育成をプログラミングできているか
「うちの管理職連中は、部下の育成に熱意がない、というか理解がない。部下もまた、研修に"行かされる感"が強い。まあ、研修は罰ゲームみたいなもので、成績が悪い、うまくいかないから行かされると思っているようです。」
大手ソリューション・ベンダーの育成担当からこんなお話を伺った。人は、多くの場合、差し迫っていない限り、進んで行動を起こすことはない。研修もまた同様だ。
かつて、私が仕事をしていたIBMでは、年初に設定されるノルマはとてつもなくきついものだった。手持ちを積み上げたところで、2、3割が関の山で、あとの7割りは、自分の努力で何とかしなければならない。これはもう相当のプレッシャーだ。そこで、担当するお客様のことを徹底的に調べ、何を提案すれば売れるかを考え、計画し、気合いを入れて行動しなければならない。また、お客様のこと、製品のこと、業界のことを勉強しなければ、お客様からは相手にもされない。
大きな案件を獲得しなければ数字は達成できないから、経営層にアプローチできなければ仕事にならない。その能力も持たなくてはならず、そういう危機感に常にさらされていた。
また、マネージャーは専任で個人のノルマを持たなかった。部下の達成した数字の総和が自分の成績だった。部下の能力を高めなければ自分のノルマを達成できないわけだ。また、部下を落ちこぼれさせることはマネージャーにとっては、大変不名誉なことでもあった。また、部下を研修に行かせることは、上司の人事評価の対象となっていた。さらに部下が上司を評価するという制度もあり、学習の機会を与えてくれないとなると、上司への評価も厳しいものになる。
つまり、部下の能力を高めることは、自分の評価にとって死活問題だったわけだ。こういう両者の危機感があったからこそ、研修は大切な機会であると認識されていた。
結果として、研修に参加することへの意欲は高まる。意欲が高ければ、学習効果も高いわけで、結果として、能力の向上に寄与する。
SI事業者と関わる機会も多いが、このような仕組みを持っている企業は少ない。現実を見れば、ノルマは稼働可能な人数の積み上げを前提とし、前年度から少し上積みする程度を目標として設定する。数字は、日常の努力の延長線上であり、自分の能力を大幅に高める必要はない。稼働率を維持することが大切だから、研修は無駄な時間となる。
マネージャーは自らも個人の数字を持つプレイング・マネージャーだ。優先すべきは自分の成績だ。部下の育成もマネージャーのミッションではあるが、社内的には自分の成績達成が、高く評価される傾向にある。だから部下の育成については、「気持ちはあっても行動しない」という状況を生み出している。
組織の成績達成も、できない部下に任せるよりは自分でやった方が早いと考えがちで、部下の能力向上にモチベーションが働かない。結果として、研修や学習への取り組みはおろそかとなる。
何処の会社もIBMと同じことができるわけではない。これは長年培ってきた企業文化の所産であり、何処の会社でも同じことができるわけではない。ただ、人材の育成について、その必要性を日常に埋め込むことが必要であることは言うまでもない。
やはり経営トップがそのことの必要性をしっかり意識し、推進してゆかなければならない。現場が問題意識を持ち、それを経営者に説明、説得しなければならないようでは、だめだろう。これは企業文化の問題であり、それを築くのは経営者の責任だからだ。
研修を生業にするものにとっては、自分で自分の首を絞めるような話しだが、人を育てるのは組織であり、研修だけで人を育てることはできない。組織の仕組みとして育成をプログラミングすることが大切ではないだろうか。
5月17日(木)よりスタートする次期「ITソリューション塾・第28期」の受付を開始致しました。つきましては、御社でのご参加をご検討頂ければ幸いです。
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「最新のITトレンドとこれからのビジネス」というタイトルの新入社員研修のためのプレゼンテーションを公開しました。よろしければご活用下さい。
内容は、以下の通りです。
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- サイバー・セキュリティ
- IoT(モノのインターネット)
- AI(人工知能)
- 開発と運用
- デジタルトランスフォーメーションとこれからのビジネス
- これからのビジネスに求められる人材
SI事業者やITベンダーで毎年行われている新入社員研修では、ITの基礎的な知識は教えているところはあっても、最新のトレンドやいまのビジネスがどうなっているのかを教えているところはあまりありません。しかし、自分たちの未来を託す彼らに40年前から変わらないコンピュータの基礎だけを教え、いまを伝えないのは片手落ちではないでしょうか。ITは日々進化し、役割も拡がっています。IoTやAIの進化、クラウドの普及と共に伝統的なビジネスのやり方を大きく変えてしまうデジタル・トランスフォーメーションも進行中です。
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- 【新規】IoT通信:LPWAと他の通信方式の比較 p.34
- 【新規】IoT デバイスとしての自動車 p.96
- サービス&アプリケーション・先進技術編/人工知能とロボット
- 【新規】人間は何を作ってきたのか p.10
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- 【新規】富士通 Mobility IoT 2018(動画・事例紹介) p.120
開発と運用編
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インフラ&プラットフォーム編
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