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営業失格・井の中の蛙大海を知らずでいいのだろうか

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ある大手IT企業の営業職の皆さんに「最新のITトレンド」についての講義をした時のことです。アジャイル開発やDevOpsの話しをする中で、「コンテナ」についての話をしました。30名ほどの受講者でしたが、この言葉を知っているかどうかを尋ねたところ、手を挙げてくれた人は、わずか数名でした。

また、AIについて話す中でArm(アーム)について知っているかと尋ねると、これも知っている人は数名でした。少しハイレベルな質問(?)ですが、NVIDIAは何の会社かを訪ねたところ、こちらは、「なんとなく」というレベルも含めて、やはり知っている人は、数名でした。機械学習とディープラーニングの関係が分からない人も大半でした。

講義の中では、このようなトレンドに関わる話題以外にも、基本的な話しもします。例えば、クラウドについて理解するには、インフラ、プラットフォーム、アプリケーションの違いを知らなくてはなりません。また、システム開発を理解するには、UIUXについても知っている必要があるでしょう。しかし、言葉は聞いたことがあるけれど、説明できないという人がほとんどでした。

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こんな質問もしてみました。

「デジタル化とDXの違いを説明できますか?」

何人かに尋ねましたが、「デジタル技術を使って業務を改善すること」という程度の回答しかありませんでした。そんな彼らの会社のホームページには、「お客様のDXを支援します」と掲げられています。

これを個人の自助努力が足りないからだとは言い切れないでしょう。それは、「この手のITの常識を知らない人があまりにも多すぎる」と感じるからです。ひとり、ふたりが知らないのなら、その人たちの自助努力の不足を理由に挙げることもできるでしょう。しかし、ほとんどが知らないというのは、こういう常識を知らなくても仕事に困らない、あるいは、このような常識を求めるお客様を相手にしていないからなのではないでしょうか。

こちらの大手IT企業に入社人たちは、全員、それなりの大学を出た人たちです。決して地頭が悪いわけではないはずです。仕事にも真面目に取り組んでいます。そう考えると、やはり「必要ないから、知ろうとしない」ということなのでしょうか。

今回の研修は、営業職の人たちが対象です。彼らのいまの仕事は、お客様のご要望を聞いて、それに応える提案を作り、お客様の予算の範囲で、リソースを手配することなのだと思います。それで営業という仕事が全うできるわけで、「ITの常識」は必要ありません。だから、あえて学ぼうという動機付けもなかったのかも知れません。

自分では、いまやっている仕事が世界の全てであるとは、決して思っていないでしょう。しかし、このような質問に答えられない現実を見れば、「井の中の蛙、大海を知らず」そのもののように見えてしまいます。

いま、IT業界は、AIとクラウドの大波に翻弄され、IT界隈の常識は激変しています。IT企業に対するお客様の期待も変わりつつあります。しかし、「大企業」という高い防波堤が、この大波を防ぎ、その防波堤の向こうに何があるかが見えません。いや、防波堤そのものの存在に気がついていないのかも知れません。それでも仕事が絶えないというのは、なんともうらやましい話しです。そして、そんな日々の仕事の饗宴に忙殺され、気がつけば浦島太郎になっているのかもしれません。

私は、営業は、「先生」であるべきだと思っています。分からないことがあって相談すれば、何でも教えてくれます。そんな先生になれば、こちらからお客様に相談し、お願いしなくても、お客様から相談され、お願いされるようになるでしょう。そして、その先生の話なら、真剣に聞いてくれ、それに従おうとしてくれます。そうなれば、売り込みは必要ありません。

お客様はいま、大きな変化の荒波に向きあい、DXへの対応も求められています。こんな時こそ先生の出番です。しかし、上述のような状況では、その役割を果たすことができません。先生失格、すなわち、営業失格です。

会社の堤防の内側、つまりいまやっている仕事の常識や評価基準で自分を見るのではなく、堤防の向こうから、広い世の中の常識の視点から、自分のいまのいる場所を見てはどうでしょう。冒頭の質問にまともに答えられないのなら、自分の人生やキャリアのために、行うべきだと思います。

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