オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

もうすぐ消滅するという人間によるコード生成について:さらなる考察#04

»

AIは膨大なデータから規則や特徴を抽出し、「究極の一般」を導き出すことで、パターン化や一般化が可能な知的作業の生産性を高めます。一方、人間は観察や対話、共感を通じて、その場の状況における独自性や希少性、「究極の特別」を見出します。つまり、AIは知的作業の量的限界を解消し、人間は独創性や希少性を見出すことで、知性を拡張しそれぞれ単独では実現し得ない知性の発展へとつなげることができます。

スクリーンショット 2025-01-10 5.31.35.png

そんなAIに自律性を持たせようというのがAIエージェントです。AIエージェントとは、「何をしたいのか=目標」を与えれば、自ら計画を立て、結果を評価し、うまく行かなければそれを検証し、改善するなどして、目標達成を自律的になし遂げる能力を持つソフトウェアです。つまり、人間の「エージェント(Agent)=代理人」として、仕事をこなしてくれます。「非常に賢い自分専属の秘書」あるいは「安心して仕事を任せることができる優秀な部下」といったところでしょうか。

現段階では、全ての知的作業をこなしてくれるAIエージェントは存在しません。しかし、特定の業務領域に特化したAIエージェントは登場し始めています。例えば、システム開発の広範なタスクをこなしてくれるDevinBoltは、そのさきがけとも言えるサービスです。

このようなサービスの登場によって、人間の役割は、「責任をとること」と「考えること」へとその重心が移ってくるように思われます。

「責任をとること」とは、いまの社会に於いて、人間にしか果たせない役割です。AIが発展を遂げ、多くの知的作業を人よりも何倍も早く、正確にこなしてくれたとしても、その結果に責任をとれるのは、人間しかいません。「AIがこういう答えを出したのだから、仕方がありません。私はそれに従っただけです。」と責任を回避しようとしても、いまの社会が許容してくれることはないでしょう。

また、責任には「判断」が伴います。判断には、善悪、社会規範、思想や文化といった、様々な価値観に影響を受けます。AIは、そんな多様な価値観があることは教えてくれても、その中で、どの価値観に基づき選択し判断することが正しいのかは、教えてはくれません。その選択と判断は、人間に委ねられています。そして、その結果に対して、人間は、責任をとらなくてはならないのです。

人間が「責任」をとるべく判断するには、「考えること」が必要です。考えることは、人間が身体を通じて積み上げた習慣、感性、思想、文化、人間関係などが複雑に絡み合い、その判断は、状況に応じて相対的です。私たちは、これを「感覚的」であるといいます。時にして、「感覚的」な判断は、「論理的」な合理性を欠くことがあります。

私たちの日常にあっては、時にして「感覚的」な不合理性は、「論理的」な合理性を超越する存在です。論理的に正しくても、それを誰もが受け入れてくれるとは限りません。「究極の一般」を追求するAIの限界は、「状況に応じて相対的」であることを求める「人間社会の掟(おきて)」を乗り越えられない点にあると言えます。

一方、人間は、その時々の状況の中で、相対的に正しい選択を迫れ、判断しなくてはなりません。つまり、人間は、「感覚的」に状況に合いふさわしい「究極の特別」を見出すことを求められます。

人間は、自らの身体を駆使して観察し、共感し、対話し、実践して、体感し、そこから得た「感覚的」知識をも加味して、考えなくてはなりません。身体を持たないAIにこの役割を担うことはできません。そして、人間は、自分が考え下した判断とその結果に対して、責任を持つことが求められます。

よりよい判断を下すには、「論理的」知識を積み上げることが大切です。しかし、それだけでは不十分です。人間関係や対話を通じて得られる人間理解、美術や文化などに親しむことにより得られる美意識、行動を起こした結果としての成功や失敗より得られる体験的ノウハウといった広範な知的体験が、現実世界におけるよりよい判断を導く上では欠かせません。

ただ、このような知的体験に限界はなく、人間は常に不完全であり続けます。だからこそ、徹底して考えて、その時々の状況に応じた特別を見出し、判断を下さなければなりません。しかし、不完全な人間の行為ですから、その判断もまた不完全です。だから自分が選択し判断したことに責任を負う必要があるのです。そして、人間はその結果から学び、考えて、選択や判断の能力を磨いていくのです。

