「営業」の価値そしてプライド
「私達は、3つの圧力に苦しんでいます。ひとつは、TCOの圧力です。運用や保守に関わるコストが予算の8割近くですよ。何か新しいことをやろうにも、もはや限界です。
もうひとつは、予算削減の圧力です。コスト削減要請と海外へのシフト、本業に関わるお金が増えている中で情報システムの予算は、これまで以上に絞られています。いまでもぎりぎりのやりくりをしている中で、これ以上切り詰めろと言われてもどうしようもありませんよ。
三つ目はクラウドの圧力です。経営者には、クラウドはコスト削減の特効薬のように見えるようです。しかし、膨大な既存のシステム資産をクラウド化することはそんな簡単なことではありません。しかも、クラウド化は自分たちのこれまでの役割を根本的に変えてしまいます。いわば我々の雇用を脅かす存在でもあります。経営者から見れば、私達の意欲や能力を問われるわけですが、そんな簡単にできる話ではありませんよ。」
こんな相談をユーザー企業の情報システム部長から伺った。
申し訳ないが、私にはできないことの言訳にしか聞こえなかった。確かにこれまでの歴史を背負った当事者にとっては、この現実に対処しなければならない責任があり、ご苦労もわかる。しかし、企業はビジネス合理性を追求する組織だ。この現実に対処することが、この方の責任でもあるはずだ。簡単ではないということと、できない、やらないは別の話だ。そのあたりが、はっきりと切り分けられないままの話になってしまっていたのも、そんな印象を持った理由かもしれない。もちろん、困っているという感情は伝わってくる。
営業であるあなたは、このようなお客様にどのような提案をするだろうか?いままで以上に低コストで運用できるマネージド・サービスやオフショアでの開発・保守を提案するというのはどうだろう。「安い」という話しならば、まずは耳を傾けていただけるかもしれない。
クラウドはどうだろう。業務システムの根本的な構造改革に手をつけず、できる範囲でサーバーを仮想化・集約し、経費削減の要請に対応するという提案であれば、きっと検討の俎上に載せてくれるはずだ。
しかし、それで本当にいいのか?確かに一時的にはお客様の事態を改善できるかもしれない。しかし、それが真の解決につながるのだろうか。営業の仕事って、そんなものなのか?
お客様の状況や立場を斟酌し、なんとか彼の力になりたいと思うだろう。しかし、それでこの会社は成功するだろうか、この情報システム本部長は、自分の職責を果たせるだろうか。
それよりも何よりも、そんな仕事で自分の成長や生き甲斐をあなたは感じることができるだろうか?それが営業という仕事の価値なのか?
確に、お客様がして欲しいことに応えることができれば商売にはなる。売上と利益という数字を背負っている営業にとって、とても魅力的な選択だ。「営業の人格は数字だ!」と私もかつては上司によく言われたものだ。数字をあげられなければ、企業の経営は成り立たない。営業は、数字という大きな責任を負っているのも事実だ。
どうすれば、この両者を両立することができるのか。残念ながら、絶対的な解決策など無い。ただ、私達は、このような現実、このようなお客様を相手に仕事をしているという自覚を持つべきだ。
もう一つ大切なことは、この会社の経営者と話しをすることだ。業務やシステムの当事者は、与えられた職責をこなすことに精一杯だ。たとえあるべき論はわかっていても、日常の降ってくる様々な業務への対応で、大所高所をしっかりと考え対処することは容易なことではない。その優先順位を切り替えさせることができるのは経営者しかいない。
営業は、情報システム部門の方に対しては、ITの専門家として、その良き相談相手でなくてはいけない。そして、経営者に対しては、情報システム部門の良き理解者として、そして経営という視点から情報システムのあるべき姿を客観的に語れるアドバイザーであるべきだ。
営業のプロフェッショナリティとはそういうことなのだろうと思う。私達は、意思決定者でもなければ実務の当事者でもない。その判断と行動に責任を負うことはできない。ただ、彼らが成功するためにはどうすればいいかを一緒に考える役割は果たせる。
自社の製品について詳しく語り、他社との違いもはっきりと伝えることができるのもまた営業の大切な仕事だが、そのことだけで、お客様はあなたに仕事を任せてくれるわけではない。競合他社もきっと精鋭を繰り出してくるだろう。我が社の商品が如何にすばらしいかをあなた以上にうまく話しているかもしれない。あなたは、そんな低次元の戦いに満足していいのか。
営業の仕事に「これしかない」はない。それぞれにスタイルがあり、理想がある。ただ、ひとつはっきりと言えることがある。
営業の仕事とは、モノやサービスを売ることではなく、お客様の価値を高めて対価を頂く仕事だ。モノやサービスはその手段にすぎない。
数字に追われる日々だが、ここだけは忘れないようにしたいものだ。
【募集開始】新入社員ための最新ITトレンド研修
IoT、AI、クラウドなどのキーワードは、ビジネスの現場では当たり前に飛び交っています。デジタル・トランスフォーメーションの到来は、これからのITビジネスの未来を大きく変えてしまうでしょう。
しかし、新入社員研修ではITの基礎やプログラミングは教えても、このような最新ITトレンドについて教えることはありません。
