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知識創造は「あえて集まる」から始まる

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企業活動における「暗黙知」の重要性は、経営学者である野中郁次郎氏によって提唱されました。この暗黙知を経営に活かすための方法論として「SECIモデル」が提唱され、多くの企業で活かされています。

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共同化:暗黙知を暗黙知として伝え、相互理解を深める段階。必ずしも言語で伝える必要はなく、身体や五感を使いながら、勘や感覚などを表現して他者と共有。

表出化:暗黙知から形式知へと変化させる段階。暗黙知を言葉や図などを形式知へ変換。

結合化:形式知と形式知を結びつける段階。これにより新しい知識が形成され、これが個人単位ではなく、組織財産として活用できるようになる。

内面化:形式知から個人の暗黙知へとまた変化させる段階。結合化によって新たに創られた形式知を、各個人で習得するために反復練習等を行うことでまた自分のものとする。

文章や図解、数値などによって、誰が見ても理解できるような形式で表現された客観的な知識である「形式知」は、それよりも遥かに大きな「暗黙知」の一部にすぎません。そんな「暗黙知」は、他人に伝えることが難しい知識であり、相手の感情や行動、態度などの形式化しにくい情報を介して、相手のそばで感じることで知ることができます。オンラインでは、これが難しいわけです。

コロナ禍の最中、私たちは、オンラインを強いられることになりました。結果として、「オンラインでも何とかなる」との気付きを得た人も多いのではないでしょうか。一方で、「オンラインでは伝わらない」ことにもどかしさを感じました。

オンラインで感じるもどかしさは、情報の伝達手段が単純化されすぎてしまい、「形式知」に偏ってしまうことが理由です。見方を変えれば、日常のコミュニケーションにおいて、「形式知」では伝えきれない、感覚的、情動的な情報により伝わる「暗黙知」が、いかに大きな割合を示しているかを、私たちは体験を持って知ることになったのです。

世間では、リアル回帰の動きが勢いを増しているように思います。何事も大きく左へ振れれば、その勢いで、中間を振り切って、右へと大きく振り戻ってしまいます。しかし、これはあまりにももったいない時間の無駄です。意識してリアルとオンランをうまくバランスすることを心がけるべきでしょう。

「形式知」が主体となる知識取得や情報伝達の効率を重視するならオンライン、「暗黙知」でなければ伝わらない、あるいは生み出せない知識創造を重視するならリアルといった使い分けを考えるべきです。

知識創造理論を提唱した野中氏は、知識創造を次のように説明しています。

「知識創造とは個人の信念を真実へと正当化していくためのダイナミックな社会プロセスである」と言う。

また知識について、次のように述べています。

「知識は、天然資源のように誰かに発見されるものではなく、人が関係性の中で創る資源である。そのため利用する人の思いや理想、感情などで、意味や価値が変化するダイナミックな資源といえる。」

先に示したSECIモデルのプロセスを経ることで知識創造が可能というわけです。

かつて、ピーター・ドラッカーは、"知識という資源が21世紀において最も重要な資源となる"と提唱しています。つまり、これからの企業経営にとって重要なことは、知識創造のプロセスを経営の基盤に据えることが重要であるということです。

そのためには、「形式知」によるやり取りが重視される表出化・連結化・内面化のプロセスには、オンラインでのコミュニケーションは有効な手段となり、一方、「暗黙知」によるやり取りが重視される内面化・共同化・表出化では、リアルな場でのコミュニケーションをうまく組み合わせることができる仕組み作りが大切だということです。

神社の杜のワーキング・プレイス8MATOを着想したとき、「あえて"集まる"を最高の体験に」できる場所を作りたいと考えました。コロナ禍の最中のことでした。その時、私は、「これからは、集まることがプレミアムになる時代」と考え、意識して、頑張って、「あえて集まる」機会をつくり、そこで語り合い、新しい出会いを生み出し、つながる場にできればと考えるようなりました。そのためには、設備や施設の充実に留まらず、イベントやセミナーも開催しなくてはなりません。道半ばではありますが、この理念は8MATOの土台です。

資源の乏しい我が国にあっては、知識という財産を大きくしていくことこそ、至上命題です。野中氏が、「知識創造とは個人の信念を真実へと正当化していくためのダイナミックな社会プロセスである」と述べているように、新たな社会的な価値を創出し、世の中に影響を与える活動が、知識創造というわけです。そのためには、多様な人たちが集まり、議論し、感じることが大切なのだと考えています。

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ささやかながらも8MATOがそんな役割を果たせることができればと、願っていますし、みなさんが、そんな使い方をしてもらえればと思います。

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。

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