初めてのリワード広告① - 仕組み編
プロフィールに記載しています通り、現在サイバーエージェントのグループ会社にて、リワード広告を取り扱う戦略子会社『CAリワード』という会社で働いています。正直、転職前はリワード広告以前に、インターネット広告などとはほぼ無縁であったため、日夜 勉強の毎日です。こんな状態ですので、リワードとは?広告とは?といったことはWikipediaに載ってるくらいの情報しかまだ知らない(それはそれで問題)のですが、初めての業界だからこそ知り得る情報が多く、またネットを検索してもリワードの仕組みとかの情報が少ないので、まずはリワード広告システムの技術的なところから触れていきたいと思います。
Wikipediaの説明は少しわかりにくいのですが、簡単にいってしまうと成果報酬型広告でアフィリエイトに似たような広告手法になります。最近ではソーシャルメディアなどに多くみられ、例えば「アプリをダウンロードすると10ptもらえる」といったものが一般的です。その広告(アプリをダウンロードする)に対する報酬(ポイントやアイテム)を還元することを総じてリワード広告と呼んでいます。この報酬はソーシャルメディアのポイントや、アイテムといった仮想的なものが一般的で、有料のアプリや実際に販売されているお菓子などの商品やもその対象となっています。
まずは、その仕組み部分を紐解いていきたいのですが、スマートフォンにおけるリワード広告の仕組みは、私が入社した8月からこの4ヶ月間あまりでものすごく変化しています。もともとフィーチャーフォンのころからこのリワードはあったのですが、フィーチャーフォンからスマートフォンへとプラットフォームの変化に伴い、大きく変わってきています。それはまさに変化に対して追いつけ追い越せと走っているのですが、スマートフォンにおけるユニーク判別、これが大きな問題となりシステムを対応させざるを得ない状況といった感じです。
このユニーク判別、つまりは「個体識別番号」に関することは、少し前にとあるアプリの問題から騒がれていて、業界全体がセンシティブになっているため、触らぬ神には祟りなしと書こうか悩みましたが、折角この業界にいるんだし、システムをやっていて近い部分にいるので、何の目的で使われている(いた)のか?ということから書いてみたいと思います。
#現在のリワード広告システムでは個体識別番号を使わない計測方法があり、当社もその方式を選択しています。また、業界として個体識別番号に対するガイドライン的なものも今は定まっていないためフワフワしている状態というのが現在だと思います。個体識別番号自体がプライバシー情報にあたるのか否かなどは今後とも議論が続くでしょうし、私たちとしても避けるよりも、どうのようにしたら問題ないかということをよく見定め、検討を進めていくべきだと感じております。
スマホアプリとプライバシーの「越えてはいけない一線」- @IT
なぜIMEIの利用が問題視されたのか--個人情報とプライバシーをめぐって - ZDNet Japan
とてもわかりやすくまとまっているので、事の発端・経緯・問題点などは上の記事から読んでいただければと思うのですが、そもそも何故こういった個体識別番号を使わなければならなかったのか?から紐解いていきたいと思います。
そもそもこの問題の背景にはフィーチャーフォンでの認証に端末IDが利用されてきました。これは行動ターゲティング広告やアフィリエイトといったサービスを実現させるため、サービスの仕様上の必要に迫られてのことでした。上記の記事にある通り今までは「ガラパゴスゆえの一種の安全性」、つまりキャリアが個人を特定するID(docomoだったらドコモID)といったかたちで一意性を保つIDをキャリアが発行していました。(スマホでも各キャリアが同じよなIDを発行しているみたいですが、iモードのときとは若干違うようですね)
しかしながらiPhoneやAndroidといったスマートフォンにもこういったキャリアのIDを発行すること自体は可能だと思うのですが、Wi-Fiの場合どうするかや、予想以上にiPhone・Androidの普及速度が早いため対応できなかったのではと思います。現に今でもdocomoのAndorid端末でキャリア決済(spモード)を使おうとするとキャリア回線(3G)でないと使えないのもここにあると思います。
話を戻して個体識別番号。なんぞやというのは、検索すればいくらでもヒットするのですが、「それで何に使うの?」という感じになるかと思います(実際、私がそうでした)。たぶん個体識別番号の漏洩による○○○とか、プライバシーのあり方など多く議論されてますが、実際どのように利用されているのかというのは、(それほど重要でないため)あまりネット上にはない気がします。なので、例え話をしながら説明していきます。
