自分たちの事業モデルを破壊するものが見えているでしょうか?
このチャートはこれから数年のうちにITテクノロジー環境がどう変化するかを整理したものです。これを見て、じゃあコンテナだ、アジャイルだ、マイクロサービスだと考えるのではなく、なぜそうなるかということを考えるべきでしょう。
テクノロジーに対応するのではなく、なぜ注目されるのかの理由を知り、その手段としてのテクノロジーに取り組まなければ、お客様の経営課題に対処することはできません。では、その理由とは何でしょうか。すこし整理してみようかと思います。
ビジネス環境の不確実性が高まり、それに対処するためには変化への即応力を手に入れるしかありません。そのためには、ITは不可避な存在となります。そんなこれからのITに求められる特性は、圧倒的なスピードと変化に俊敏に対応できるアジリティ、そして予測できない規模の変化に対応できるスケーラビリティです。それを支えるテクノロジーとして、このようなキーワードが必要とされているのです。
このようなITは合理化の手段に留まらず、事業の競争力の源泉となりますから、それを主管するのは事業部門となります。情報システム部門は事業部門と融合し、ビジネスの成果と緊密に連動する組織へと生まれ変わることが求められるようになるはずです。
当然、SIビジネスもこの変化に対処しなければ、ビジネスの機会を失うことになります。しかし、未だ旧態依然としたテクノロジーを土台にいまのビジネスを守ろうとする企業もあるのが現実です。このような企業に共通する"現象"はつぎのようなことです。
- 優秀な若手の人材が会社を辞めてゆく
- 信頼を育んできたはずの長年の顧客が他の会社に乗り換える
- これまで同様の仕事はコンスタントに依頼されるが、新しいコトへの取り組みについては相談されない
自分たちの置かれているビジネス環境の本質を理解することを怠り、うわべだけのテクノロジーの適用にしか関心がない企業の残念な現状が、このような"現象"として「見える化」されてしまうのでしょう。
しかし、このうわべのテクノロジーさえも正しく見ていない企業もまだまだあるようです。例えば、コンテナはその典型と言えるかもしれません。
あっという間にビジネス環境が変わってしまい、この変化にダイナミックに適用しなければ、もはや企業は事業を継続することが難しい状況です。この状況に対処するには、いままで以上にITの適用範囲を拡げ、これを高速に拡大、改善してゆくシステム基盤が必要不可欠となります。このような基盤として主流になりつつあるのが、クラウドの活用を前提としたクラウド・ネイティブ・アプリケーションの開発・実行・運用基盤です。コンテナはその中核をなす技術のひとつです。
クラウド・ネイティブを推進する業界団体であるCloud Native Computing Foundation(CNCF)は、クラウド・ネイティブ・コンピューティングを下記のように定義しています。
クラウド・ネイティブ・テクノロジにより、パブリッククラウド、プライベートクラウドやハイブリッドクラウドのような環境で、拡張可能なアプリケーションの構築 および実行が可能となります。コンテナ、サービスメッシュ、マイクロサービス、イミュータブル インフラストラクチャ や 宣言型APIが、このアプローチの例です。これらの技術は、回復力があり、管理しやすく、観測可能で疎結合なシステムを可能にします。堅牢な自動化と組み合わせることで、エンジニアは頻繁に、そして予想通りに影響の少ない変更を最小限の労力で行うことができます。
これにより、アプリケーション開発者は、アプリケーションを動かす上で必要なライブラリなど依存関係をコンテナにまるごとパッケージすることで、実行時の環境依存から解放され、コンテナで作成された開発環境やテスト環境をすぐ入手、実行することができるので、アプリケーション開発に集中できるようになります。
一方、インフラ運用者は、動作が確認されているコンテナであれば、常に実行環境にそのまま同じ手順でデプロイでき、言語や技術、バージョン等によってデプロイ方法を変える必要はありません。また、コンテナはOSからはひとつのプロセスとして見えるため、統一された手法で一元管理ができます。さらに仮想マシンのようにハードウェア・エミュレーションに必要な仮想イメージやOSに関わる一切合切のデータがすべて含まれた巨大なデータを扱う必要がなく、軽量で高速に起動/停止できるようになります。
圧倒的なビジネス・スピードを達成するには、このような開発・実行環境が必要となります。
この仕組みを実現する上で中核をなす様々な機能をパッケージ化したのがRed Hat OpenShift Container Platform(以下OpenShift)です。これこそが巨額の資金を出してまでIBMがRed Hatを買収した理由でもあるわけです。つまり、OpenShiftを使うことで、インフラ環境に依存することなく、どこでもコンテナが稼働する環境が実現でき、管理も統合化され、オンプレミスであっても、パブリック・クラウドであっても、あるいはハイブリッド・クラウドやマルチ・クラウドであっても、それらのインフラを意識することなくシステムの開発や運用ができる仕組みを実現できます。
