転職を武器にできるか:転職の3つのタイプ
「もうすこし、お客様の業務や経営に関心を持つべきでした。」
SI事業者でSEマネージャーをしている50代前半の方から、こんな話を伺いました。
彼は、ヘッドハンターの仲介で、CIO候補として事業会社の面接をうけたそうです。職歴も申し分なく、大きなプロジェクトで修羅場も経験しています。そんなこともあって人事部門の面接はなんなくクリアして役員面接になったそうです。
「あなたは、うちに入られたら、何をしたいですか。」
漠然とした質問に、どう答えればいいのか、迷ったそうです。しかし、自分はシステム開発についての十分なキャリアがあり、情報システム部門の現場もそれなりに理解していると言う自身がありました。そこで、次のような回答をしたそうです。
「ITに関わる経費を削減します。業務のデジタル化にも取り組んでゆきたい。」
これに対して、役員は、次のように聞き返したそうです。
「いや、そんなことは、もう取り組んでいます。そういうことではなくて、この会社の経営や事業について、どのような変革をすべきか、ご意見を伺いたいのです。おっしゃったようなことなら、自分たちだけでもできます。外部からITの専門家をCIOとして迎えるわけですから、私たちにはない視点、あるいは、私たちの事業や経営をどのように変えるべきかをご提言頂きたいのです。」
彼には、まともな回答ができなかったそうです。結局は、面接に落ちてしまいました。
CIOとなれば、経営幹部として、ITを任されるのですから、このようなことを問われるのは当然のことです。しかし、彼のこれまでの経験には、このようなことを考える機会はありませんでした。ひたすら、お客様のご要望に応えてQCDを守ってシステムを納品することに専念してきました。自分たちが作って納品したシステムが使われた結果を見届けることはなく、また次のプロジェクトを任される繰り返しです。
自分の与えられた仕事を誠実にこなしてきたこと、トラブルに直面しても逃げることなく、必死になってそれを乗り越えてきたこと。そして、お客様に「よくやってくれた」と感謝されたことなど、自分のやって来たことに誇りはありました。しかし、それだけでは、お客様に受け入れて頂くことはできなかったわけです。
20〜30代であれば、勢いと好奇心が、採用の決め手になるでしょう。これまでどのような経験をしてきたのか刃、それほど重要ではありません。新しい技術や方法論を直ぐに試してみる好奇心、よかれと思えば、それを自分の武器にするしたたかさ。そんなマインドセットを持ち、会社や組織、上司に言われなくても、自分でこれを実践する人材は魅力的です。
ITに限った話しではないが、常識がアップデートされるスピードは、これまでに加速しています。いつまでもいまのスキルや知識に拘っていては、あっという間に陳腐化します。この現実を受け入れることは、なかなかしんどい話しでしょう。
そんなことは、分かっているという人がほとんどですが、多くの人はそれに対処することを怠っています。だからこそ、それができる人は、希少性が高く、転職価値が高いわけです。
「うちの会社は、遅れています。経営者の頭は固く、いまの世の中を分かっていません。」
だからうちの会社はダメなんだ、もっとこうすべきだと言う人がいます。
現状を批判的に捉え、改善すべきところを指摘する志は、大切だと思います。しかし、自分もその会社の社員であり、当事者です。そんな自分を棚に上げて、批判だけを声高に繰り返しても、信頼を得ることはできません。
「そんな会社、とっとと辞めてしまえばいいではないですか。」
そんな問いかけをすると、大概は次のような答えが返ってきます。
「そうなんですけどね・・・」
会社に不満があるから転職したいという人もいるでしょう。キャリアップのために、あるいは自分の可能性を試すために新しい仕事にチャレンジしたいと考える人もいます。しかし、自分は、他の会社でも必要とされる存在なのだろうか。どこででも通用するスキルやマインドセットを持っているのだろうか。勢いも大切ですが、少し立ち止まって自分を世の中の基準に照らし合わせて、冷静に評価してみてはどうでしょう。自分は、他の会社から見て、採用したい存在なのだろうかと。
転職には、アップグレード転職、横滑り転職、ダウングレード転職の3つのタイプがあります。アップグレード転職とは、自分の新たな可能性の発見と成長の機会を手に入れる転職です。採用側は、将来の可能性に投資します。
彼らは、社外の人たちとのつながりを通じて、常に自分を外の世界に晒し、会社の基準ではなく、世の中の基準で自分を客観的に評価し、自分の社会的価値を値踏みできる人たちです。だから、「こういう仕事をしたいからこの会社に転職しよう」というときに、選択権を自分で行使できます。
こういう人たちは、世の中の基準を見ながら知識やスキルを磨き、自分の世の中的な実力を心得ています。転職斡旋会社に頼らなくても、社外とのつながりを通じて、転職の話しが持ち込まれることも少なくありません。
転職によって、仕事の幅も広がり、収入も増えるでしょう。常に社外の基準で自分を評価するマインドセットは変わりませんから、転職先での成長のポテンシャルも高いはずです。いまの会社での評価も総じて高いので、会社にすれば、転職して欲しくない人材でしょう。
横滑り転職とは、いまの仕事の知識やスキルを買われる転職です。採用側の人材不足を補うことを目的とします。もちろん将来の可能性を期待しないわけではありませんが、重要なのは、いまの不足を補うことです。昨今の事業会社によるIT人材の採用熱もそんなところに理由があるのかもしれません。
