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及川卓也氏・著書「ソフトウエア・ファースト」が気付かせてくれること

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「危機感」という言葉には、2つの感情が交錯する。1つは、「恐怖」である。このままでは死んでしまう、未来がない、ダメになってしまう。だからといって、諦める訳にはいかない。何とかしよう、生き残る方法があるはずだ、そんな「希望」がもうひとつの感情である。

この感情の源泉には、「愛情」がある。ともに成長したい、幸せになって欲しい、あなたのことを大好きだから。

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及川卓也氏の新著「ソフトウエア・ファースト」には、そんな及川さんの「危機感」と「愛情」が紡がれている。

日本が置かれた状況を考えると、そこかしこに修羅場があるはずなのですが、茹でガエルのごとく、今までと同じことを繰り返してしまってはいないでしょうか。「そんなことはない」「ウチは変化している」と言っている企業も、その変化のスピードは、社会全体の変化に追いついているでしょうか。

この本をお読みになった皆さんは、ぜひとも変化を追い求めるようになっていただきたいと考えています。変わらずにいることに心悪さを感じるようになり、常に変化を求める。そうすればきっと組織も社会も変わっていくとことでしょう。(P.351352

彼と知り合ったのは2011年、東日本大震災直後、津波により壊滅的な被害を受けた南三陸町で、仮設住宅や避難所にPCを設置して回るボランティア活動で行動を共にしたときだ。その後、ITと災害に関わるボランティアたちのコミュニティの起ち上げや、いまも活動を続けるITによる災害支援ボランティア団体の起ち上げや運営に関わり、一時は毎週のように打ち合わせをしていたこともあった。

いまふり返れば、そんな活動にも彼の被災地に抱く「危機感」や「愛情」があったのだろう。

そこで見たものは、彼の卓越したファシリテーション能力だ。一家言もつ人たちの集まりであり、当然ながら議論は紛糾する。それをちゃんと時間内に、ひとつの方向に収斂させてゆく手腕は見事としか言いようがない。私は大いに感銘を受け、いろいろと学ばせて頂いた。

そんな彼のファシリテーションから学んだことは、「あふれる好奇心」と「最適を目指すことへのこだわり」だ。

「あふれる好奇心」とは、様々な意見の根底にある本質は何か、それをなんとしてでも知りたい、見つけたいという想いであろう。人の話を徹底して聞き、こうではないかと自分なりの考えをまとめ、それを我々に問いただす。そのことで、聞く人はその言葉を自らに問い、言葉を整える。それを繰り返すことで、そこにいる人たちの理性的な考えが感情の底から浮かび上がってくる。

もちろんそれであっても、人の意見は同じにはならない。だからこそ、絶対ではなく最適を目指す。そして、まずはこれでいきましょう、やってみましょうという最適解で合意する。

彼が働いたDECMicrosoftGoogleでの経験、そしてそれをカタチにしたアジャイル開発やOKRの思想とは、まさにそんなところにあるのだろう。そして、Googleで経験した「心理的安全性」もまた活かされていたのかも知れない。

「心理的安全性」とは、「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームに共有された信念」つまり、ただの仲良しクラブではなく、それぞれがプロフェッショナルとして、自分の判断への圧倒的自信、それをお互いにぶつけあっても、お互いにプロとして認めあっているからこその信頼があるから、他者の反応に身構えたり、不安になったりすることがなく、自然体の自分を曝け出すことができるという組織のメンタリティを言う。

本書は、そんな彼の実践経験に裏打ちされた考えを、ビジネスにとのように活かせばいいかを噛み砕き、そして丁寧に説明してくれる。

「私だけで書いたわけじゃない。みんなと一緒に書いたんです。」

彼は本書について、そのように話してくれたが、それこそがまさに彼のファシリテーション能力の賜であり、だからこそ、なるほどと多くの人が納得できる本質と最適解が示されているのだろう。

私も何冊か本を書いているのでよく分かるが、人の話しを聞き、それを単独で文章にすることはそれほど難しいことではない。しかし、1冊の本を作ることは、とても難しい。その難しさは、全体を貫く思想であり、それを形作るコンテクストをどうデザインするかだ。ブログは書けても本を書けないとはそういうことでもある。彼は、その難しさを見事に克服し1冊の本に仕上げている。これは大変な苦労だっただろう。その苦労が、読者の分かりやすさになる。

昨今の「デジタル・トランスフォーメーション」ブームは、言葉だけが先走りしているようだ。しかし、ものごとの始まりはいつもそんなものであろう。だからこそ、その本質を分かりやすく説明できる人がこのような時期には必要になる。及川さんは、それをソフトウェアと組織経営に結びつけて本書で語っている。それはとても現実的で実践的だ。つまり最適解なのだ。私のように浮ついた理想論とは違い、実践体験に裏打ちされた経験に昇華されている。その現実的で実践的なアドバイスは、人を動かす力を持っている。

「ソフトウェア・ファースト」

そのタイトルからエンジニアのための本だと勘違いする人たちがいるかも知れない。だから副題に「あらゆるビジネスを一変させる最強戦略」と書かれているのだろう。まさにその通りで、これは経営者や事業責任者、すなわち自分たちの会社に、あるいはビジネスに責任を持っている人たちに一読をお勧めしたい。経営やビジネスにとってソフトウエアがどれほど大きな影響力を与えるかを理解することができるだろう。それをどう実践すればいいのかわかるだろう。

また、SI事業者、ITベンダー、そしてIT部門の方たちにも読んでもらいたい。旧態依然としたITの常識をいまだ新しい常識に上書きできない人たちにとって、本書は引導を渡してくれる。

一気に読んだ、そして、ゆっくりと読み返した。そんな本である。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

【10月度のコンテンツを更新しました】
・"デジタル・トランスフォーメーションの本質と「共創」戦略"を改訂しました。
・RPAプレゼンテーションを改訂しました。
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総集編
【改訂】総集編 2019年10月版・最新の資料を反映しました。

パッケージ編
【新規】デジタル・トランスフォーメーション ビジネスガイド(PDF版)
【新規】デジタル・トランスフォーメーション プレゼンテーション

ビジネス戦略編
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは p.12
【新規】DXによってもたらせる2つの力 p.22
【新規】競争環境の変化とDX p.34
【新規】前提となるITビジネスの環境変化(〜5年)p.36
【新規】デジタル・トランスフォーメーションのBefore/After p.54
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの実践 p.56
【新規】共創ビジネスの実践 p.58
【新規】DX事業の類型 p.77

サービス&アプリケーション・先進技術編/AI
【新規】「自動化」と「自律化」の違い p.32
【新規】機械翻訳の現状とそのプロセス p.85
【新規】機械翻訳の限界 p.86

ITインフラとプラットフォーム編
【新規】ゼロ・トラスト・セキュリティ p.110
【新規】Microsoft 365 Security Center での対応 p.111
【新規】ユーザーに意識させない・負担をかけないセキュリティ p.112
【新規】ローカル5G p.254
テクノロジー・トピックス編
【改訂】RPAプレゼンテーション

下記につきましては、変更はありません。
・サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
・クラウド・コンピューティング編
・サービス&アプリケーション・基本編
・開発と運用編
・ITの歴史と最新のトレンド編

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