バイブコーディングを使ったAI駆動・対話型アジャイル開発

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» 2025/04/11

最近、「バイブコーディング (Vibe Coding)」という言葉が話題となっています。AIツールを最大限に活かして、開発者の直感に身を任せ、その場の「雰囲気」や「ノリ」（Vibe）でコーディングを進める開発スタイルです。明確な仕様書や詳細な計画に基づかず、試行錯誤しながら「良い感じ」を目指して実装を進めるアプローチとも言えるでしょう。

アジャイル開発のユーザーとの合意形成プロセスで、この「バイブコーディング」を使えば、その場で「動く現物」すなわち「デジタル・モックアップ」を作り、即座に変更もできるので、ユーザーと高速かつ対話的に合意形成を進められます。

アジャイルの原則（顧客との協調、動くソフトウェア、変化への対応）を踏まえたスクラムフレーム・ワークに、この「バイブコーディング」を使った場合、どのような手順になるかを整理してみました。

スプリントプランニング（パート１）

フェーズ1: ゴール設定と仮説定義

目的: このスプリントで検証したいユーザー価値やビジネス仮説、実現したい主要な機能（ストーリー）を明確にする。

活動: 詳細な仕様書ではなく、「どのような対話を生みたいか」「どの仮説を検証するためのモックアップか」に焦点を当てたゴールを設定。主要なインタラクションのスケッチと処理プロセスを定義する。

フェーズ2: AIによる超速モックアップ生成

目的: 設定したゴールに基づき、対話の「たたき台」となるインタラクティブなデジタル・モックアップをその場で作成する。

活動: 開発チームはAIコード生成ツール（Copilot, Gemini Code Assist等）を活用してバイブコーディング。

フェーズ1のゴールやスケッチを基に、自然言語等でAIに指示を与え、基本的な画面遷移（出力情報と入力データ）、ダミーデータ表示などのコードを高速生成させる。（AI支援バイブコーディング）
この段階では品質、テスト、保守性は意図的に度外視。あくまで「対話を深めるために動くモノ」を最速で作ることに集中。コードは原則使い捨てと認識する。

フェーズ3: AI支援・リアルタイム対話セッション

目的: 生成されたモックアップを触媒として、プロダクトオーナー（PO）や他のステークホルダー（ユーザー代表、デザイナー等）と開発チームが密接に対話し、認識合わせとアイデアの深化を行う。

活動: 短時間でのワークショップ形式で実施。

開発チームがモックアップをデモし、ステークホルダーがフィードバック（「ここを変えたい」「こうなったら？」）を述べる。
開発チーム（またはAIプロンプター役）がその場でフィードバックをAIへの指示に変換し、モックアップのコードをリアルタイムで修正・反映させて、再びデモ。確定するまで繰り返す。
変更が即座に視覚化されるため、具体的なイメージを共有しながら、"What-if"（もしこうだったら）シナリオを試行錯誤できる。議論はワークフロー（プロセス）、利用するアルゴリズム、価値検証に集中。

フェーズ4: 合意形成とプロダクトバックログのリファインメント

目的: 対話セッションを通じて洗練されたワークフロー（プロセス）を確定し、このスプリントで開発すべき内容について合意を形成する。

活動: 対話を通じて明確になった仕様、変更点が実質的な要求仕様となる。(場合によっては、プロダクトバックログをこの修正案に沿ってリファインメントする。)

スプリントプランニング（パート２）

フェーズ5: 品質重視の開発の為のダンドリ

目的: 合意されたプロダクトバックログ（要求仕様）に基づき、品質、テスト、保守性を確保した本番コードを開発するために小さな作業ステップ（手順）を分解してタスク（スプリントバックログ）を定義する。

活動: スプリントプランニング（パート２）の実行。

フェーズ4で合意・記録された内容に基づき、AIの支援を得て均一で小さな粒度のタスクを定義する。
タスク定義と同時にタスクのDoD（完了の基準）もAIで自動生成する。
例外（要注意）: プロダクトバックログが極めて単純で、構造的な問題が少ないと判断され、かつチーム全員の合意がある場合に限り、前述のフェーズ１～４までの活動を排除して、いきなりタスク定義を実施する可能性もゼロではないが、慎重な判断が必要。

フェーズ１〜４を複数回繰り返して、ここまでのステップを半日（３時間）目途で実施する。

開発

この「開発」フェーズは、スプリントプランニング（パート1およびパート2）で合意形成されたプロダクトバックログ（要求仕様）に基づき、実際に動作する本番用のソフトウェアを構築する段階です。

スプリントプランニング（パート1）のフェーズ2で作成された「デジタル・モックアップ」は、あくまでユーザーやステークホルダーとの対話と合意形成を高速に進めるための「たたき台」であり、品質、テスト、保守性は意図的に度外視され、原則として使い捨てとされます。

したがって、この「開発」フェーズでは、以下の点に重点を置いて作業が進められます。

クリーンな再設計と実装: モックアップのコードを流用するのではなく、合意された要求仕様に基づき、改めてクリーンな設計を行います。テスト駆動開発（TDD）やクリーンアーキテクチャといった、品質と保守性を高めるための適切な技術やプラクティスを採用して実装を進めます。
品質、テスト、保守性の確保: スプリントプランニング（パート2）で定義されたタスクとDoD（完了の基準）に従い、ソフトウェアの品質を確保し、テストを十分に行い、将来的な変更や機能追加に対応しやすい、保守性の高いコードを作成します。
AIとのペアプログラミング活用: 開発者はAIツール（コード生成AIなど）を単なるコード生成器として使うだけでなく、ペアプログラミングのパートナーとして活用します。AIと対話しながらコーディングを進めることで、より良い設計や実装方法を検討したり、コードの品質を高めたり、開発プロセス全体の効率化と保守容易性の強化を図ります。
将来的な展望: 将来的には、AIによるコードレビュー機能を活用したり、さらにはAIが自律的にペアプログラミングを行うような開発スタイルへ移行していく可能性も示唆されています。

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