提案活動を成功させる5つの問いかけ
- 来期の事業戦略について報告期限が迫っている。
- 新規事業の計画を説明しなければならない。
- アカウント・プランのレビューが数日後に控えている。
そんな時期を迎えている方もいらっしゃるでしょう。また、その説明を受けて評価し、アドバイスしなければならないマネージメントや経営者もいらっしゃるかと思います。そして、
- 「それは、どこかで実績があるの?」
- 「そんな数字じゃ、全然足りない!」
- 「リスクの検討が甘い。もし失敗したらどうするんだ!」
もし、こんなおざなりのコメントしか言えないとしたら管理者失格です。
事業戦略も新規ビジネスも、お客様への提案も、成功させることが目的です。失敗の可能性を探し、当事者の意欲を削ぐことではありません。ましてや、保身のためにこんなコメントをしているとしたら、残念きわまりない話しです。
一緒になって成功の可能性を探り、成功のために解決すべき課題を探ることが、本来の目的であることを肝に銘じておきたいものです。
では、成功の可能性を高めるためには、どんな観点で議論すべきなのでしょうか。次のような5つの問いかけをしてみてはどうでしょう。
どんな「困った」を持った人が、お客様ですか?
「IoTでうちも何かできないのか?」
この手の問いかけにはほとほと困ります。IoTであれ、AIであれ、それは何かを解決する手段です。何に困っているのか、その「困った」を解決することが、どれほど価値あることなのかが、最初に明らかにすべきことです。
IoTやAIが有効な手段であれば、活用すればいいわけです。また、IoTやAIの登場で、これまで解決できなかった「困った」が解決できるのであれば、これもまた、ビジネスの可能性が開けます。ただ、全ては「困った」があることがビジネスの起点と言えるでしょう。
ただ、それが、「誰かが言っていた」や「世間では話題になっている」、「偉い先生がそんな話をしていた」ではなく、その「困った」を抱えている具体的な個人の存在を特定できる、あるいは、自分が「困った」を実感していなければ、需要はありません。自分の「困った」を実感している人から、解決策を求められている場合もあるでしょう。
「困った」があることと、その解決を求めている「誰か」が具体的に結びついているかどうかが、ビジネスの起点となります。
どんなソリューションですか?
「ソリューション」とは「解決策」であって、特定の商材ではありません。例えば、高齢化する農業の現場では、畑や田んぼの見回りは大変な重労働です。そこで、畑や田んぼにセンサーを配置し、気温や湿度、生育状況などの異常を検知したら直ちに通知するサービスを提供しようと考えたとします。確かに、畑や田んぼの見回りの回数は減らせるかもしれませんが、足腰の自由がきかない高齢者がその通知を見ても何もできないとすれば、このようなサービスに需要はありません。このようなサービスは、解決策を提供している訳ではありませんから「ソリューション」とは言えません。では、どうすればソリューションになるのでしょうか。
例えば、「異常を検知したら直ちに現地に赴き、必要な措置をおこなうサービス」であれば、それはソリューションです。そこには、人手を派遣するというシステムではない手段も組み合わせることで、お客様の課題を解決するソリューションになるのです。
お客様が必要としていることは、課題を解決することであって、手段(または、その一部)を手に入れることではなく、「困った」を無くすことです。そのためにすべきことは何かを明らかにし、その全てを満たす組合せを作り提供すること、すなわち「ソリューション」の提供ができて、はじめてビジネスのチャンスが与えられるのです。
「お金を出してでも手に入れたい/使いたい」とお客様が思える根拠はなんですか?
自分ではできない。あるいは、膨大なコストや時間がかかる。しかし、お金を払えば、あっという間に解決してしまう。しかも、妥当な金額でできるとすれば、お金を払ってでも手に入れたいと思うはずです。
- 一人で3日かかることだけど、100万円払えばやってもらえる
- この仕事の効率は3パーセントアップするが、他の仕事が倍になる
- 必要性は明確なシステムを売上10億円の企業に2億円で提供する
これでは、「お金を払ってでも」とは思いません。
いくらだったら払えるのかを明らかにすることです。その根拠を論理的に証明できることです。それがなければ、その企画や提案がどれほど「よくできた」内容でも、ビジネスにはできないでしょう。
他社にはできない、自分たちの「特別」は何ですか?
