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SIビジネスの変革の先にある5つの事業

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昨日の記事で、「内製化×クラウド×生成AI」が工数需要を呑み込み、SIビジネスの前提が崩壊する」と指摘しました。この変化は、SI事業者にとっては、災害級であり、しかも、加速度を増す昨今の技術発展のスピードを考えれば、「じっくり戦略を練る」という時間感覚では対処できません。「走りながら考える」必要があるでしょう。では、どのように事業構造を転換すべきかですが、次の5事業が考えられます。

  • レガシーIT介護事業
  • 内製化支援事業
  • デジタル・サービス事業
  • 高度専門サービス事業
  • コンサルティング事業

それぞれについて、詳しく見ていくことにしましょう。

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レガシーIT介護事業

概要:既存システムの機能追加、改修、運用と保守

顧客:ユーザー企業の情報システム部門

特徴:当面の工数需要を維持することが目的。既存システムに長年張り付いて関わってきたSI事業者でなければできない属人的スキルを必要とすることから、既存システムを使い続ける限りに於いては、安定的な工数需要が見込まれる。ただし、常に単金減額の圧力に晒されているため利益率は低い。

また、特定のシステムに属人化していることでエンジニア人材の移動が難しく、エンジニアのスキルの高度化や転換が難しい。中長期的には、システム刷新に際して内製化を前提としたクラウド前提のシステムへと移行する可能性が高く、工数需要は減少する。

対策:当該システムを長年担当しているエンジニアや同様のテクノロジーに精通したエンジニアに担当させ新規人材は投入しない。要員不足が懸念されるが生成AIツール等を利用し、コード生成やドキュメンテーションの生産性を高め少人数でも維持できる体制を整える。

補足:既にレガシーITのスキルを持つ人材に担当させ、新入社員等の若手は補充しない。新入社員やモダンITに精通したエンジニアは、他の事業に割り当てる。つまり、レガシーITに関わる要員は増員せず、生産性の向上と効率化によって、エンジニアの稼働率を維持し、顧客の需要に対応する。

内製化支援事業

概要:ユーザー企業の内製化のためのシステム環境の整備やスキル提供

顧客:ユーザー企業の内製チーム(事業部門は以下で利益責任を持つ組織)

特徴:工数は少ないが高い利益率を確保することが目的。「コスト・パフォーマンスの高い工数提供」から「高額でもユーザーに求められる圧倒的な技術力」へと売り物を転換し、高い利益を得る。但し、工数を大きくすることは困難。

具体的には、クラウド・サービス、生成AI開発ツール、コンテナ、マイクロサービス、アジャイル開発、DevOpsSRE等のモダンITによるスキルを持つエンジニアを短期間(3ヶ月から半年程度)投入し、ユーザー企業の内製人材の育成、内製のための環境や体制の整備を支援する。

このような需要は、内製化に意欲を持つユーザー企業の需要が高いので、メソドロジーやツールをパッケージにして効率よく展開できるようにして、特定のユーザー企業に長期に関わらないような運用を考えるべきだろう。

対策:新しい技術やメソドロジーに高い関心と意欲を持つ人材をレガシーITから引き離し、一定期間(最低でも数ヶ月程度)徹底した教育を実施する。その間、モダンIT案件にも部門横断的に関わらせることで実践スキルを身につけさせる。新入社員については、入社時からモダンITのスキル育成を行いレガシーITのスキル育成は行わないことで、中長期的な人材の拡大につなげる。

補足:レガシーITの稼ぎ頭を現場から引き剥がすことで、彼らの稼働率は低下する。稼働率にカウントできない=稼げない人材を雇用し続けることは利益を圧迫することになり、低利益企業にとっては厳しい状況となるだろう。しかし、これは将来に向けた先行投資であり、この点は覚悟しなくてはならない。

ただ、稼働率で業績を評価するのは、「COBOL等の"手続き型言語"を使えば高い精度で工数が算定できた」時代の名残であり、「Java等の"オブジェクト指向型言語"の登場でエンジニアの力量によって工数算定が大きく振れる」時代に、稼働率という評価基準を使い続けることに合理性はない。この辺りもあわせて考え直すべきだろう。

また、モダンITは、そもそも早く安くプロダクトを生み出すための方法論ではなく、変化に対して迅速、柔軟に対応しながらプロダクトの価値を高め続けるために作られた方法論であり、稼働率、あるいは、生産性や効率という評価軸に妥当性がない。従って、旧来のやり方と同じ評価軸で比較することは厳に慎む必要がある。

