オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

人の話を聞かないロートルの「老害」:なぜそうなるのか、どうすべきなのか

»

最近つくづく思うのは、人の話を聞く大切さだ。「いまさら」と言われるだろうが、ロートルになるとそれができない人も多い。すぐに自分の考えを、あるいは、「正解」を伝えようとする。時には、相手の話を遮って、「それはね、そうじゃないんだよ。こうすればいいんだよ。」となる。時には、威圧的に「そうじゃない。こうしなさい。」と有無を言わさない。

一方で、「話しを聞いている」ふりをして、相手に話をさせて、話の内容などお構いなしに、自分の「正解」を絶対だという態度で、話すこともある。

確かに、自分の「正解」を伝えることは大切だ。ただ、それは、絶対の「正解」としてではなく、自分の「正解」であるという自覚である。確かに自分にとっては、「正解」であっても、それは他人から見れば正解ではないかも知れない。もっと、いい「正解」があるかもしれない。あるいは、いまの時代背景や価値観から見れば、それはもはや「正解」ではないかもしれないという自覚だ。

自分の「正解」というのは、歳を重ねるごとに、過去の栄光やその自慢にすり替わりかねない。つまり、いままぶしく輝く太陽ではなく、何千万光年離れた恒星のような存在だ。もしかしたら太陽より大きく、明るく輝いていたかも知れないが、もはや過去の輝きに過ぎず、いまや夜空の瞬きのひとつに過ぎない。その自覚がなく、まだまだまぶしく輝いていると思いたい、いや、輝いていると信じているのだとすれば、これは、なかなかやっかいであろう。

まずは、こういう自覚こそが、ロートルには必要な態度ではなかろうか。

自分の「正解」や過去の栄光に価値がないというわけではない。ただ、それをいまの価値と、あるいは相手の状況における「価値」と同じではない。だから、ひとつの視点として、あるいは、ものの見方として、自分の「正解」を「叩かれ台」として、差し出すことである。

私は、人の成長は、「体験の密度×時間」であると若い人たちには話をする。「時間」は、誰にとっても同じであるから、ロートルというのは、若い人よりも長く時間を過ごしている。しかし、「体験の密度」に老若の違いはない。だから、成長を加速したければ、「体験の密度」を高めることだと。ただし、成長するには、時間もかかるのだと。

ロートルにとって、「時間」の長さは所与のものだから、意図するしないにかかわらず、いろいろな体験を重ねてはいる。だからこそ、人は歳を重ねるごとに成長できる。仮に、「体験の密度」が低くても、若者と比べて「時間」の長さが圧倒的だから、それなりの「成長」を果たしているわけで、それが、敬意や尊敬の土台となる。

しかし、ある程度の歳を重ねると「体験の密度」の差は、「時間」を逆転することもある。できる若者を見て「若造のくせに生意気なヤツだと」感じるとすれば、それは自分の体験の密度の低さを物語っているのかも知れない。

また、社会が求める価値観が、2000年前後を境にして、「安定性(Stability)」から「俊敏性(Agility)」へと重心、すなわち何を優先するかの基準が変わったことも忘れてはならないということだ。

この「価値観の転換」を象徴する出来事の1つが、2001911日に起こったアメリカ同時多発テロ事件だ。社会の不確実性が高まり、予測困難な時代になったことを私たちは思い知らされた。このあとに広く注目されるようになった言葉に、VUCAがある。

スクリーンショット 2024-10-03 6.13.28.png

VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べたもので、1990年代後半にアメリカ合衆国で軍事用語と使われるようになった。それが、ビジネスの用語に転用され、時代を象徴する言葉として、定着していった。

2000年以前は、がむしゃら働くことで、給与も上がり、生活水準も向上した。多くの人たちは、これを自分の成功と受け止めていた。しかし、もはやそれだけで、成功できる時代ではない。社会の求める価値観が変わったのだが、未だそれを受け入れられない人たちがいる。そういう時代の価値観をいまの時代に持ち込んでも、もはや通用しないのに、それが不変の価値観であるかのように掲げ、押しつけようとする人がいる。「老害」とはこのような価値観の押しつけであるように思う。

