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【図解】コレ1枚でわかるデータとUXとサービスの関係

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私たちの日常や仕事は、もはやネットありきです。私たちはネットのサービスで、買い物をし、チケットを手配しています。オンラインでの会議や研修の受講、画像・文章の作成やデータの分析などでも同様です。

店舗に出かけることも、窓口に出向く必要もありません。会議室や教室に集まることも、専門家に来てもらう必要もありません。多くのことが、ネットのサービスで済ますことができる時代になりました。魅力的な体験を提供できるサービスの有無が、企業の収益に大きな影響を与える時代になりました。

あらゆるモノがネットにつながる時代でもあります。それは、コンピューターやスマートフォンだけではありません。自動車や家電製品、建物や設備などが、ネットにつながっています。スマートウォッチを腕にはめれば、それを介して、私たちの身体までつながってしまいます。

例えば、自動車を運転するとしましょう。自動車メーカーは、その自動車に不具合はないか、どのような運転の仕方をしているのか、どんな操作に手間取っているのかなどを、ネットを介してデータとして手に入れることができます。運転手からの報告は必要ありません。

データーから不具合が見つかれば、運転手にそれを知らせ、GPSのデータからその自動車の位置を知り、近くのサービス・ステーションに立ち寄るように案内することができます。やがては、自動運転に切り替えて、サービス・ステーションに向かわせることもできるようになるでしょう。

これらは、自動車に搭載されたソフトウエアとネット経由で提供されるサービスによって実現しています。必要とあれば、改善したソフトウエアを、ネット経由で自動車に送りアップデートすることで、「運転がしやすくなった」、「安全性が高まった」、「燃費が良くなった」などの体験を向上させることができます。

モノの価値は、モノそのものにあるのではなく、ものを使うことによって得られる体験に価値があります。ならば、モノを購入するのではなく、必要な時にこれを借りて、必要なくなれば返却できるサービスのほうが、コスパがいいし、保管場所の心配や管理の手間も省けます。一昔前であれば、モノを購入し、所有しなければ、「体験価値」を得られませんでした。しかし、モノもヒトもネットでつながるいまなら、モノを買わずに、同様の「体験価値」をいつでもサービスとして手に入れることができます。これは、「ビジネスの主役が、モノからサービスへとシフトした」ということです。

モノが主役のビジネスでは、モノを買って所有しなければ、求める「体験価値」を得られません。しかし、サービスは、所有できませんから、提供される「体験価値」そのものが、ビジネス価値となるのです。

サービス・ビジネスの価値=
  ネット接続
  × ソフトウェアによる機能の実装
  × 高速にアップデートを繰り返すことができる能力

サービスがビジネスの主役となる時代には、「体験価値」すなわちUXの出来不出来が、企業の収益を左右します。そうなると、魅力的なハードウェアを作るだけではなく、「ネットにつながる」や、「ソフトウェアで機能や操作性を実現する」といった仕組みを土台に、「ソフトウェアをアップデートしてUXを向上させ続ける能力」が、ビジネスの成否を決めるようになります。

スマートフォンやWebのサービスでは、このような仕組みは、既に常識となっています。これをモノにまで拡げようというわけです。モノは、サービスと一体化し、その構成要素のひとつとなるわけです。

そんなサービスの実態は、ソフトウェアです。サービスが使われれば、ソフトウエアが実行され、データが生まれます。そのデータを見れば、ユーザーが、サービスをどのように使っているのかが分かります。何に満足し、不満を感じ、どこに不便を感じ、想定外の使い方をしているなどが、直ちに分かります。

そんなデータから学んで、サービスの改善点を見つけます。サービスの実態は、ソフトウエアですから、ソフトウエアを改修することで、サービスを改善します。改善されたサービスを提供すれば、ユーザーの「体験価値」は向上し、ファンを増やし、信頼を高め、リピートを増やすことができます。このサイクルを回すことが、「サービスの運営」です。

そんなサービス・ビジネスは、モノのビジネスと決定的に異なる点があります。それは、「スピード」です。モノのビジネスであれば、モノを作り、販売しなくてはなりません。そのためには、企画や設計から資材調達、工場設備の準備、生産、物流、店舗での販売などの一連の仕組みを作り上げるために長い時間がかかります。

一方、サービス・ビジネスは、その実態がソフトウエアなので、企画や設計と製造(システム開発)が並行して行われます。資材調達、工場設備の準備、生産、物流、店舗での販売などは不要です。スピードがまるで違います。つまり、ビジネスを動かす「時間の常識」が、一桁も二桁も速いのです。

ソフトウエアの実態は、プログラム・コードです。モノと比べて作るのは短期間です。一方で、魅力的なサービスが登場すれば、まねされるのも、あっという間です。自分たちよりも魅力的な競合サービスが登場すれば、ネットでその情報が直ちに拡散され、ユーザーがそちらに移ってしまうかも知れません。だから、競合サービスよりもいち早く改善し、「体験価値」で優位であり続けなくてはなりません。そんな圧倒的なスピードこそが競争力の源泉です。

サービスに圧倒的スピードを与えるためには、ソフトウエアの開発や改修、システム資源の調達、ソフトウェアを実行する環境の改善などもまた、圧倒的なスピードが求められます。だから、アジャイル開発やクラウド・コンピューティングなどの手法や技術、サービスが必要とされ、これらが発展、普及しているとも言えるでしょう。

高品質のモノ(ハードウェア)をリーズナブルな金額で提供するだけでは、もはや企業の競争力を維持することはできません。顧客の状況をいち早くデータで捉え、高速に「体験価値」すなわちUXを改善、向上し続けることが、競争優位を維持する重要な要件となったのです。

モノを購入、所有することを前提とした「モノが主役」の時代とは、競争の原理が大きく変わってしまいました。ビジネスをサービス化し、UXを改善、向上させ続けるメカニズムを企業活動の仕組みに組み入れることが必要です。これができるかどうかが、企業の死命を制する時代になったとも言えるでしょう。

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
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