デジタル・サービス事業

概要:デジタル技術を活かした独自サービスの提供

顧客:ユーザー企業/他ITベンダー

特徴:継続的・安定的な収益を確保することが目的。先行投資が必要であり、短期的な収益拡大は難しいが、利益逓増型で将来に渡り安定した収益源となる可能性がある。

対策:このようなサービスを実現する上で欠かせないのが以下の3点です。

  • 既存事業の片手間ではなく独立した採算事業として継続的な投資と業績評価を行うこと。
  • 専門スキルを持つマーケティング人材を配置し、マーケティング視点でのサービス開発を行うこと。
  • リーンスタートアップ、アジャイル開発、DevOps等のモダンITを駆使して実践すること。

SI事業者で特に欠けているのが「マーケティング」であろう。その理由は「必要なかったから」だ。つまり、既存顧客や元請との良好な関係を維持できていれば継続的に工数需要が確保されていた。そのため稼働率に結びつかないマーケティング活動のようなオーバーヘッドに関心を持たなかった。しかし、新たな市場や顧客を開拓することが必要とされる本事業は、マーケティングなくして成立しないことを意識する必要がある。

補足:新しいサービスは失敗を前提に投資しなくてはならない。そして、高速に「Try and Learn」を繰り返し成功の筋道を探索することが不可避になる。新しい取り組みである以上、計画の妥当性やリスクを徹底して議論しても限界がある。従って、リーンスタートアップの手法を取り入れる必要があるだろう。常識からの逸脱を嫌い、前例ありきでなければ判断を下せない企業文化からは、成功の芽は生まれない。

高度専門サービス事業

概要:高度な専門スキルやノウハウを提供

顧客:ユーザー企業の事業部門

特徴:極めて高い利益を確保することが目的。例えば、データサイエンス、金融工学、量子科学、人工知能などの高度専門スキルとそれを活かす独自のメソドロジーを有する専門チームが、顧客の要望に応じてソリューションを提供することや人材の育成を行う。

対策:これができる人材は限られるし、幅広領域をカバーすることはできないが、他者にはできない独自性の高い何かを有していれば、短期で高額の収益を確保できる。もちろん、これに対応できる人材を短期間で育成することはできない。本事業に必要とされる人材をキャリア採用する、あるいは、M&Aなどによって人材を確保する。

補足:既存事業とのシナジーが発揮される領域、あるいは、特定企業との案件で高度に専門特化した人材を中心に、事業化を考えるべきだろう。新たに取り組もうとするのならば、新しい領域(生成AI)や他社がやっていないニッチ領域で事業を立ち上げることも有効だ。

コンサルティング事業

概要:ユーザー企業の業務またはシステムについての戦略・企画・計画を策定

顧客:ユーザー企業(事業部門または情報システム部門)

特徴:他事業とのシナジーを創出し収益につなげることが目的。この事業はコンサルティング事業として独立させるよりも営業活動の中に組み入れることが現実的だ。営業活動だからと言って無償で提供する必要ない。ユーザー企業のIT戦略立案やシステム企画、あるいは、デジタル・ビジネスのビジネス・プラン策定といった上流での戦略・企画・計画は、言わば「高度に洗練された提案書」でもあるし、ユーザーにとっては、事業計画書になる。そのような成果物を有償にて提供する価値はある。これをきっかけに上記に説明した4事業への動線を作ることを考えるべきだ。

対策:営業とSEの役割を再定義する必要がある。まず営業は有償でコンサルできるスキルを身につけさせる必要がある。また、SEもコンサルとしてスキル育成してはどうだろう。エンジニアとして、プログラミングやシステム構築・運用に関わる実務スキル、あるいは、システム・アーキテクトなどの高次の専門スキルを持たないのであれば、その前段としてのコンサルに移行させ、その役割を果たさせてはどうか。もちろん、コンサルとエンジニアを往き来しつつ両方のスキルを身につけさせることもいいだろう。

補足:生成AIやクラウドが前提となるシステム開発にあっては、「そこそこできるエンジニア」や「コードを書けないエンジニア」、「システム開発全般の実践に裏打ちされた包括的知識を持たないエンジニア」の仕事がなくなってしまうだろう。つまり、生き残れるのは、「精鋭のエンジニア」に限られてしまう。そうでなければ、ユーザー企業の戦略・企画・計画の策定を支援するスペシャリストとして育成するのが、現実的かつ事業の成果につながる可能性は高い。