- 他社にはすぐにまねができない、自分たちならではの「特別」はあるでしょうか。特許で守られている。
- 膨大な設備投資が必要で、対応には相当の時間がかかる。
- それをやるために必須の有資格者を相当人数抱えている。
こういう明確な「特別」があれば、ビジネスの決め手になるでしょう。
- 同じサービス内容でコストは半額
- この業界では長年の実績があり、圧倒的な信頼がある。
- 長年のノウハウの蓄積がある。
AIやクラウドに代替される可能性はありそうですが、いち早くスタートを切ることで、一定期間の「特別」を担保できるかもしれません。
AWSが魅力的であることは、コストではありません。他の追従を許さないサービスの品揃えと、その優位を維持し続けるために新しいサービスを提供し続ける、圧倒的な頻度とスピードが、彼らの「特別」となっています。
何が自分たちの絶対的な「特別」か。それを明確にすることです。
実現するための課題は、なんですか?
「自分たちに何ができるだろうか」を考え、「それを使って何かできることをやろう」という発想は、失敗の王道です。なぜなら、お客様は自分の「困った」を解決してもらいたいのであって、あなたの「できることの提供」を求めているわけではないからです。
「お客様の課題を解決するためにすべきことは何か」を明らかにすることです。すべきことを実現するためには、自分たちに「できること」もあれば、「できないこと」もあるでしょう。「できること」に悩む必要はありません。「できないこと」は何かをはっきりさせ、それを解決し、「できること」と組み合わせることができて、はじめて「すべきこと」が実現するのです。
ここでいう「課題」とは、「すべきこと」が実現するために解決すべきこととなります。これを明確にし、その課題を解決するための方策を考えることが、ビジネスを成功させる筋道です。
失敗のリスク挙げ連ねて「すべきこと」を葬るのではなく、どうすればできるかを分析的に捉え、その実現に向けた知恵を絞ること。
そんな視点で、事業戦略や新規ビジネス、お客様への提案にいて、考え、議論してみては如何でしょうか。
ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA
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・デジタル・トランスフォーメーションについて大幅に解説を増やしました。
・【講演資料】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション を新規に掲載しました。
・量子コンピュータについて、チャートの他に解説文を作りました。
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追加・更新の詳細は以下の通りです。
プラットフォーム&インフラ編
【改訂】サーバー仮想化とコンテナ p.94
【新規】ビジネスとしてのランサムウェア p.113
ビジネス戦略編
【改訂】デジタル・トランスフォーメーションの意味 p.4
【新規】デジタル・トランスフォーメーションとは何か p.5
【新規】「限界費用ゼロ社会」の実現を支えるデジタル・トランスフォーメーションp.6
【新規】デジタル・トランスフォーメーションの全体像 p.7
【新規】デジタルトランスフォーメーションとCPS p.8
【新規】デジタル・トランスフォーメーションを支えるテクノロジー p.9
【新規】デジタル・トランスフォーメーション実現のための取り組み p.10
【新規】デジタル・トランスフォーメーションをとは p.11
【新規】デザイン思考・リーン・アジャイル・DevOpsの関係 p.16
【新規】SIビジネスとして注力すべきテクノロジー(解説付き) p.17
【新規】デジタルトランスフォーメーション時代に求められる能力 p.20
サービス&アプリケーション・先端技術編/IoT
【新規】機能階層のシフト p.46
サービス&アプリケーション・先端技術編/人工知能とロボット
【新規】手順が決まった仕事は機械に置き換わる p.18
【新規】深層学習の学習と推論 p.52
【新規】「AIカント君」の可能性について p.92
開発と運用編
【新規】DockerとKubernetesの関係 p.45
【新規】システム開発のこれから p.62
テクノロジー・トピックス編
【新規】スマート・コントラクト p.53
【新規】量子コンピュータについての解説文 p.67-68
ITの歴史と最新トレンド編
*変更はありません
クラウド・コンピューティング編
*変更はありません
サービス&アプリケーション・基本編
*変更はありません
【講演資料】SIビジネスのデジタル・トランスフォーメーション を新規に掲載しました。