【図解】コレ1枚でわかる限界費用ゼロ社会
IoTの進化は、一企業のビジネスモデルや生産性を向上させるだけでなく、資本主義経済そのもののルールを書き換えるほどのマクロなインパクトを持っています。そのパラダイムシフトを象徴する概念が、経済思想家ジェレミー・リフキンが提唱した「限界費用ゼロ社会」です。
「限界費用」という経済学の用語は、「製品やサービスを、追加で1単位生み出すためにかかるコスト」を指します。例えば、紙の本を1冊追加で印刷するには、紙代やインク代、製本代という限界費用が必ず発生します。しかし、電子書籍のデータであれば、10人目の読者にも100万人目の読者にも、データをコピーして配信する追加コスト(限界費用)はほぼ「ゼロ」です。インターネットは、情報やメディアの分野でこの限界費用ゼロの世界をすでに実現しました。
そして今、IoTとAIの進化によって、デジタルデータの世界だけでなく、物理的な「モノ」や「エネルギー」の世界でも、限界費用がゼロに近づこうとしています。
そのメカニズムの鍵は「稼働率の極限の最適化」です。例えば、自家用車の稼働率は平均して5%以下だと言われています。残りの95%の時間は駐車場で眠っているだけの、非常に無駄の多い資産です。しかし、IoTで車がネットに繋がり位置情報や稼働状況がクラウドで管理され、AIが需要と供給を完璧にマッチングできるようになればどうなるでしょう。カーシェアリングや自動運転タクシーとして、1台の車を数十人で使い倒すことが可能になります。
車体を製造する初期費用(固定費)はかかりますが、誰かが「追加で1回、車で移動する」ための追加コスト(限界費用)は、極限まで下がります。
これはエネルギー分野でも起きています。太陽光や風力といった再生可能エネルギーの発電設備も、一度設置してしまえば、太陽や風から電気を追加で生み出すコストはほぼゼロです。IoTを使って個人宅の余剰電力を地域全体で融通し合えば、巨大な発電所に依存せずとも、エネルギーをタダ同然でシェアできる社会が近づいています。
限界費用がゼロに近づく社会では、「モノを所有する」ことの経済的合理性が薄れ、「必要な時に必要なだけ利用する(シェアリングエコノミー)」ことが主流になります。IoTを一過性のバズワードやITツールの導入として捉えるのではなく、このような社会構造や経済ルールの根底からの変化をもたらす「変革のトリガー」として俯瞰的視点を持つことが、次世代のビジネスを構想する上で不可欠なのです。
このたび、拙著『AI実践ドリル30日チャレンジ〜仕事にすぐ効くAI活用(日経BP刊)』が、出版されました。
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