このような取り組みを進める上では、雇用制度や雇用体系、業績評価基準など、会社そのものを作り変える必要があります。

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ここに掲げた5事業は私の独断と偏見にすぎません。ですから、これをたたき台として批判的に捉えて頂ければと思います。自分たちならどうするかの「自分の正解」を考えるきっかけとしてください。

ただ、はっきりしていることは、これまでの事業の延長線上、つまり「工数ビジネス」では、生き残れない時代が一気に近づいてきたことです。この現実に背を向け、施策を先送りすることは、座して死を待つ行為です。

わかりやすく表現すれば、「工数で稼ぐ会社」から「高度な専門性で稼ぐ会社」へと会社を作り変える施策をいち早く実践せよということです。SI事業者の変革、すなわち自分たちのDXは、このような取り組みではないでしょうか。

【募集開始】次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日 開講)

次期・ITソリューション塾・第47期(2024年10月9日[水]開講)の募集を始めました。

次のような皆さんには、きっとお役に立つはずです。

  • SI事業者/ITベンダー企業にお勤めの皆さん
  • ユーザー企業でIT活用やデジタル戦略に関わる皆さん
  • デジタルを武器に事業の改革や新規開発に取り組もうとされている皆さん
  • IT業界以外から、SI事業者/ITベンダー企業に転職された皆さん
  • デジタル人材/DX人材の育成に関わられる皆さん

ITソリューション塾について:

いま、「生成AI」と「クラウド」が、ITとの係わり方を大きく変えつつあります。

「生成AI」について言えば、プログラム・コードの生成や仕様の作成、ドキュメンテーションといった領域で著しい生産性の向上が実現しています。昨今は、Devinなどのような「システム開発を専門とするAIエージェント」が、人間のエンジニアに代わって仕事をするようになりました。もはや「プログラマー支援ツール」の域を超えています。

「クラウド」については、そのサービスの範囲の拡大と機能の充実、APIの実装が進んでいます。要件に合わせプログラム・コードを書くことから、クラウド・サービスを目利きして、これらをうまく組み合わせてサービスを実現することへと需要の重心は移りつつあります。

このように「生成AI」や「クラウド」の普及と充実は、ユーザーの外注依存を減らし、内製化の範囲を拡大するでしょう。つまり、「生成AI」や「クラウド」が工数需要を呑み込むという構図が、確実に、そして急速に進むことになります。

ITベンダー/SI事業者の皆さんにとっては、これまでのビジネスの前提が失われてしまい、既存の延長線上で事業を継続することを難しくします。また、ユーザー企業の皆さんにとっては、ITを武器にして事業変革を加速させるチャンスが到来したとも言えます。

ITに関わる仕事をしている人たちは、この変化の背景にあるテクノロジーを正しく理解し、自分たちのビジネスに、あるいは、お客様への提案に、活かす方法を見つけなくてはなりません。

ITソリューション塾は、そんなITの最新トレンドを体系的に分かりやすくお伝えするとともに、ビジネスとの関係やこれからの戦略を解説し、どのように実践につなげればいいのかを考えます。

詳しくはこちらをご覧下さい。

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO(やまと)会員の皆さんは、参加費が無料となります。申し込みに際しましては、その旨、通信欄にご記入ください。

  • 期間:2024年10月9日(水)〜最終回12月18日(水) 全10回+特別補講
  • 時間:毎週(水曜日*原則*) 18:30〜20:30 の2時間
  • 方法:オンライン(Zoom)
  • 費用:90,000円(税込み 99,000円)
  • 内容:
    •  デジタルがもたらす社会の変化とDXの本質
    •  IT利用のあり方を変えるクラウド・コンピューティング
    •  これからのビジネス基盤となるIoTと5G
    •  人間との新たな役割分担を模索するAI
    •  おさえておきたい注目のテクノロジー
    •  変化に俊敏に対処するための開発と運用
    •  アジャイルの実践とアジャイルワーク
    •  クラウド/DevOps戦略の実践
    •  経営のためのセキュリティの基礎と本質
    •  総括・これからのITビジネス戦略
    •  特別補講 *講師選任中*

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

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これからは、「ITリテラシーが必要だ!」と言われても、どうやって身につければいいのでしょうか。
「DXに取り組め!」と言われても、これまでだってデジタル化やIT化に取り組んできたのに、何が違うのかわからなければ、取り組みようがありません。
「生成AIで業務の効率化を進めよう!」と言われても、"生成AI"で何ですか、なにができるのかもよく分かりません。
こんな自分の憂いを何とかしなければと、焦っている方も多いはずです。

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