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システム内製化はSI事業者にとって「イノベーションのジレンマ」であることに気付くべき

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既存の市場で成功している企業にとっては、求められる技術水準が低く、許容される支払金額も小さい新しい市場には魅力がありません。そのため、その市場への対応は先送りされてしまいます。その間に、技術革新は、新しい市場を生みだすだけではなく、成功企業の顧客が求めていた機能や性能を満たし、その市場をも取り込んで成長拡大してゆきます。その結果、後れを取ったかつての成功企業が敗退してしまいます。これが、クリステンセンの言う「イノベーションのジレンマ」です。

冒頭の大手SI事業者の言葉には、まさに「イノベーションのジレンマ」によって敗退を余儀なくされる「成功している企業」の現実が透けて見えるようです。

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このチャートは、顧客が求めているITに関わる技術力が、この10年でどのように変わってしまったかを説明しています。

10年前は、大手SI事業者でなければ、顧客の求める技術力と人材を提供することができませんでした。大手SI事業者は、まさに「成功した企業」でした。

急速な社会のデジタル化に伴い、ITを前提とした新たらしいビジネスの創出や、顧客チャネルのデジタル化といった、新たなITの需要を生みだされました。そこで求められる機能や性能、要求品質や安定性は、基幹業務に求められるそれと比べれば、それほど高度なものは求められません。しかも、予算の考え方や求められるスピードも異なります。折しも、クラウド・サービスの普及とも相まって、低予算でも開発できる道が開かれました。その結果、10年前であれば、大手SI事業者に任せる以外になかったことを、内製でもできるようになりました。

また、お客様によるシステムの内製は、SI事業者が担っていた仕事を、お客様が自分たちでやろうというのですから、SI事業者にとっては、競合になります。しかも、意志決定権限がお客様にある以上、この競合には勝ち目がありません。

「市場競争のルールが根底から破壊され、既存企業のシェアが奪われるほどの革新的なイノベーション」

クリステンセンは、これを「破壊的イノベーション」と呼んでいますが、まさに内製化の拡大は、SI市場における「破壊的イノベーション」と言えます。

この「破壊的イノベーション」に対峙する概念として示されているのが、「持続的イノベーション」です。この用語は、既存顧客のニーズに合わせ、自社製品やサービスの価値を向上させるために継続して生み出されるイノベーションです。例えば、開発工程の標準化をすすめ効率化して、受託開発の原価率を低減することや、クラウドやアジャイル開発のスキルを習得して、新たな工数需要を獲得するなどは、その典型です。

内製化への対処は、このような「持続的イノベーション」の延長線上ではできません。つまり、「中長期的に絶対的な品質と安定を実現できるシステムを作る」ことから、「短期間でITサービスを提供し、変更にも即応する」ことへと需要が変わりつつあるわけで、既存のビジネス・モデルでは、新しい需要を満たすことができません。

もちろん、「中長期的に絶対的な品質と安定を実現できるシステム」が不要になるわけではありません。しかし、従来であれば、自前でシステムを作ることしか選択肢はなかったわけですが、クラウド・サービスがこれを代替できるようになりました。その結果、この需要が相対的に減少することと、大手SI事業者以外にもできる小規模な事業者が増えてきたことで、競争の原理が大きく変わり、この領域での売上や利益を拡大することは、難しくなりました。

一方、ITが効率化やコスト削減のための手段から、競争力や差別化の手段であるとの認識が高まり、ITをコアコンピタンスとして育ててゆこうという意欲が高まっています。そのためにはシステムの構築や運用を自分たちでまかなうことが必要であり、システムの開発や運用についての専門的なスキルを持つ人材を、ユーザー企業が採用したり育成したりする動きが拡大しています。

加えて、インフラやプラットフォームのようにビジネスに付加価値を生みださない機能の実装と運用の負担を回避し、差別化を生みだすためのアプリケーションの開発に注力しようとしています。内製の拡大に伴い、サーバーレスやコンテナの需要が高まり、アジャイル開発やDevOpsに関心が集まるのには、こんな背景があるからです。

「作る技術を駆使してQCDを守ってシステムを構築するために、組織力で多くの人員を提供する」ことから、「できるだけ作らずにいち早くITサービスを立ち上げ、変更にも俊敏に対処できる技術力と人間力を持つ個人を提供する」ことへと、SIビジネスの軸足をシフトしなければならなくなったのです。つまり、「お客様が組織する内製チームに優秀なエンジニアを参加させ、高い専門性でお客様の事業を支え、そのスキルやノウハウをトランスファーする役割」です。内製化支援というのは、このような仕事になるのでしょう。

ちなみに「人間力」をここに付け加えたのには意味があります。つまり、お客様の内製チームにメンバーとして関わってゆくには、仲間としての強い信頼関係で結ばれていなくてはなりません。それは組織や会社ではなく、個人に依拠することであって、「どこの会社に依頼する」のではなく「誰に依頼する」かが重要になります。もはや会社の看板ではなく、個人の看板、人間としての信頼感が求められるようになりました。