さらに、今後普及するであろうIoTにおけるデバイスやエッジ・サーバーにおける開発や実行環境もコンテナ化されてゆくでしょう。そうなれば、コンテナにかかわる主要なテクノロジーを握っていれば、先ほど指摘したスピード×アジリティ×スケーラビリティを実現したいというお客様のニーズに対応でき、ITビジネスの広範にわたってイニシアティブを確保できるわけです。IBMのRed Hat買収の意図は、ここにあったわけです。
Google、Microsoft、AWSなども積極的に同様のことに取り組んでおり、まさに世の中はコンテナに向かって突き進んでいると言っても過言ではありません。
しかし、未だSI事業者の方に話しを聞くと、コンテナそのものを知らない、あるいは仮想化の代替手段程度にしか理解していない人たちも少なからずいるのが現実です。これでは、先に述べたとおり優秀な人材は去り、長年のお客様から切られ、新しいことを相談されないのは、仕方がないことなのかも知れません。それでいて、ITだのテクノロジーを看板に掲げているわけですから、これではお客様をミスリードし、お客様の価値を毀損し、ひいてはITの戦略的活用が進まない我が国復活の足かせとなってしまいます。
AIやIoTといった「見える」テクノロジーには、何とかしなければと大騒ぎしているSI事業者もありますが、このような「見える」テクノロジーの前提でもあり、情報システムの根幹を支えるテクノロジーには関心を示すことなく十分な施策もできていないとすれば、掲げているITを看板の返上すべきです。
もっと本質的なことに関心を持つべきです。コンテナだけではなく、もっと本質的な変化が起きています。コンテナはそのひとつの事例に過ぎません。
自分たちの事業モデルを破壊するものは何か?
その上で、自分たちの未来はどうあるべきかを考え、未来に至るシナリオを描くべきです。
変化はあっという間です。世の中が変わってからでは手遅れであることは、言うまでもありません。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
【12月度のコンテンツを更新しました】
・総集編の構成を1日研修教材としてそのまま使えるように再構成しました。
・最新・ITソリューション塾・第32期の講義資料と講義の動画(共に一部)を公開しました。
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総集編
【改訂】総集編 2019年12月版・最新の資料を反映しました。
*1日研修で使える程度に、内容を絞り込みました。
パッケージ編
ITソリューション塾(第32期)
【改訂】ビジネス・スピードを加速する開発と運用
動画セミナー・ITソリューション塾(第32期)
【改訂】ビジネス・スピードを加速する開発と運用
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ビジネス戦略編
【新規】変革とは何をすることか p.4
【新規】イノベーションとインベンションの違い p.8
【改訂】デジタル化:デジタイゼーションとデジタライゼーション p.37
【新規】経済政策不確実性指数(EPU)p.38
【新規】デジタル・ディスラプターの創出する新しい価値 p.41
【新規】ハイパーコンペティションに対処する適応力 p.42
【新規】価値の重心がシフトする情報システム p.54
【新規】複雑性を排除してイノベーションを加速する p.55
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
【新規】IoT実践の3つの課題 p.74
ITインフラとプラットフォーム編
【新規】ゼロ・トラスト・ネットワーク 境界型セキュリティの限界 p.110
【新規】ゼロ・トラスト・ネットワーク セキュリティと生産性の両立 p.111
開発と運用編
【改訂】改善の4原則:ECRS p.5
【新規】ITの役割の歴史的変遷 p.8
【新規】アジャイル開発:システム構築からサービスの提供(体制変化) p.11
【新規】仮想マシンとコンテナの稼働率 1/2 p.60
【新規】仮想マシンとコンテナの稼働率 2/2 p.61
【改訂】DevOpsとコンテナ管理ソフトウエア p.63
【新規】モビリティの高いコンテナ p.65
【新規】モノリシックとマイクロ・サービス p.71
テクノロジー・トピックス編
【新規】急増するAI専用プロセッサ p.62
下記につきましては、変更はありません。
・クラウド・コンピューティング編
・サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
・サービス&アプリケーション・基本編
・ITの歴史と最新のトレンド編