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あなたの専門分野は何ですか?はい、「管理職」です!

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IT企業に勤める50代の部長さんから、転職のご相談を請けたことがあります。その方に次のような質問をしました。

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「ご自身の得意分野、あるいは、専門分野は、何ですか」

すると彼は次のように答えました。

「管理職です」

いやいや、そんなことではなくて、業界の知見とか、得意とする技術分野とか、どこに行っても通用する専門スキルとか、そんな話を聞きたかったわけですが、そういうものはないと言うことでした。

「あの有名な〇〇〇プロジェクトを成功させたのは私です。」

「〇〇〇プロジェクト」が、有名なのは、この方の中での評価でしかありません。それをマネージャーとしてやり抜いたというのは、自分の人生の金字塔なのかも知れませんが、世間に通用する評価にはなりません。

「困難が予想された〇〇〇プロジェクトを成功させるために、これまでとは違うプロジェクト管理の独自メソッドを考え、さらに、その後の実践で検証して、完成度を高めることができました。」

そんな話なら、大いに惹かれますが、「やりました」という体験を自分のバリューだと考えているとすれば、世間を知らなすぎます。

体験」は感覚であり思い出です。そんな体験から教訓を得て、普遍的な規則や法則、特徴を見つけ一般化、普遍化したものが「経験」です。その経験を使って、ものごとの進め方を整理して、他の人が確実に成果をあげられるように形式化したもの、つまり「手順やマニュアル」として、誰もが使えるカタチにしたのが「メソッド」です。

メソッドまで昇華させることは容易なことではありませんが、ここまでくれば、これで仕事ができるでしょう。せめて経験にまで高めなければ、世間に通用するバリューにはなりません。

ここでの話しに当てはめれば、「〇〇〇プロジェクトを成功させた」は、「体験」です。同じ状況に遭遇することは二度とありませんから、その体験を「経験」へと普遍化しなければ、世間に評価されるバリューにはなりません。

「世間の変化が速くて、複雑化しているから、いまの常識に追いつけない」という人がいます。「追いつけない」のではなく、「追いつこうとしない」のではありませんか。これは、「理由の付け替え」です。世間の常識から後れをとっている理由を、自分ではなく世間に付け替えているだけのことです。

「世間の変化が速くて、複雑化している」状況は、誰も同じです。だからこそ、少しでも何とかしようと、必死になります。それでも時代の変化に太刀打ちはできないわけで、だからこそ何とかしようとくらいつきます。そんなイタチごっこを私たちは続けています。それができなくなったときは、ビジネスマンとしての「あがり」なのかもしれません。

それをいつにするのかは、自分で決めるしかありません。しかし、「あがっている」のに、そんなことはないと受け入れられない人もいます。自分の得意分野/専門分野を「管理職です」と答えてしまうのも、このような背景があるのかも知れません。

ただ、「管理職」としての経験を活かし、「心理的安全性の実践的スキルを身につけました」や「メンタルに悩みを抱える人たちに対処するノウハウを磨きました」、「営業目標の達成のための営業プロセス管理モデルを確立しました」ということなら、それは素晴らしいバリューです。

ビジネスマンだけが人生の全てはありません。いろいろな人生の選択肢があります。それを見つけるためにも、自分の「いま」を、勇気を持って、そして客観的に洗い出し、自分が何者かを棚卸しするのは、年齢を問わず必要なことだと思います。特に、次のステージを考えなければならない50代前後の人たちは、そろそろ真剣に、向きあうべきかもしれません。

自分の人生は、自分にしかデザインできません。そのためにも、まずは自分を客観的に、そして正直に受け止めることが最初だと思います。

いまの役職は、勤めていた会社の評価であり、社内的には通用しません。「こんなプロジェクトをこなしました」も同様であり、その人に閉じた過去の栄光です。このような会社目線、自分目線ではなく、社会の基準、つまり「どこに行っても通用する汎用的な知識やスキルを持っているのか」という基準で、自分を評価してみることです。

そのためには、次のような行動が、役に立つと思います。

  • 【つながり】会社の同僚やお客様以外に沢山の人のつながりを持つこと
  • 【独学】会社用意した研修だけではなく、本を読み、自腹で研修に参加すること
  • 【アウトプット】自分の考えや学んだことをプログや勉強会の場で発信し、世間に晒して、他人の評価を得ること

会社というひとつの価値観や常識を共有する世界から、多様な価値観や常識、ロールモデルに接し、自分の視野を広げることです。そして、「自分のいま」を世間という高い視野から、捉え直してみることです。

いろいろと試してみることも大切です。生成AIが話題になっているのなら、実際に使ってみることです。DXが大騒ぎなら、DX本を何冊も読むことです。あの人の話がためになると聞いたならYouTubeでその人の話を聞いたり、講演に参加したりするのもいいでしょう。

とにかく、頭の中だけで自分を評価するのではなく、自らの行動と体験を通じ、世間の常識を感じることが、自分を客観的に評価する前提になります。

「これまで会社のために頑張ってきたのだから、会社もそれに報いてくれて当然だ。」

もう、そんな時代ではありません。「会社人」として頑張ってきた「報い」は、その会社でしか通用しない課長や部長、役員という肩書きでしかありません。次のステージでの選択肢は、限られたものになるでしょう。一方で、会社というフィールドで「社会人」として、世間にも通用する価値を磨いてきたのなら、その選択肢は、自分の意志でいろいろと作り、選ぶことができます。

別にビジネスマンだけが人生の全てはありません。いろいろな選択肢があります。それを見つけるためにも、まずは自分を棚卸しする機会を持つことは、必要だと思います。

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