もちろん、不足しているのだから現状より高い収入をオファーされるでしょう。しかし、期待されているのは、いまの知識やスキルであり、これまでの経験が採用理由として重要になります。
このような転職は、これまでの自分にはなかった価値観に触れられるでしょうしし、物事を見る視野も広がることで、成長の機会となるはずです。ただし、そういうマインドセットを持って、転職後の仕事に向き合えるかどうかが大切です。それができれば、将来のアップグレード転職の機会にもつながるでしょう。
一方、いまの会社が嫌だから、あるいは、漠然と「したいことができないから」という理由で、転職するのであれば、また転職先でも同じ不満を持つ可能性は高いでしょう。そんなことでは、自分のキャリアアップにはつながりません。
ダウングレード転職は、なかなか辛いですね。「この給与でよければ」と採用側の企業に値踏みされます。その人の能力や可能性ではなく、単に人手不足を補うことが目的の場合もあり、新たなチャレンジの機会にはなりにくいのが現実です。
もちろん、それでも転職して、奮起して、成長することもできるでしょう。あまりにも酷いいまの会社の現状から、退避するために、どうしようもない選択かも知れません。
しかし、転職した以上は、その会社の業績のために貢献する心構えが必要です。腰掛け、あるいはフリーライダーを決め込んで、努力を怠れば、また同じことを繰り返すだけになってしまいます。
もちろん転職のタイプは他にもあります。家庭の事情、どうしてもいまの企業の文化や仕事の内容が、自分には向いていないとの理由から、転職したいと考えることもあるはずです。
ただ、もし、自分の成長のために、あるいは、キャリアアップのために、転職を考えているのであれば、まずは、冷静にいまの自分に向きあうことからはじめるべきです。そして、「自分は何をしたいのか」を考えてみることだと思います。
そのためには、世の中の評価軸で、自分を評価できるようになるべきです。社外の人たちの付き合いを増やし、沢山の本を読むことをおすすめします。興味や関心のあることを、自分で試してみることも大切です。それよりも何よりも、いまなすべきことに徹底的に打ち込んで、自分の実力を試してみるべきかも知れません。そういう冷静さが、転職を人生の好機にしてくれます。
もちろん、待遇が良く給与も高そうだから、あるいは、いまの会社がつまらないから、漠然となんとなく転職したいからという理由で転職することも、ひとつの選択だと思います。世の中の現実を知り、新たな出会いが、人生を変えてくれるかも知れません。しかし、これはかなりのバクチでしょう。それだけに頼って転職を繰り返していれば、自分の人生を自分で選ぶことができなくなってしまいます。
私は、多くの人に転職を勧めたいと思っています。自分の可能性を広げ、仕事と才能のミスマッチングをなくし、社会を健全な方向に向かわせる原動力となるからです。
視点を変えれば、転職者から選ばれる会社は成長し、選ばれない会社は存続が難しくなるでしょう。生産年齢人口が減少するいま、経営者は、この現実に向きあい、必要とあれば、大鉈を振るって、転職者にとって魅力的な会社にする努力を惜しまないことです。そのためには、社会/世の中の評価軸で、自分たちの会社を評価できなければ、なりません。
転職しようという人たちは、選択の自由を手に入れるために知識とスキルを社会基準で高めてゆくことです。会社が与えてくれる仕事をこなすだけではなく、独学し、社外へと人のつながりを増やし、いろいろと自分でやってみることです。体験こそ、最高の教師です。そうやって、自分を磨き続けることが、転職を人生のステップアップの機会としてくれます。
もはや転職が後ろめたい時代ではありません。特に、IT業界にあっては、転職は「おめでとう」と言われる世の中になりました。
経営者は、そういう人材の往来を好機と捉え、自社の成長の機会と捉えてはどうでしょうか。変革の原動力となる人が集まり、そうでない人たちは去っていくことは仕方のないことです。もちろん、いまの人材を活かし、学び直しや成長の機会を与えることを怠るべきではありません。しかし、その機会を活かせるか活かせないかについては、本人の問題であり、彼らにもまた、自分の選択があり、それを尊重すべきです。
時代に即した変革ができない企業からは、優秀な人たちは、去って行くでしょう。それは、この会社の将来が不安だからです。自分の成長の機会を閉ざされる不安があるからです。一方、試行錯誤しながらも、変革に真摯に向き合っている企業は、そんな優秀な人材を引き寄せられます。それは同時に、転職先を自分で選べる人材になれば、自分もまた新たな成長とキャリアアップの機会を手に入れられることを意味します。
そんなお互いの関係が、世の中を良い方向に変えていくだろうと思います。転職とは、企業や個人、世の中を変える機会となるはずです。
企業にとっても、個人にとっても、転職を武器にできるかどうかが、それぞれの成長にとって、大切な時代になったのかも知れません。
7月30日 八ヶ岳の森でヨガ@神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
気温が急に上がったり、湿度が高かったり、部屋の中はクーラーが効きすぎていたりと、気温の変化が激しく身体も疲れやすい毎日ですが、森の中でヨガをして心身のコンディショニングを整えましょう!
