AI駆動型営業への転換を図る
これからの営業にとって、生成AIやAIエージェントは販売商材としてだけではなく、自らの営業活動を強化するための強力なツールとなります。昨日紹介した「提言営業」「技術知識の獲得」「顧客事業への貢献」という3つの観点から、生成AIの戦略的活用は不可欠です。
営業における生成AIの可能性
提言営業を支える情報収集と洞察の強化
提言営業の本質は「お客様以上にビジネスを理解し、課題を顕在化する」ことにあります。この役割を果たすためには膨大な情報収集と分析が必要ですが、ここで生成AIは有効な手段となります。
業界動向の包括的理解:生成AIを用いて、特定業界の最新トレンド、規制動向、市場変化などを迅速に収集・整理することができます。これにより、営業は客先に向かう前に、業界の課題や将来像についての洞察を得ることができます。
競合分析の高度化:顧客企業の競合情報を体系的に分析し、競争環境における課題や機会を特定することができます。これによって「貴社の競合はこのような取り組みを始めています」といった具体的な提言の基盤を作ることができます。
仮説構築の加速:特定の業界や企業に対して複数の未来シナリオを短時間で生成し、「もし〜ならば」という仮説思考を強化できます。これにより、顧客が気づいていない潜在的な課題や機会を発掘する能力が高まります。
ただし、生成AIの出力はあくまで仮説の材料であり、営業はこれを批判的に検証し、自らの専門知識と組み合わせて、考察を深めることが大切です。このような方法で、情報収集の効率化により浮いた時間を、顧客との対話や思索の深化に充てれば、お客様からの信頼は深まり、営業の示す提言に真剣に耳を傾けてくれるようになるはずです。
技術知識の獲得と説明能力の向上
営業の技術知識の獲得において、生成AIは強力な学習支援ツールとなります。
技術学習の個人化:生成AIを活用して、自分の技術理解度に応じた学習プランを作成できます。さらに高度な技術概念や新しい技術やサービスを自分のペースで理解するための対話型学習が可能になります。検索して、難しい説明をヒットさせても、それを読みこなせないこともあります。生成AIに"相談"すれば、自分の理解度に応じた説明方法で説明されますし、分からなければすぐにそれを指摘して、新たな説明を求めることができるので、効率よく効果的に学習できます。
技術の平易な説明力の向上:技術を非技術者である顧客に説明する能力は、営業にとって重要なスキルです。生成AIを使って、同じ技術概念を様々な抽象度や比喩を用いて説明する練習ができます。これにより、顧客の理解度や関心に合わせた効果的な技術テーマについてのコミュニケーションが可能になると共に、自分の理解も深まります。
デモと事例の構築:AIと協働して、特定の技術がビジネスにもたらす価値を示す具体的なデモや事例を短時間で構築できます。例えば、特定業界向けのAI活用シナリオを複数生成し、最も顧客の関心を引きそうなものを選んで詳細化するといった使い方が考えられます。そして、AIにデモ画面や描かせたり、簡単なプロトタイプを造って動かしたりすることで、顧客の要求をより深く探るとともに、どうしたいのかの合意を取り付けることもやりやすくなるはずです。
顧客事業への貢献を最大化するAI活用
顧客の事業や経営に貢献するためには、AI技術自体を顧客価値創出のために活用する視点も必要です。
顧客データの価値発掘:AIを活用して顧客が保有するデータの潜在的価値を発掘し、新たなビジネスモデルや業務改革の可能性を提示できます。例えば、「御社のこのデータとこのデータを組み合わせることで、こんな予測モデルが構築できる可能性があります」といった提案が可能になります。
プロセス最適化の提案:生成AIを用いて顧客の業務プロセスを分析し、自動化や効率化の機会を特定できます。これにより、単なるシステム導入ではなく、業務そのものの変革に踏み込んだ提案がやりやすくなります。
共創プロジェクトにおけるAIの活用:顧客との共創プロジェクトにおいて、AIを活用してアイデア創出やプロトタイピングを加速することができます。これにより、より短期間で価値検証が可能になり、「走りながら考える」アジャイルな共創が実現します。
AI活用の実践ステップ
これら実践するために、SIerと営業が取り組むべき具体的なステップを以下に整理します。
組織レベルでの取り組み
AI活用の戦略と方針の明確化:単なるAI研修ではなく、営業活動におけるAI活用の具体的な目標と方針を明確にします。例えば「2025年までに全営業担当者が顧客業界分析にAIを活用できるようにする」といった明確な目標設定が重要です。
AI活用のための知識基盤の整備:自社の営業活動に関連する情報(業界知識、技術情報、成功事例など)を体系化し、AIが活用しやすい形で整備します。これにより、より精度の高い業界特化型のAI活用が可能になります。そのためには、自分たち固有のノウハウを利用できるRAG(検索拡張生成)などの仕組みを構築しなければなりません。
