もうすぐ消滅するという人間によるコード生成について:さらなる考察#01
先日投稿した「もうすぐ消滅するという人間によるコード生成について」の記事の中で、AIを使ったシステム開発は、いまは黎明期だが、近い将来、「AIエージェントによる(システム開発)プロセスの再定義」の時代がやってくると、私の予測を書かせて頂きました
「AIエージェント」とは、「与えられた目標を達成するために必要なタスクを自律的に実行するソフトウェア」のことです。例えば、次のような目標をAIエージェントに与えたとしましょう。
「〇〇サービスの利用者に対する11月末の請求に対して、12月末時点で未入金の顧客一覧を作成し、その顧客に対して、定型書式A112を使い、督促状を作成し、それを印刷せよ」
AIエージェントは、この目標を達成するために、次のような作業(タスク)を人間に頼ることなく勝手にやってくれます。
- 指示された目標を達成するための一連の作業を必要なタスクに分解
- タスク実行の計画を策定
- タスクごとの結果を評価
- 目標が達成できたかを評価
- 評価結果から判断し、達成できるまでタスクを繰り返し実行する
ソフトウェア・エンジニアが、プログラムを作成するために必要となる一連のタスクを、AIエージェントが人間に変わって自律的に行ってくれるというわけです。
いまはまだできることに制約はありますが、機能や性能は、短期間のうちに向上していくものと考えられます。そうなれば、このようなAIエージェントを複数組み合わせて開発チームを作るという考え方が出てくるでしょう。
彼らは、システム開発全般をこなせる優秀かつ自律したソフトウェア・エンジニアです。彼らは、2つのAIエージェントでペアプロを実行し、コード生成やリファクタリングを実行し、完成度の高いコードを生成します。そして、プルリクエストして、それを別のAIエージェントがレビュー・マージして、デプロイします。やがては、開発プロジェクト全体のスクラム・マスターも、AIエージェントが担う時代が来るでしょう。これが、「AIエージェントによるプロセスの再定義」の時代ということになります。
人間の役割は、「プロダクト・オーナー」となります。何をしたいのか、何を実現したいのかを決めて、成果を評価し、スクラム・マスター役のAIエージェントに指示やフィードバックを与えることに限定されるようになります。
言うまでもなく、これは「アジャイル開発」のプロセスです。変わり続けるビジネス現場の最前線からの変更要求、改善要求に即応できる体制を、このようなやり方で、低コストかつ短時間で実現できるわけです。
ウォーターフォール開発で、AIエージェントを使う場合、コード生成の効率化には貢献できても、システム開発工程全般に適応させることは現実的ではないでしょう。なぜなら、ウォーターフォール開発には、「現場との継続的な対話を通じて、現場が必要とするものを直ちに実現し、変更も積極的に受け入れながら、一緒になってビジネスの成果に貢献する」という思想がないからです。不確実性が高く、変化の速い時代にあっては、「アジャイル開発」が前提になることは言うまでもありません。
また、このような仕組みは、クラウドとの一体化を前提に整備が進むはずです。なぜなら、前提となるAIモデルは、その規模や汎用性を考えれば、クラウドで動かす以外の選択肢がないからです。
AIエージェントを使った開発は「エンジニアを採用しなければならない」あるいは、「足りないエンジニアは外注に依存しなければならない」という問題を解消します。また、クラウドを使うわけですから、自前でシステムを所有し、運用や管理をする必要がなく、そのための人材も不要です。つまり、内製化の足かせを解き放つわけです。これは、内製化を促進させる原動力となるはずです。
このように、AIエージェント前提のシステム開発では、純粋な開発者は不要となりますが、一方で、AIエージェントを賢くするエンジニアや、社内の標準やルールを優先して使わせるための仕組みを作るエンジニアが必要となります。この点については、明日以降の記事で深掘りしてみようと思います。
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