「可用性」の指標を出すためには、さらに2つの基準値を書かなければなりません。
まずは「性能基準」です。性能がこの基準を下回っていたら、たとえ動いていても「ダメ」と判断する、そんな基準です。たとえば自動車のエンジンが不調になって時速70kmしか出なくなったとしましょう。これは市中走行するには十分な性能ですが、高速道路を走るのは危険です。つまり高速道路と市中とでは性能基準が違うわけです。
もうひとつは「稼動が求められる時間」です。1日24時間365日ノンストップで動かしたい場合と、1日12時間だけ動けばいい場合ではかなり違います。1日12時間だけ動けばよくて、性能基準も厳しくない場合は、一台故障してもサービスが止まるのを待って交換すれば問題ないので、可用性を上げやすいわけです。
↑これはゆるい性能基準で t1~t2 の可用性を計算した例です。赤い部分だけが「使用不能」と判定され、可用性90%ぐらいになります。t2の時間が右にずれるとその分可用性が下がり、左にずれると上がるのも明らかですね。
機器の故障状況(=信頼性)に変化がなくても、「基準を変える」だけで可用性は変わるわけです。
一方、性能基準を厳しくするとこうなります。
性能基準を上げると、やはり可用性の数字は下がります。個々の機器がどのぐらい故障するか、という信頼性と、可用性とは別な概念なわけです。
というわけで、「可用性と信頼性」の違いをしっかり区別して理解するためにはこんな説明が必要です。
【図解の原則】
1:関連する概念は、どう関連するのか、仕組みが理解できるように明示すべき
2:時間に沿って変化が起きるものはその変化のプロセスを明示すべき
「可用性」という概念は、システムを構成する個々の機器の信頼性に加えて、性能などの要求基準によって変わるものですが、その仕組みは冒頭に上げた課題テキスト原文ではわかりません。
また、「時間に沿って変化が起きる」ことを明示するためには手間がかかります。似てはいても微妙に違う図を何枚も書かなければいけないからです。その手間を惜しむと「わからない説明」になります。
そんなわけで、今回上げた「図解の原則1・2」を守っていない文書は世の中に非常に多いもの。「なんだこれ、わかりにくいなあ・・」と感じる文書があったら、チェックしてみませんか?
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