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流行言葉を大仰に語る企業・自分たちのやっていることを地に着いた言葉で語る企業

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ITビジネスの難しさは、ビジネスの根幹たるテクノロジーの進化の加速度が、社会や経済の進化よりも遥かに速いという現実だろう。この変化に目を背け、かつての成功の方程式が、あっと間に陳腐化することを受け入れたくないと、無意識に未来に目をつむっている人たちもいる。

Googleの研究者であり、未来学者のカーツワイルは、テクノロジーの進化も同様に指数関数的に進化するので、やがては人工知能の能力が人間の能力を遥かに凌ぐまでに高まり、予測できない事態が起こると指摘した。彼は、この時を特異点(シンギュラリティ)と呼び、2045年に訪れると述べている。シンギュラリティが訪れるかどうかは、いろいろと議論のあるところだが、テクノロジーが指数関数的に発展することに疑う余地はない。

例えば、ディープラーニングは、2006年にカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントン(Geoffrey Hinton)教授が論文で、その可能性を示したことが始まりだ。そして、6年後の2012年、画像認識の国際的なコンペティションで、彼が率いるチームが圧倒的な強さで、これまでの画像認識の精度を飛躍的に超える成績を上げて圧勝した。さらに4年後の2016年、このアルゴリズムを応用したGoogleAlpha Goが、囲碁の世界チャンピオンを下すことになる。2017年、この技術を自然言語処理に適応したTransformerが登場し、その後、登場する様々な大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)の礎を築いた。2020年、このTransformerを発展させたGPT-3がリリースされ、あまりに流暢な言語生成能力に社会的不安を招きかねないと、利用制限が課せられたほどだ。この技術を土台にチャット・アプリケーションとして仕立てられたのがいま大きな話題っているChatGPTだ。同様の技術やサービスは、いまや雨後の竹の子のごとく登場している。

2012年に一斉を風靡したディープラーニングの登場から、10年のほどで、世の中を大きく変えるほどの社会変化をもたらしたとも言える。これから先、この技術は、汎用AIAGI: Artificial General Intelligence)へと適用範囲を拡げていくかもしれない。そうなると、その影響力は、破壊的あるいは創造的な社会の変化をもたらす可能性がある。

ITに関わる仕事をしながら、こんなテクノロジーの発展を当事者としてではなく、傍観者として眺めていては、ビジネスのチャンスが得られない。

「まだ、ユーザーにニーズはありませんよ。これからですね。そんなこと、相談されませんから。」

お客様にしてみれば、彼らに相談してもムダだと分かっているから相談されないだけである。なぜ、この事実に気づけないのか。

あるSI事業者の幹部が、次のようなことを話されていた。

「パブリック・クラウドが注目されても、システム開発は残りますよね。運用だって必要です。なによりも、セキュリティに懸念があるパブリック・クラウドには消極的なお客様も多いのが現実ですから、簡単に仕事が無くなることはありませんよ。」

この方は、ホステッド・プライベート・クラウドとパブリック・クラウドの区別がついていないようだった。また、クラウドはインターネットで接続しなければならないと思われていたようだ。さらにコンテナやマイクロサービス、サーバーレス/FaaSについても聞いたこともないという。

クラウドが提供するサービスは、人が経験によって積み上げて来た技能の自動化を推し進め、工数を積み上げなければならなかったシステム開発の工数を激減させ、開発のスピードや変更への即応力を高めている。それは、開発や運用のあり方を根本的に変えてしまうのはいまさら言うまでもない。生成AIがここに加わることで、この変化のスピードは加速する。

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IoTなんて昔からありましたよ。自分も工場の制御系システムの開発に関わっていましたから、その程度のことは分かります。」

このような方もいた。

  • かつての工場が監視や制御の範疇でしか接続していなかったこと
  • 対象となるデバイスの数が少なかく、クローズドなネットワークに閉じた仕組みであったこと
  • いまや工場に限らず様々なモノがオープンなネットワークに拡がり、その数が桁違いに増えたこと
  • そこで収集する膨大なデータを機械学習で分析し、最適解を求め、アプリケーションを常に最適な状態に維持するしくみとなっていること

そんな、サイバー・フィジカル・システムを構築するというIoTの本質を理解されず、制御系のシステムとの区別できていないようだった。

「市場の変化に合わせて、戦略を動かし続ける」

米コロンビア大学ビジネススクール教授、リタ・マグレイスの著「The End of Competitive Advantage(邦訳:競争優位の終焉・日本経済新聞出版社・2014)」にこのように書かれている。その変化のスピードはかつてなく加速している。そのため、企業のもつ競争優位性があっという間に消えてしまい、すぐにまた新たな競争に晒される「ハイパーコンペティション」の時代を迎えているという。

そんなことは分かっていると言わんばかりに、「私たちもDXの実現に向けて貢献してゆきます」と、その本質を問うことなく流行の言葉を使って、自分たちの先進性をアピールしている企業もある。そんな企業が、世の中で当たり前に使えているクラウド・サービスを社内のネットワークでは使えない、未だ旧態依然とした開発手法や品質管理手法にこだわり続けている。言っていることとやっていることが違うことには、関心がないところもあるようだ。

このような企業に限って、「DX」などの流行の言葉を大仰に使う傾向にあるようだ。少なくとも、これを実践している企業は、そんなことは当たり前とばかりに、地に着いた言葉で自分たちのやっていることを淡々と語っている。

  • 自分たちは、変化し続ける未来を受け入れ、最適な道筋を見つけようとしているだろうか。
  • テクノロジーの進化をむしろ脅威と感じ、その可能性について積極的に学ぼうとせず、思考停止に陥っていないだろうか。
  • テクノロジーの発展と普及が、働き方や人との係わり方の常識を大きく変えてしまっていることに気付いているだろうか。
  • 言葉では分かっている、取り組んでいると語るが、この変化の本質を見極めて、行動しているのだろうか。

余計なお世話ではあるが、自分の足下を改めて見なおしてみてはどうだろう。

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ITについての前提知識は不要です。ITベンダー/SI事業者であるかどうかにかかわらず、ユーザー企業の皆様にもご参加頂けます。

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【図解】コレ一枚でわかる最新ITトレンド 改装新訂4版

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

  • 第1章 コロナ禍が加速した社会の変化とITトレンド
  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー

神社の杜のワーキング・プレイス 8MATO

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

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