お客様が、大きな会社だから安心だと考えるのは、仕事を丸投げする場合の保険のためです。お客様が自ら責任を持つ内製であれば、そんな保険に価値はなく、技術力があり信頼できる人材こそ、価値です。その意味で、人間力はとても重要になります。

このようなビジネス環境の変化は、沢山の社員を抱える大手SI事業者にとっては、雇用を維持できなくなることや、内製や専門性を極めた小規模企業に取って代わられることになるので「破壊的イノベーション」となるわけです。しかし、もはやどうしようもありません。

この状況に対処するには、イノベーションのジレンマに陥っていることをまずはしっかりと自覚することです。その上で、クリステンセンが述べているように、自らも「破壊的イノベーション」に取り組むことです。そのための有効な手段として、彼は以下の戦略を提唱しています。著書「イノベーションのジレンマ」には、次のように書かれています。

  • 破壊的技術を「正しい」顧客とともに育て上げること。この「正しい」顧客は必ずしも既存の顧客グループから見つける必要はない。
  • 破壊的技術のインキュベーションは、小さな成功と少ない顧客獲得でも報いられる仕組みを持つ自律した組織の中で行うこと。
  • 早く失敗し、正しい破壊的技術を見つけること。
  • 破壊的イノベーションをミッションに持った組織に既存事業が有するリソースを全て使えるようにすること、その一方で当組織のプロセスや価値観は既存事業から切り離されるよう気をつけること。

自然言語を解析して、その意図に対応するプログラム・コードを生成するOpenAICodexを搭載したGitHub CopilotXを使えば、コメントやこれまで書いたコードから、プログラマーの意図を先読みして、コードを生成してくれます。書いたコードのバグを指摘し、それを修正してくれる機能もあるようです。近い将来、何がしたいかを入力すれば、バグフリーの完璧なコードを生成してくれるようになるはずです。

このような技術の急激な進化は、SIビジネスにおける「破壊的イノベーション」の動きをますます加速させ、これまでのビジネス・モデルの延長上に、生き残りの術を見つける時間的余裕は、急速になくなりつつあります。

難しい事情はいくらでもあるでしょう。しかし、「破壊的イノベーション」が、急速に進みつつある現実を、なかったことにはできない以上、覚悟を決めて、クリステンセンの示した戦略を実践すべきではないでしょうか。

自己研鑽をみんなで楽しむコミュニティ・MATO塾のご案内

527日(土)10:0012:00 8MATO塾・第3

八ヶ岳で働いて暮らそう!起業・複業の場所としての魅力と八ヶ岳での働き方について

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近年八ヶ岳エリアは移住先として人気になっていますが移住検討者にとって大きな懸念となるのが仕事です。八ヶ岳移住者の働き方の実例を紹介することで移住後の働き方を具体的にイメージすることができます。

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八ヶ岳での自由で創造的なライフスタイルに興味を持っている方、ぜひご参加ください。

講師:玉利 裕重/ヤツナビ 八ヶ岳移住・ワーケーション情報

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でも、いざ自分のこととなると、本当にできるだろうかと不安を感じられる方は少なくないはずです。そんな皆さんの不安を埋めるお手伝いができるのではないかと思います。

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【ご登録ください】LINEの公式アカウント作りました

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【募集開始】新入社員のための「1日研修/1万円」・最新ITトレンドとソリューション営業

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ITについての前提知識は不要です。ITベンダー/SI事業者であるかどうかにかかわらず、ユーザー企業の皆様にもご参加頂けます。

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2022年10月3日紙版発売
2022年9月30日電子版発売
斎藤昌義 著
A5判/384ページ
定価2,200円(本体2,000円+税10%)
ISBN 978-4-297-13054-1

目次

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  • 第2章 最新のITトレンドを理解するためのデジタルとITの基本
  • 第3章 ビジネスに変革を迫るデジタル・トランスフォーメーション
  • 第4章 DXを支えるITインフラストラクチャー
  • 第5章 コンピューターの使い方の新しい常識となったクラウド・コンピューティング
  • 第6章 デジタル前提の社会に適応するためのサイバー・セキュリティ
  • 第7章 あらゆるものごとやできごとをデータでつなぐIoTと5G
  • 第8章 複雑化する社会を理解し適応するためのAIとデータ・サイエンス
  • 第9章 圧倒的なスピードが求められる開発と運用
  • 第10章 いま注目しておきたいテクノロジー

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八ヶ岳南麓・山梨県北杜市大泉町、標高1000mの広葉樹の森の中にコワーキングプレイスがオープンしました。WiFiや電源、文房具類など、働くための機材や備品、お茶やコーヒー、お茶菓子などを用意してお待ちしています。

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