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キングジムファイリング研究室の野原淳です。情報を収集し、蓄積し、検索し、作成し、活用する一連の流れを、便利に、楽しく、速やかにする整理のしかたや工夫、便利なツールなどについて私の考えを書いていきます。コンサルティングでは話さない、小さな改善や未完成のアイデアなども紹介したいと思います。

書評『すべてのビジネスをスマホが変える』神尾 寿著 徳間書店

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 ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材しているジャーナリストが、我が国のスマートフォンのこれまでをまとめ、現在我々が置かれている位置を明確にし、さらにスマートフォンのこれからを推測した一冊。

 「ガラパゴス」と揶揄される我が国の携帯端末が一気にスマートフォンへとシフトしたのはなぜか。ともすると今のスマートフォンと同レベルの機能を持ち、さらにはわが国独特のおサイフケータイやワンセグなどのさらに高度な機能も備えていた「ガラケー」とスマートフォン(=高機能携帯電話)の違いを示すとともに振り返ります。

 筆者は、現在の我が国の状況を「スマートフォン第2ラウンド」と位置づけ、iPhoneの登場から詳細に振り返ります。そして、「スマートフォンシフト」がなぜ起きていったのかを、筆者ならではの経営トップやユーザーへのインタビューをもとに紐解いていきます。

 スマートフォンを語る上で、iPhoneに対抗するAndroidを抜きにすることはできません。Androidの動きを、ソニーエリクソン、サムスンを2つの「S」と称したメーカーの視点でつづり、HTCやハーウェイなどアジア勢の動きにも触れています。そして日本のメーカーは...?

 そしてこれから、iPhoneとAndroidというグローバルなOSの中で、我が国独自の「ガラパゴス」はどうなっていくのか。筆者の得意とする、交通ビジネスや、電子マネー、非接触ICなどを通じて語られています。グローバルの中で、我が国の良きローカルをビジネスとしてどう実現していくか。

 

DSC02564_誠ブログ用.jpg ちなみに私は、できることなら全てを持ち歩きたいと思う者です。何もかも持ち歩いて、いつでもどこでも、家やオフィスと同じことができる生活が究極の理想です。この理想を、小学生のころから思い描いてきました。

 その理想に近づくため、小さなデバイスにできるだけ多くの機能を詰め込んだ機器が昔から好きでした。しかもそれは、自分流にカスタマイズできることを求めていました。

 今、私の理想はスマートフォンによってかなり進捗したと思います。

 スマートフォンはiPhoneの登場によってあっという間にわが国に根付き、iPhoneが作り出した市場にAndroidが飛び込んできて、ガラケーの版図を塗り替えてしまいました。

 私は筆者が我が国の情報革命の1度目の情報革命と定義するiモードの登場も、2度目の情報革命と定義するiPhoneの登場も、PHSとPDA→WindowsMobileという傍流で見てきたため、この歴史的ダイナミズムをずっと蚊帳の外で過ごしました。誠ブロガー向けに開催されたAndroid機Life Toutch Note(NEC)のタッチイベントでようやく開眼し、IDEOSというアンドロイド機を購入したのが丁度1年前です。

 -すべてを持ち歩く- その理想を、理解した上で自らデバイスを選び、託したいと思います。世の中の流れに、ただ従うのではなく。

 ですからいつかしっかり立ち止まって、わが国のスマートフォンのこれまでとこれからと、自分の現在位置を把握したい、そう思ってはいました。しかし、いつかいつかと思いつつ、ずっとできずにいたのです。

 なにしろ情報のスピードと量がもあまりにも速くて多いこの業界ですから、自力ではとてもそう言うまとめと振り返りなんか、出来ないんですね。

 ファイリングで言えば、情報の量もレベルも、処理できる能力を超えてしまっているのです。机の上に情報を積み上げていくのが精一杯で、いつかいつかと思いつつ、いつまでも手をつけられない状態だったのです。

 本書は不要な情報はしっかり排除し、必要な情報をトップのインタビューをはじめとする信頼できる取材の結果をもとに順序立てて提供してくれる、貴重な本です。

 筆者の言葉をお借りすれば、今後、スマートフォンは我々の可処分時間の多くを消費するデバイスとなるでしょう。

 そうしたデバイスとして何が選ばれ、何が淘汰されるのか。

 個人としても、ビジネスパーソンとしても、ビジネスとしても、この流れについて正しく理解することは、非常に役に立つことだと思います。

 このような本に、全人類がスティーブ・ジョブズという天才を失った、ひとつの区切りの時に出会えたのは実に幸運です。

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