とあるゲームサイト「みしゅくランド」があってユーザ数100万人。ゲームをクリアしていくとゲーム内の仮想通貨「じんポイント」が溜まって、強い武器を買ったり体力が回復したりするときに「じんポイント」が使われます。このゲームサイトは大変人気があって、ユーザのアクティブ率も高いので広告効果も抜群です。そこで「アプリa」を提供しているA会社が、もっとアプリのダウンロード数を増やしたいので、この「みしゅくランド」に広告を掲載したいということになりました。(広告代理店とかそのへんは割愛)「みしゅくランド」が広告媒体(メディア)、広告主(クライアント)はA会社となります。
ただ、広告を出すだけでは「みしゅくランド」で遊んでいるユーザメリットがないので、アプリをダウンロードしてインストールすれば、10じんポイントをプレゼントしようといった具合に、仮想通貨を報酬にすることで、アプリインストールのモチベーションを上げようということになりました。
さてさて、この広告出稿費いくら?と計算するとき、
①PVから大体の広告費を決める
②1インストールあたりの金額を決めてその分だけもらう
といったパターンが考えられます。
①の場合、PVから大体のインストール数などを算出できますが、もし無闇矢鱈にPVをカウントする仕組みをこのブログに仕掛けておいて計算しているかもしれませんし、そもそもどのくらいダウンロードされてインストールされるか広告を出してみてわかるでわからないので、リスクが高いです。
そこで②のインストールした分だけお金を払いますよとしておけば、リスクも少なくすみ、インストールされればされるほど「みしゅくランド」を運営するボクは儲かって嬉しいですし、A会社も多くの人にダウンロードしてもらって嬉しいですし、ダウンロードしたユーザもじんポイントがもらえて嬉しいと、みんながハッピーになれるといった感じです。
じゃ、そのインストールをどうカウントするか?そこが問題になります。そこで出てくるのが今、問題になっている個体識別番号なのです。iPhoneの場合はAppStoreというApple社が管理するところからダウンロード、Androidの場合はAndroid MarketというGoogle社が管理するところからダウンロードします。各マーケットからダウンロードしてインストールといった流れです。
「みしゅくランド」に掲載されたアプリaの広告をクリックした回数は、リダイレクトプログラムを作っておけば簡単にカウントできます。1人が複数回クリックしたかはブラウザのCookieなどを使えば重複カットできますが、インストールしたことまでは取得することができません。(いくつかのリワードサービスではこのクリックで成果報酬しているものも多数ありますが)
クリック回数はわかれど実際ダウンロードされたのか?インストールされたのか?ということは、アプリのダウンロード管理を行なっているAppleやGoogleに聞かなければわかりませんし、公開したとしても「みしゅくランド」を経由してどのくらいダウンロードされたかとかそんな細かく教えてくれるわけがありません。
じゃあ、どうすればいいかというと、ダウンロードされインストールされたアプリaが起動したときに、「みしゅくランド」の管理するシステム「みしゅくランドシステム」に通知してくれればわかるよね!といった具合です。
はい、じゃこれでやりましょう!となりますが、ここでも問題が。広告をクリック→アプリaダウンロード→インストールで、10じんポイントがプレゼントされます。そこで、あるユーザがアプリaを端末からアンインストールして、もう一回広告をクリック→アプリaダウンロード→インストールしたらどうでしょう?なんと10じんポイントがもらえちゃいました。
そうなのです。クリックしたユーザとインストールしたユーザを紐付けるため&既にダウンロードしてインストールしたかを特定するために端末一意となるID→個体識別番号と同等のユニークIDが必要になってるといったのが現状です。(このほかにも、個体識別番号を使わずメディアやプラットフォーム、この場合ですと「みしゅくランド」の会員IDをユニークIDとして扱うといったケースもあります)
個体識別番号は、iOSでUDID・AndroidでIMEIやAndroidIDになります。業界のぶっちゃけ話をしちゃうと、今回の「みしゅくランド」にアプリを掲載してポイントバックするといった計測を行うためにUDIDに代わるIDでの計測は確立しています。たぶんアプリの認証とかでも使えるのでそれが一般的になってくるのではと考えてます。
そんなわけで次回はiOS・Androidの計測方法や、なんでそういった計測方法になったかなどの経緯を紹介していきます。
2011/12/15 追記:
続きはこちら 初めてのリワード広告② - 計測編
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