今月は下半身、特に股関節を重点に置いてヨガをしていきます✨
八ヶ岳の森に浮かぶ大きなテラスで、森の精気にも助けてもらい、最高なリフレッシュメントを体験してください。
レッスンでお会いできるの楽しみにしています!詳しくはこちらをご覧ください。
ヨガ・インストラクター "yo"
- RYT200ヨガインストラクター取得
- 健康運動指導士
- 準中級レクリエーション•インストラクター
- 初級障がい者スポーツ指導員
持ち物 :動きやすい服装、ヨガマット、タオル、飲み物など。八ヶ岳の天然水は飲み放題!
雨天決行:屋根付きの森のテラスなので、雨天でも大丈夫です。
お食事等:地元の食材や無添加にこだわったランチ、地元果物の手作りのジュース/ソーダ、スイーツなども提供しています(有料)。
参加費 :1,000円(税込み) *現地にてお支払いください。キャッシュレス(クレジットカードやPayPayなどが使えます)。
【募集開始】新入社員のための「1日研修/1万円」・最新ITトレンドとソリューション営業
最新ITトレンド研修
社会人として必要なデジタル・リテラシーを手に入れる
ChatGPTなどの生成AIは、ビジネスのあり方を大きく変えようとしています。クラウドはもはや前提となり、ゼロトラスト・セキュリティやサーバーレスを避けることはできません。アジャイル開発やDevOps、マイクロ・サービスやコンテナは、DXとともに当たり前に語られるようになりました。
そんな、いまの常識を知らないままに、現場に放り出され、会話についていけず、自信を無くし、不安をいだいている新入社員も少なくないようです。
そんな彼らに、いまの常識を、体系的にわかりやすく解説し、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと、この研修を企画しました。
【前提知識は不要】
ITについての前提知識は不要です。ITベンダー/SI事業者であるかどうかにかかわらず、ユーザー企業の皆様にもご参加頂けます。
新入社員以外のみなさんへ
新入社員以外の若手にも参加してもらいたいと思い、3年目以降の人たちの参加費も低額に抑えました。改めて、いまの自分とこれからを考える機会にして下さい。また、IT業界以外からIT業界へのキャリア転職された方にとってもいいと思います。
人材育成のご担当者様にとっては、研修のノウハウを学ぶ機会となるはずです。教材は全て差し上げますので、自社のプログラムを開発するための参考にしてください。
書籍案内 【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版
ITのいまの常識がこの1冊で手に入る,ロングセラーの最新版
「クラウドとかAIとかだって説明できないのに,メタバースだとかWeb3.0だとか,もう意味がわからない」
「ITの常識力が必要だ! と言われても,どうやって身につければいいの?」
「DXに取り組めと言われても,これまでだってデジタル化やIT化に取り組んできたのに,何が違うのかわからない」
こんな自分を憂い,何とかしなければと,焦っている方も多いはず。
そんなあなたの不安を解消するために,ITの「時流」と「本質」を1冊にまとめました! 「そもそもデジタル化,DXってどういう意味?」といった基礎の基礎からはじめ,「クラウド」「5G」などもはや知らないでは済まされないトピック,さらには「NFT」「Web3.0」といった最先端の話題までをしっかり解説。また改訂4版では,サイバー攻撃の猛威やリモートワークの拡大に伴い関心が高まる「セキュリティ」について,新たな章を設けわかりやすく解説しています。技術の背景や価値,そのつながりまで,コレ1冊で総づかみ!
【特典1】掲載の図版はすべてPowerPointデータでダウンロード,ロイヤリティフリーで利用できます。社内の企画書やお客様への提案書,研修教材などにご活用ください!
【特典2】本書で扱うには少々専門的な,ITインフラやシステム開発に関わるキーワードについての解説も,PDFでダウンロードできます!
2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1
目次
- 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
- 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
- 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
- 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
- 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
- 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
- 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
- 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
- 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
- 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー
神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO
8MATOのご紹介は、こちらをご覧下さい。