【図解】コレ1枚でわかる6G通信とテラヘルツ波テクノロジー
私たちの生活やビジネスの基盤として定着しつつある5G(第5世代移動通信システム)ですが、すでに世界中の研究機関や企業では、その次を見据えた「6G」の研究開発が本格化しています。2030年代の商用化が見込まれる6Gは、5Gの単なる速度向上の延長線上にある技術ではありません。その中核となるのが、「テラヘルツ波(THz波)」と呼ばれる未開拓の周波数帯の活用です。
電波は、周波数が高くなるほど一度に運べる情報量が多くなるという性質を持っています。5Gではミリ波と呼ばれる高い周波数帯を利用して高速化を実現しましたが、6Gで利用が想定されているテラヘルツ波は、ミリ波よりもさらに周波数が高く、「電波」と「光」の中間のような性質を持っています。これにより、通信速度は5Gの数十倍から100倍にあたる「1 Tbps(テラビット毎秒)」という驚異的な超高速通信が可能になると期待されています。
しかし、テラヘルツ波の活用には大きな物理的ハードルが存在します。それは「直進性が非常に高い」という点です。光に近い性質を持つため、壁や建物、さらには人体や雨滴といったわずかな障害物に遮られるだけで、通信が途絶えやすくなってしまうのです。従来の電波のように障害物を回り込んで届くことが難しいため、これを補う新しい技術が不可欠です。現在、通信の死角をなくすために、電波の反射方向をプログラミングで人工的にコントロールできる「RIS(再構成可能インテリジェント表面)」と呼ばれる特殊な反射板や、新しいアンテナ技術の開発が急ピッチで進められています。
こうした課題を乗り越えた先には、これまでの常識を覆す未来が待っています。最大のインパクトは、「通信とセンシングの融合(ISAC:Integrated Sensing and Communication)」と呼ばれる概念の実現です。テラヘルツ波はその直進性の高さゆえに、周囲の物体に当たって跳ね返ることで、レーダーのように極めて高い精度でモノの形や位置、人間の細かな動きまでをスキャンすることができます。つまり、通信ネットワークそのものが、巨大で高精度なセンサーの役割を果たすようになるのです。
このISACが実現すれば、街中にカメラを設置しなくても、空間内のあらゆる動態データをリアルタイムで収集できるようになります。現実世界と全く同じ環境を仮想空間に再現する「デジタルツイン」において、データのタイムラグや死角が劇的に減少し、真の意味で「空間全体がデジタル化される」基盤が整います。6Gとテラヘルツ波は、スマートフォンを便利にするだけでなく、現実世界とデジタル世界を完全に融合させる、新たな社会インフラとなるのです。
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