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「他人の知識」と「自分の知識」について。あるいは、知識という「肥やし」の大切さ

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「大変勉強になりました。でも、この知識をどのように使えばいいのか分かりません。」

ITソリューション塾を受講された方から、このようなコメントを頂いたことがあります。

スタンフォード大学の心理学者であるキャロル・S・ドゥエックは、人間には、「固定的知能観」か「拡張的知能観」かいずれかの心の有り様があり、それによって、その人の能力は決まってしまうというと主張しています。

固定的知能観(fixed-mindset)の持ち主とは、自分の能力は固定的で、もう変わらないと信じている人です。彼等は、自分の能力はこの程度だから、努力しても無駄だとみなします。また、自分が他人からどう評価されるかが気になり、新しいことを学ぶことから逃げてしまいます。彼等が学ぶのは、それが自分にとって利益になる場合です。つまり、これを知らなければ仕事がこなせない、収入が減るなどの場合に限られます。

一方、拡張的知能観 (Growth-mindset)の持ち主とは、自分の能力は拡張可能であると信じている人です。彼等は、人間の能力は努力次第で伸ばすことができると信じ、たとえ難しい課題であっても、学ぶことに挑戦します。彼等は、好奇心旺盛に自らテーマを作り、学ぶこと自体を楽しむことができます。

このような、「知能観(Mindset)」が、学習についての意欲を左右し、能力の獲得や育成に大きな影響を与えるという考え方です。

冒頭のようなコメントの背景にあるのは、ここでいう「固定的知能観」なのかもしれません。

そもそも、獲得した知識が、すぐに使えることなど先ずありません。むしろ、「肥やし(肥料)」みたいなものです。しかし、多くの作物を育て、生きるために必要な作物を収穫するには、肥やしは欠かすことができません。

仕事での成果を期待されたとき、そのために必要な知識やスキルを求められたとき、それを柔軟に受け入れ、迅速に自分の能力として活かすには、肥やしとして蓄積してきた多様な知識やものの見方が大いに役立ちます。知識の多くは、そのために使われるのです。

拡張的知能観の持ち主は、そのことが分かっているからこそ、学ぶことを楽しむことができます。すぐに役に立つかどうかは、気にしません。それは、必要な時に役に立つことを知っているからです。あるいは、自分を活かすための選択肢を数多く持ち、人生を豊かにする上で、大切であることを知っているからです。

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昨夜から、ITソリューション塾・第47期がスタートしました。ITとビジネスに関わる最新の知識を学ぶ機会として、2008年から3回×16年間続いています。その多くは、直ちに実務に供するものではありません。しかし、これからの会社の未来やキャリアを考える上での材料になるはずです。

ITソリューション塾に限らず、研修や書籍というのは、他人の価値観やものごとの捉え方に基づいて整理されています。わかりやすく言えば、「他人の知識」であって、「自分の知識」ではありません。「他人の知識」をどれほど積み上げても、物知りになってもそれは、「自分の知識」ではないのです。何かを問われた時に、「あの研修ではどういう風に説明していただろう」、「あの本ではどのように書かれていただろう」といった、他力本願に留まっている限り、「自分の知識」ではありません。つまり、使える知識ではないのです。

「他人の知識」というのは、「自分の知識」を育てるためのガイドであり、コーチです。ガイドやコーチの指示に従い、自分で考え、自分で体験し、自分の言葉に置き換えて語れるようになって、はじめて「自分の知識」となります。

大谷翔平のコーチがどれほど優秀であっても、彼自身が努力し、能力を磨かなければ、あれだけの偉大な成績は作れなかったはずです。一方で、コーチのアドバイスは、気付きをもたらし、迷わずに進んでゆく安心感を彼に与えることができたでしょう。

そんな機会を提供しようと、ITソリューション塾では、事前課題を差し上げて、自分の言葉で言葉の意味や役割を文章で書いてもらうようにしています。そして、「他人の知識」である講義を聞いて、改めて事前課題を自分の言葉で書き改めてもらうことで、「自分の知識」に作り直してもらう機会を提供しています。

このような積み上げが、ものごとを自分で考え、新たなことにも柔軟で迅速に対応できる能力、すなわち「肥やし」を増やすことなのだと思います。

「どのように使えばいいのか」の答えは、私には分かりません。しかし、新しいこと、未知の課題に向きあったとき、学んだ知識が肥やしとなって、適切な答えを導く助けになります。それが、「学んだ知識」の使い道です。そのためにも、講義の受講や読書を「他人の知識」に留めずに、「自分の知識」に組み立て直すことが必要なのです。

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

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これからは、「ITリテラシーが必要だ!」と言われても、どうやって身につければいいのでしょうか。
「DXに取り組め!」と言われても、これまでだってデジタル化やIT化に取り組んできたのに、何が違うのかわからなければ、取り組みようがありません。
「生成AIで業務の効率化を進めよう!」と言われても、"生成AI"で何ですか、なにができるのかもよく分かりません。
こんな自分の憂いを何とかしなければと、焦っている方も多いはずです。

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