営業プロセスの再設計:従来の営業プロセスを見直し、どの段階でどのようにAIを活用するかを明確にします。例えば、事前準備段階でのAI活用、顧客との対話中のAI活用、フォローアップ段階でのAI活用など、フェーズごとの最適なAI活用方法を定義します。
評価制度の見直し:AI活用を促進するための評価制度を設計します。単なる売上だけでなく、「顧客課題の発掘件数」「提案の革新性」「技術理解度」など、提言営業に必要な能力を評価する指標を導入します。
実践コミュニティの形成:社内でAI活用の実践知を共有するコミュニティを形成し、成功事例や学びを組織全体に広げる仕組みを作ります。定期的な事例共有会や、AIを活用した優れた提案に対する表彰制度なども効果的です。
個人レベルでの取り組み
AIリテラシーの習得:生成AIの基本的な仕組み、できること・できないこと、プロンプト設計の基本など、AIを効果的に活用するための基礎知識を習得します。特に重要なのは、「何を知りたいのか」「何を解決したいのか」といった問いを余すところなく適切に言語化する能力とAIの出力を批判的に評価し、質問や疑問を返し対話する能力です。
業界知識とAIの融合:担当業界について体系的に学び、その知識をAIプロンプトに反映させる訓練を行います。例えば「小売業における在庫最適化の課題と最新技術のトレンドを分析してください」といった具体的な業界文脈を含むプロンプトの設計能力が重要です。
プロンプトライブラリの構築:日々の業務で効果的だったプロンプトを記録し、自分専用のプロンプトライブラリを構築します。例えば「競合分析用プロンプト」「技術説明用プロンプト」「業務改革提案用プロンプト」など、目的別にテンプレート化しておくと効率的です。
AI活用の習熟サイクルを回す:まずは使ってみることです。そして、結果から考えて改善するというサイクルを確立します。「今週はこの業務にAIを使ってみよう」といった具体的な目標を設定する習慣も重要です。
人間にしかできない価値の強化:AIの活用により浮いた時間を、人間にしかできない価値創出活動に振り向けます。例えば、顧客との信頼関係構築、創造的な問題解決、感情や文化的背景を考慮した提案などに注力します。
このような能力を手に入れるには、頭で考えるのではなく、とにかく使い倒すことです。使いながら身体で感じ、自分にとって使い易いノウハウやスキルを、実践を通して磨いていくのが最善です。
AIをうまく使えば、営業はより深い洞察と幅広い視点を持ってお客様への提言を魅力的なものにすることができます。ただ、AIはあくまでも思考の拡張ツールであり、最終的な判断や顧客との人間関係構築は人間である営業の責任であるということは、言うまでもありません。
「提言営業」への転換、技術知識の獲得、顧客事業への貢献といった3つの要素が、これからの営業の成功を左右する鍵となります。変化が激しく不確実性が高まる時代だからこそ、営業にはこれまで以上にお客様をなるほどうなされる力が必要です。それが「営業DX」の本質です。
テクノロジーの発展が加速する中、その最前線に立つ営業は、顧客と共に新たな価値を創造する「共創パートナー」として、その存在をお客様に対して際立たせなくてはなりません。もはやこのような役割を「足繁くお客様に通い詰めて稼ぐ」「接待で親しくなって寝技で稼ぐ」といった古き良き時代の「営業」のイメージにかぶせるべきではありません。旧来の「営業」の既成概念を越えて、「AI駆動型提言営業」へと自らを進化させるべきです。そうなると、「営業」という名称を変えることも真剣に変えるべきかも知れません。。
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今年も開催!新入社員のための1日研修・1万円
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AI前提の社会となり、DXは再定義を余儀なくされています。アジャイル開発やクラウドネイティブなどのモダンITはもはや前提です。しかし、AIが何かも知らず、DXとデジタル化を区別できず、なぜモダンITなのかがわからないままに、現場に放り出されてしまえば、お客様からの信頼は得られず、自信を無くしてしまいます。
営業のスタイルも、求められるスキルも変わります。AIを武器にできれば、経験が浅くてもお客様に刺さる提案もできるようになります。
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【第1回】 2025年6月10日(火)
【第2回】 2025年7月10日(木)
【第3回】 2025年8月20日(水)
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