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iOSにおけるリワード広告でのUDIDを使わない計測方法の提案

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最近、特にUDIDやIMEIの取り扱いにおける世論の声が

とても大きくなってきており、業界全体がセンシティブになってきていることを肌をもって感じています。また、iOSの場合この個体識別番号を用いることをApple社から推奨しないといったかたちで発表されていたりして、リワード広告を用いたプロモーションを行う場合「個体識別番号を使わなければいけないの?」とか多くの質問をいただいております。

Apple Sneaks A Big Change Into iOS 5: Phasing Out Developer Access To The UDID | TechCrunch
Apple Shifts Stance on Mobile Software Identifier - WSJ.com


これまで何回かリワード広告システムの概要について触れてきましたが、

個体識別番号はリワード広告におけるユーザユニークIDを特定するための一つの方法であり、このIDを使わなくともリワード広告は行えると何回か書きましたが、今回はその一例の仕組みを書きたいと思います。

タイトルに『提案』と書きましたが、それには理由があり、おいそれとリワード業界全体が一気に転換することができないのが現状です。そういった要因を打開していくひとつのキッカケとなればと思いこのエントリーを書いています。

初めてこのエントリーにたどり着いた方は、できたら下記のエントリーをざっとみていただき、リワード広告ってなんだ?ということをご理解いただけたらと思います。

そもそもリワード広告ってなんだろう?:That's the Way to GO!:ITmedia オルタナティブ・ブログ
初めてのリワード広告① - 仕組み編:That's the Way to GO!:ITmedia オルタナティブ・ブログ
初めてのリワード広告② - 計測編:That's the Way to GO!:ITmedia オルタナティブ・ブログ

まず、たとえ話しのおさらいも含めて、

下の図がこれまで説明してきたリワード広告における計測概念になります。

とあるゲームサイト「みしゅくランド」があってユーザ数100万人。ゲームをクリアしていくとゲーム内の仮想通貨「じんポイント」が溜まって、強い武器を買ったり体力が回復したりするときに「じんポイント」が使われます。このゲームサイトは大変人気があって、ユーザのアクティブ率も高いので広告効果も抜群です。そこで「アプリa」を提供しているA会社が、もっとアプリのダウンロード数を増やしたいので、この「みしゅくランド」に広告を掲載したいということになりました。「みしゅくランド」が広告媒体(メディア)、広告主(クライアント)はA会社となります。

20120228_img1

アプリダウンロード後、ユーザがアプリを起動すると成果通信が行われるため、起動時にユーザへのキックバック(ポイント獲得など)が行われています。 詳しくは「初めてのリワード広告② - 計測編」を参照ください。

そして今回説明していく計測概念は下の図になるのですが、

アプリの広告掲載面からアプリを起動するといった動作が必要になります。なので、これまではアプリ「ダウンロード」ボタンだけだったのですが「アプリを起動」ボタンが必要になります。これまで説明してきた概念図より複雑なため順を追って説明していきたいと思います。

20120228_img2

①から③まではこれまでと同様なのですが、異なるのが④からになります(専門用語が多いため注釈を参考にしてください)。

広告掲載面に「アプリを起動」ボタンを設置するのですが、このボタンにはアプリを呼び出すURLスキーム(*a)が設定されています。

このボタンをタップするとアプリが起動するのですが、アプリが呼び出されたときユーザユニークとなるUUID*bをアプリ内で生成します。

このUUID(Universally Unique Identifer)とはRFC 4122(*c)で規定されている『絶対的に一意であることが保証されてるわけではないが、実用上はほぼ、世界中に唯一とみなして扱って困難がないといわれているID』となり、個体識別番号のように端末に紐づくIDではありません

そしてそのUUIDを端末に保持させるのですが、生成日時とともにKeyChain(*d)という場所に保管します。このKeyChainは、IDやパスワード、証明書やノートなどを格納するセキュアなストレージになり、ここの領域を扱うアプリからしかアクセスできず、またアプリを消しても保持することが可能になります。ここに格納するIDのことをインストールごとにユニークなID、UIID(Unique Installation Identifier)と呼んでいます。