AIはそんな不完全な人間社会の知識を学習して、規則や法則、特徴を見つけだし、共通性や汎用性の高い答えを導くことを目指します。当然ながら、そこには絶対の正解はありません。AIの導く答えは、あくまで確率的な確かさでしかないのです。しかし、多くの知的作業においては、特にパターン化、一般化できる知的作業(知的力仕事)においては、個別であり特別は例外として排除され、確率的確かさが、高い生産性をもたらします。この点に於いて、AIは極めて強力です。

しかし、全ての状況がパターン化、一般化できるわけではありません。むしろ現実は、そうでないことに満ちているし、そこにこそ、新たな発展のきっかけがあります。

最適な判断は、時に既存の一般常識を逸脱するところにあります。それが、個別性や希少性の高いものであれば、そこには大きな価値が生まれます。これこそが、AIにはできない人間ならではの独創性なのです。

AIは、「究極の一般」をめざし、これからも知的生産性を高め続けるでしょう。その結果として、パターン化、一般化できる「知的""仕事」から人間は解放されます。また、「知的"思索"仕事」や「知的"管理"仕事」に必要な情報の整理や評価、管理や運用のための負担を軽減してくれます。人間は、そうして生みだされた時間や機会を使って、「考えることに」これまで以上に邁進できるようになるはずです。そして、考えた結果として、相対的な最適を見つけて判断し、その結果に「責任」を負い、社会を変えていくのです。

「考えて判断し、結果に責任を負う」というのは、いまも昔も変わらぬ人間社会の原理です。これは、AIが発達した未来でも変わることはありません。AIは、その前段として、人間にとって大きな負担となっていた知的作業を軽減し、人間は「考えて判断し、結果に責任を負う」ことに徹底して役割を移すことができるようになったとも言えます。

AIの機能や性能の向上で、人間は、人間にしかできないことに意識や時間を集中できるようになり、社会の発展にこれまでにも増して貢献して、人間や社会の進歩が加速する

私たちはいま、そんな未来をリアルに描けるようになったのだと思います。

実践で使えるITの常識力を身につけるために!
次期・ITソリューション塾・第48期(2025年2月12日 開講)

次期・ITソリューション塾・第48期(2025年2月12日[水]開講)の募集を始めました。

IT_logo.png

次のような皆さんには、きっとお役に立つはずです。

  • SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
  • ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
  • デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
  • IT業界以外から、SI事業者/ITベンダー企業に転職された皆さん
  • デジタル人材/DX人材の育成に関わられる皆さん

ITに関わる仕事をしている人たちは、いま起こりつつある変化の背景にあるテクノロジーを正しく理解し、自分たちのビジネスに、あるいは、お客様への提案に、活かす方法を見つけなくてはなりません。

ITソリューション塾は、そんなITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えするとともに、ビジネスとの関係やこれからの戦略を解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。

詳しくはこちらをご覧下さい。

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO(やまと)会員の皆さんは、参加費が無料となります。申し込みに際しましては、その旨、通信欄にご記入ください。

  • 期間:2025年2月12日(水)〜最終回4月23日(水) 全10回+特別補講
  • 時間:毎週(水曜日*原則*) 18:30〜20:30 の2時間
  • 方法:オンライン(Zoom)
  • 費用:90,000円(税込み 99,000円)
  • 内容:
    •  デジタルがもたらす社会の変化とDXの本質
    •  IT利用のあり方を変えるクラウド・コンピューティング
    •  これからのビジネス基盤となるIoTと5G
    •  人間との新たな役割分担を模索するAI
    •  おさえておきたい注目のテクノロジー
    •  変化に俊敏に対処するための開発と運用
    •  アジャイルの実践とアジャイルワーク
    •  クラウド/DevOps戦略の実践
    •  経営のためのセキュリティの基礎と本質
    •  総括・これからのITビジネス戦略
    •  特別補講 :選考中

6月22日・販売開始!【図解】これ1枚でわかる最新ITトレンド・改訂第5版

生成AIを使えば、業務の効率爆上がり?
このソフトウェアを導入すれば、DXができる?
・・・そんな都合のいい「魔法の杖」はありません。

=> Amazon はこちらから

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

IMG_7835.jpeg

八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。

Comment(0)