いずれにしても、自分の「正解」が絶対ではないという自覚を持つことが、ロートルにとっては、大切なのだろう。その上で、いまの価値観しか持たない人たちに、多様な価値観、あるいは視点を示すことにこそ、ロートルの大切な役目となる。

つまり、ひとつの答えを示すことではなく、多様な答えがありうることを示し、よりよい正解を創り出すことを助けることだ。ロートルというのは、自分の積み上げた「体験の密度×時間」を、このように使うのが望ましい。

だからこそ、ロートルは意識して、人の話をじっくり聞かなくてはならい。その話しに足りない視点は何か、よりよい正解に導くためのどのような別の考えやものの見方があるのかを考えるためにだ。けっして、自分の視点や価値観、正解を押しつけるような「老害」になってはいけないと自分に言い聞かせている。

まもなく締め切り!
次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日 開講)

次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日[水]開講)の募集を始めました。

特別補講の講師が決まりました。

==========

企業文化の変革に挑む富士通の取り組み

〜フジトラの実践を通じて見えてきたITビジネスのあるべき姿と課題〜

特別講師:富士通株式会社 執行役員常務 CIO(兼)CDXO補佐 福田 譲 氏

==========

富士通は、いま「フジトラ(富士通トランスフォーメーション)」に取り組んでいます。フジトラは、ビジネス・モデルや業務プロセスの変革に留まらず、企業文化の変革にも踏み込んだ、会社を作り変えようという取り組みです。道半ばとはいえ、確実に成果が現れつつある一方で、様々な課題にも直面しています。そんなフジトラの実践をリードする福田譲氏に、フジトラの"いま"を"正直に"ご紹介頂きます。

DXの実践に取り組む多くの企業にとって、大変参考になると思います。

次のような皆さんには、きっとお役に立つはずです。

  • SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
  • ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
  • デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
  • IT業界以外から、SI事業者/ITベンダー企業に転職された皆さん
  • デジタル人材/DX人材の育成に関わられる皆さん

ITに関わる仕事をしている人たちは、いま起こりつつある変化の背景にあるテクノロジーを正しく理解し、自分たちのビジネスに、あるいは、お客様への提案に、活かす方法を見つけなくてはなりません。

ITソリューション塾は、そんなITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えするとともに、ビジネスとの関係やこれからの戦略を解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。

詳しくはこちらをご覧下さい。

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO(やまと)会員の皆さんは、参加費が無料となります。申し込みに際しましては、その旨、通信欄にご記入ください。

  • 期間:2024年10月9日(水)〜最終回12月18日(水) 全10回+特別補講
  • 時間:毎週(水曜日*原則*) 18:30〜20:30 の2時間
  • 方法:オンライン(Zoom)
  • 費用:90,000円(税込み 99,000円)
  • 内容:
    •  デジタルがもたらす社会の変化とDXの本質
    •  IT利用のあり方を変えるクラウド・コンピューティング
    •  これからのビジネス基盤となるIoTと5G
    •  人間との新たな役割分担を模索するAI
    •  おさえておきたい注目のテクノロジー
    •  変化に俊敏に対処するための開発と運用
    •  アジャイルの実践とアジャイルワーク
    •  クラウド/DevOps戦略の実践
    •  経営のためのセキュリティの基礎と本質
    •  総括・これからのITビジネス戦略
    •  特別補講 :富士通・常務取締役 福田譲 氏
      • 企業文化の変革に挑む富士通の取り組み〜フジトラの実践を通じて見えてきたITビジネスのあるべき姿と課題〜

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

IMG_4293.jpeg

八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。

6月22日・販売開始!【図解】これ1枚でわかる最新ITトレンド・改訂第5版

生成AIを使えば、業務の効率爆上がり?
このソフトウェアを導入すれば、DXができる?
・・・そんな都合のいい「魔法の杖」はありません。

=> Amazon はこちらから

これからは、「ITリテラシーが必要だ!」と言われても、どうやって身につければいいのでしょうか。
「DXに取り組め!」と言われても、これまでだってデジタル化やIT化に取り組んできたのに、何が違うのかわからなければ、取り組みようがありません。
「生成AIで業務の効率化を進めよう!」と言われても、"生成AI"で何ですか、なにができるのかもよく分かりません。
こんな自分の憂いを何とかしなければと、焦っている方も多いはずです。

Comment(0)