そして、このUIIDをユニークユーザIDとして、クリックと成果通知を紐づけるセッションIDとでユーザへのインセンティブ付与といった流れになります。

ここまで計測方法について書いてきましたが、

「じゃ、この方法に変えればいいじゃない!」となりますが、この方法にするためには、いくつかの問題をクリアしていかなければいけません。

1.ユーザ導線が変わる
この計測方法の場合、アプリ掲載面に戻ってそこからアプリを起動しなければいけないため、今までの導線に慣れたユーザからしてみると少々困惑する可能性も否めません。しかし、今まで提供させていただいたメディアの統計では、もともとの「ダウンロード」ボタンひとつだったUIから「ダウンロード」と「起動する」ボタンに変えたときのCVR(コンバージョンレート)は、ほとんど変わらないといったことが実証されています。ユーザが迷うことの無い、しっかりとした誘導を行えば、問題はクリアできると思います。

2.広告掲載メディアのUIが変わる
1と同じことなのですが、広告掲載メディアの広告面を今までとは違った仕組みを用意する必要があります。今まではアプリのダウンロード先のボタン一つだったものをダウンロードボタンと起動ボタンの2つになるため、若干の改修が必要になります。

3.対象OSの制限
KeyChainを使う場合、アプリの対象OSが4.X以上であることが必須になります。なので、OS3.Xを対象としているアプリの場合、この計測方法を用いることができません。そもそもAppleもサポート・・・とはいいつつも、幅広いユーザを獲得できたことに越したことはないので、ネックになる可能性がありますが、時間の流れとともに解消されるものと考えています。

最後になのですが、いくらUDIDを使わない計測方法を確立させているとしても、プロモーションを行う広告主側・広告を掲載するメディア側・そしてリワード広告を利用するユーザと、すべてのステークホルダーに影響が及ぶため一斉に呼びかけを行い、対応していただく必要があります。何度かこういった対応を行ってきましたが、事前準備ふくめきちんとした計画と、その後のサポートが必要になり簡単なことではないのですが、しっかりとした対応が求められるのだと思います。

また、リワード広告で圧倒的なシェアを誇る海外ではUDIDをそのまま使う会社が多く(*e)、今や国際展開を前提に考えなければ成り立たない現状、向こうの計測方法に対応せざるをえないのかもしれません(個人的な主観が強いのかもしれませんが)。

が、少しずつではありますが、世の中の状況などから、この計測方法を選択される広告主やメディアが増え始めているというのも事実です。これからリワード広告におけるデファクトスタンダードがどうなっていくのか、今後しっかり見据えていく必要があると考えております。

*a URL scheme
iPhoneではURL schemeを使ってアプリを起動(同時に引数を渡すことも可能)することができます。例えば今回の説明で使っている「アプリa」にapps-aというURLスキームを設定したとします。そうすると「apps-a://」でそのアプリを呼び出すことが可能です。

Apple URL Scheme Reference: Introduction
URL schemeを使ってアプリを起動する - 強火で進め

*b UUID
UUID とは - Linuxキーワード:ITpro
Universally unique identifier - Wikipedia

*c RFC 4122
セントラルレジストラを必要としない方法でリソースの汎用一意識別子を作成するためのシステムを定義。

A Universally Unique IDentifier (UUID) URN Namespace

*d KeyChain
Keychain Services Programming Guide
[iOS] Keychain Services とは - Cocoaの日々 

*e 海外のUDID事情のメモ
日本では最近こういった個体識別番号&プライバシーポリシー問題など数多くあり、暗号化・ハッシュ化することはもちろんのこと、使うことすらNGという感じになってきているかと思います。しかしながら、仕様書レベルでしか判断できてませんが、海外ではナマの状態で個体識別番号をやり取りしたりということがあるのが現状ということに驚かせられました。Appleの発表後、個体識別番号を使ったアプリがリジェクト(アプリの申請でApple社側から拒否)されたということは聞いたときがないのですが、今後増えるのかどうか要チェックです。

 

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