そんな彼らに「ITトレンドの最新の常識」と「ITビジネスに関わることの意義や楽しさ」についてわかりやすく伝え、これから取り組む自分の仕事に自信とやり甲斐を持ってもらおうと「新入社員ための最新ITトレンド研修」を昨年よりスタートさせました。今年も7月17日(火)と8月20日(月)に開催することにしました。
参加費も1日研修で1万円に設定しました。この金額ならば、会社が費用を出してくれなくても、志さえあれば自腹で支払えるだろうと考えたからです。
社会人として、あるいはIT業界人として、厳しいことや頑張らなくちゃいけないことも伝えなくてはなりません。でも「ITは楽しい」と思えてこそ、困難を乗り越える力が生まれてくるのではないでしょうか。
- ITって凄い
- ITの仕事はこんなにも可能性があるんだ
- この業界に入って本当に良かった
この研修を終えて、受講者にそう思ってもらえることが目標です。
よろしければ、御社の新入社員にもご参加いただければと願っております。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
SIビジネスとデジタル・トランスフォーメーションの関係を1冊の本にまとめました
「ビジネスのデジタル化」が注目されています。しかし、それをUberやAirbnbのようなデジタル・ビジネスを生みだすことだと捉えているとすれば、その本質を見誤っています。伝統的な仕事のやり方や組織のあり方をデジタル・テクノロジーで駆使して変革し、変化への即応力と破壊的競争力を手に入れることです。その先にあるのが「デジタル・トランスフォーメーション」です。
SIビジネスの前提となる物販や工数を前提とした収益モデルは難しくなります。新たな収益モデルへの転換が急務となります。
「デジタル・トランスフォーメーションの教科書」は、こんな現実を整理して、どのように向きあってゆけばいいのかを、わかりやすく解説したものです。
以下の内容を掲載しています。
- デジタル・トランスフォーメーションとは何か
- 様々な産業に変革を促すデジタル・トランスフォーメーション
- デジタル・トランスフォーメーションの定義
- デジタル・トランスフォーメーションを支えるテクノロジー
- SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション
- デジタル・トランスフォーメーション時代に求められる人材
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRAにてご覧頂けます。LiBRAメンバーの皆さんは、本書とともにそこで使用したチャートをロイヤリティ・フリーでダウンロード頂けます。
いま、私たちが向きあっている変化の波を冷静に読み取って下さい。そして、どのように向きあえばいいのかを答えを探して下さい。
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5月17日(木)よりスタートする次期「ITソリューション塾・第28期」の受付を開始致しました。つきましては、御社でのご参加をご検討頂ければ幸いです。
■デジタル・トランスフォーメーションを軸に講義を展開
デジタル・トランスフォーメーションをキーワードに、鍵を握るテクノロジーは何か、これからのビジネスがどのように代わるのか、それにどのように向きあえばいいのかを、分かりやすく丁寧に解説してゆくつもりです。また、100年人生の時代を迎え、この業界でどのように働き、自分の価値を高めてゆけばいいのかについても、考えてゆこうと思います。
■オンラインでも参加可能
第28期からは、参加登録された方はオンラインでも受講頂けるようになります。出張中、あるいは打ち合わせが長引いて間に合わないなどの場合でも大丈夫です。PCやスマホからライブ動画でご参加頂けます。
■ビジネスの現場でそのまま使える教材をロイヤリティフリーにて提供
SI事業者/ITベンダーの皆さんには、これからのビジネス戦略やお客様への魅力的な提案を考える材料を提供します。
情報システム部門の皆さんには、自分たちのこれからの役割やどのようなスキルを磨いてゆく必要があるのかを考えるきっかけをご提供します。
講義で使用する500ページを超える最新のプレゼンテーションは、オリジナルのままロイヤリティ・フリーで提供させて頂きます。お客様への提案、社内の企画資料、イベントでの解説資料、勉強会や研修の教材として、どうぞ自由に活用してください。
第27期に使用している講義資料(一部)については、こちらからご覧頂けます。第28期はさらに内容をブラッシュアップして、ご提供するつもりです。
古い常識をそのままにお客様の良き相談相手にはなれません。
「知っているつもりの知識」から「実践で使える知識」に変えてゆく。そんなお手伝いをしたいと思います。
日程 2018年5月17日(木)~7月25日(水) 18:30~20:30
回数 全11回
定員 80名
会場 アシスト本社/東京・市ヶ谷
料金 ¥90,000- (税込み¥97,200) 全期間の参加費と資料・教材を含む
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【お願い】早期に定員を超えると思われますので、まだ最終のご決定や参加者が確定していない場合でも、ご意向があれば、まずはメールにてご一報ください。優先的に参加枠を確保させて頂きます。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
