SaaS普及の課題
前週のハナミズキです。今は台風の潮風を浴びて少し萎れてしまいました。
過去、ITを活用しようとするユーザ企業は、電算室を作り、コンピュータを購入し、パンチャーやSEを採用し、アプリケーションプログラムを開発する必要がありました。
やがて、パンチャーは入力代行会社に置き換わり、SIerを活用することによって社内SEも少なくなり、iDCのハウジングによって多くのサーバルームも無くなりました。更にホスティングによって、必ずしも自社でサーバを購入する必要がなくなりました。
このように「所有」から「利用」へコンピュータ利用形態は変化・進展してきました。残されているのはソフトウェアだけです。ソフトウェアの多くも「所有」から「使用」に移っていくのは必然です。何故なればその方が合理的だからです。
ホスト・端末からクライアント・サーバへの移行は本来あるべき主従への変革でした。SaaSもITのハード・ソフトからIT活用への本来あるべき主従の変革です。
SaaSの現状は、黎明期から普及期に移行する段階です。普及期に入るまでには、まだまだ多くの懸念が存在します。
1. セキュリティは大丈夫か?
2. 自社の重要なデータを他社に預けて大丈夫か?
3. レスポンスとダウン対策は大丈夫か?
4. カスタマイズに限界があるのでは?
5. 大規模になるとコストが増えるのでは?
6. SAPやOracle EBSで構築してきたような大規模で複雑な基幹系システムにも利用できるのか?
などなどです。
1. に関しては、各社が自社で実施しているセキュリティ対策よりも、SaaSプロバイダーのデータセンターのセキュリティの方がはるかに強固です。
2. に関しては、すでにiDCに預けているのではないでしょうか?
3. に関しては、Salesforce.comを使ってみてレスポンスにはまったく違和感はありません。ダウン対策も複数のデータセンターによって運用されており、世界各地の稼動状況やレスポンスタイムはhttp://trust.salesforce.com/trust/jp/ によってリアルタイムに公表されています。
4. に関しては、パッケージ所有と較べてカスタマイズに限界があると書かれた記事をよく見ますが、その根拠までは言及していません。実際にSalesforce.comを導入した体験からはカスタマイズの限界は感じられませんでした。限界があるとすれば、容易に導入できるといった宣伝文句に踊らされて安易な導入体制で望んだ場合でしょう。SaaSやSFAといっても、一連の複雑な業務プロセスをシステム化するわけで、単独のExcleファイルの開発とは異なり、エンドユーザの片手間では、自社のビジネスモデルに最適なカスタマイズを総て行うことは不可能です。
5. に関しては、現状のSaaSプロバイダーのプライシングでは、あるユーザ数を越えると「所有」するよりも高くつくことになるでしょう。実際は大型商談は個別値引きが適応されていると思いますが、ユーザ数帯域によってユーザ単価が異なるといったリーゾナブルなプライシングが待望まれます。
6. に関しては、ERPも提供するSaaSプロバイダーも存在しますし、Salesforce.comはPaaSやAppExchangeによって利用できるアプリケーションを徐々に拡大しています。