「最新のITトレンドとこれからのビジネス」というタイトルの新入社員研修のためのプレゼンテーションを公開しました。よろしければご活用下さい。
内容は、以下の通りです。
- ITトレンドとサイバーフィジカルシステム
- サイバー・フィジカルシステムとデジタル・トランスフォーメーション
- ITインフラと仮想化
- サイバー・セキュリティ
- IoT(モノのインターネット)
- AI(人工知能)
- 開発と運用
- デジタルトランスフォーメーションとこれからのビジネス
- これからのビジネスに求められる人材
SI事業者やITベンダーで毎年行われている新入社員研修では、ITの基礎的な知識は教えているところはあっても、最新のトレンドやいまのビジネスがどうなっているのかを教えているところはあまりありません。しかし、自分たちの未来を託す彼らに40年前から変わらないコンピュータの基礎だけを教え、いまを伝えないのは片手落ちではないでしょうか。ITは日々進化し、役割も拡がっています。IoTやAIの進化、クラウドの普及と共に伝統的なビジネスのやり方を大きく変えてしまうデジタル・トランスフォーメーションも進行中です。
ビジネスの現場に彼らが立たされたとき、そんなことも分からないでは、お客様も不安になるでしょうし、何よりも新入社員本人が不安になってしまいます。
そんなことがないように、IoTやAI、クラウドと云ったこれからの当たり前を、その価値や可能性と共に正しく伝えなくてはなりません。合わせてITの大切さと大きな可能性を語り、この仕事のやり甲斐を伝えることは大切だと思っています。また同時に、物販や人月ビジネスの限界、それに変わるビジネス価値は何か、そのためにどのようなことを考え、どのような能力を身につけてゆかなければならないのかを正直に伝え、彼らに託す言葉を伝える必要もあるでしょう。
デジタル・トランスフォーメーションの時代を迎え、ITビジネスの本質がいま大きく変わろうとしています。こちらについては、近々「SIerのためのデジタル・トランスフォーメーションの教科書」をリリースする予定ですが、そういうことと合わせて、ITに求められる新しい期待とそれに応えてゆくためには、何をしなければならないかを、新入社員の時にしっかりと伝え、彼らに自覚と夢を持たせなくてはなりません。
そんな思いで作った教材です。
6月から7月にかけて、そんな新入社員のための「最新ITトレンド・1日研修」も開催しようと思っていますが、そのためのベースとなる教材です。
よろしければ、御社でもご活用下さい。
LiBRA 4月度版リリース====================
- 「ITソリューション塾」最新コンテンツを掲載しました!AIに関連した資料を充実させました。
- 膨大なプレゼンテーションの中から、ITソリューション塾で使用している厳選のプレゼンをテーマ毎に掲載しました。
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新たに掲載!「ITソリューション塾」最新コンテンツ
メインテーマ
- ITトレンドの読み解き方とクラウドの本質
- ソフトウェア化するインフラと仮想化
- クラウド時代のモバイルデバイスとクライアント
- IoT(モノのインターネット)
- AI(人工知能)
- データベース
- ストレージ
- これからのアプリケーション開発と運用
知っておきたいトレンド
- ブロックチェーン
- 量子コンピュータ
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ビジネス戦略編
- 【改訂】デジタル・トランスフォーメーションの定義 p.18
- 【改訂】デジタル・トランスフォーメーションを主導するクロスオーバー人材 p.21
- 【新規】加速する時代のスピードに対応できる人材 p.22
- 【新規】常にテーマや問いを発し続けられる人材 p.23
サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT
- 【新規】Amazonのデータ収集戦略 p.30
- 【新規】IoT通信:LPWAと他の通信方式の比較 p.34
- 【新規】IoT デバイスとしての自動車 p.96
- サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
- 【新規】人間は何を作ってきたのか p.10
- 【新規】人工知能の限界 p.11
- 【新規】「東ロボくん」の実力と代替可能な職業 p.12
- 【改訂】コレ1枚でわかる人工知能 p.13
- 【新規】機械学習の課題 p.80
- 【新規】転移学習 p.81
- 【新規】学習データと結果の関係 p.97
- 【新規】自動運転レベル p.118
- 【新規】富士通 Mobility IoT 2018(動画・事例紹介) p.120
開発と運用編
- 【新規】これからの開発や運用に求められるもの p.5
- 【新規】ITについての認識の変化が「クラウド×内製化」を加速 p.6
インフラ&プラットフォーム編
- 【新規】HTAPとは何か? p.229
- 【新規】5Gと他の通信方式 p.231