オルタナティブ・ブログ > ITソリューション塾 >

最新ITトレンドとビジネス戦略をわかりやすくお伝えします!

【図解】コレ1枚でわかるIoTがビジネス・フレームワークであること

»

「うちもIoTで何かできないのか?」

そんな社長のひと言に、さてどうしたものかと頭を抱えてはいないでしょうか。そこで、IoTとは何かを調べてはみたものの、はっきりとした定義は見つかりません。そもそも何がIoTなのかがよく分かりません。それも当然のことで、IoTというテクノロジーはないからです。

スクリーンショット 2017-03-31 6.52.25.png


IoTとは、デジタル・データを活用したビジネス課題を解決するためのフレームワーク

このように捉えてみては如何でしょう。

これまでは、人間の知見に頼り判断していたところを、センサーで集めたデータでリアルタイムに「事実」を捉え、機械学習や統計的な分析で最適解を求めるやり方に置き換えようというのです。そして、そこで得られた最適解でアプリケーションを動かし、現実世界にサービスを提供します。その結果生じた変化が再びセンサーによってデジタル・データとして集められます。言うなれば、現実世界とサイバー世界が一体となって、リアルタイムで改善活動を繰り返しているような仕組みが、IoTなのです。このような仕組みは、サイバー・フィジカル・システム(Cyber-Physical System)とも呼ばれています。

このように捉えると、IoTといわれるものが、様々なテクノロジーの組合せによって実現することが分かります。また、どのようなビジネス課題を解決するかによって、使われるテクノロジーの組合せがまるで違ったものになってしまいます。

例えば、土木工事の自動化サービスを考えれば、次のような組合せになるでしょう。

解決したいビジネス課題

  • 土木工事需要の拡大
  • 熟練作業員の高齢化
  • 困難を極める若者人材確保

データ収集

  • ドローンによる工事現場の空中撮影(カメラ)
  • 建設機械の高精度位置情報(GPS)
  • デジタル化された施工情報(3次元CAD等)

データ解析

  • 平面画像から3次元立体図面を合成
  • 土量分析・作業分析
  • 工程・工期シミュレーション

データ活用

  • 建設機械の自動制御・作業支援
  • 工程変更支援
  • ドロー測量により進捗把握

ビル設備管理サービスになれば、この組合せは変わり、自律走行車になれば、それもまた違うものになります。どのようなデータを集めたいかにより、使うセンサーも方法も変わります。何を知りたいかにより解析のためのアルゴリズも変わります。当然、アプリケーション・サービスも様々です。

このように見てゆくと、「IoT=テクノロジー」と捉えることには違和感を感じざるを得ません。「IoT=テクノロジーを活かしたビジネス・フレームワーク」と言い換えてみてはどうでしょう。

スクリーンショット 2017-03-31 7.11.47.png

この視点に立つと、IoTには2つのビジネスの可能性が見えてきます。1つは、IoTというビジネス・フレームワークを実現するためのプラットフォームや部品となるソフトウェア/ハードウェアを提供するビジネス。もうひとつは、IoTというビジネス・フレームワークに基づくアプリケーション・サービスの提供です。

前者はデバイスの認証やデータの管理・保管、分析サービスの提供などのフラットフォーム、LPWAなどの通信回線、センサーや組み込みモジュールなどのハードウェアとなります。この場合は、アプリケーション開発やサーズ提供者が顧客となります。後者は、土木工事の自動化サービスやビル設備管理サービス、ジェットエンジンのレンタルサービスなどとなります。この場合は、自らがサービス事業者となり、顧客はそのサービスの利用者となります。

サービスを開発するビジネス、つまり従来からのシステム・インテグレーションもビジネスにはなります。しかし、次の点で従来のシステム・インテグレーションとは異なります。

  • IoTのフレームワークでビジネスを開発するお客様、つまり事業部門が顧客となること
  • これまでにはないビジネスの仕組みを作るわけですから、お客様の要求通りにシステムを作ることはできず、お客様と一緒になって、何をするかを考えなければならないこと
  • サービスの提供期間を通じて事業環境の変化に臨機応変に対応し、お客様の事業の成果に直接貢献するための取り組みが必要になること

「うちもIoTで何かできないのか?」

という天の声に、どのように応えようというのでしょうか。そのあたりから考えてみる必要がありそうです。

【受付開始】ITソリューション塾・第25期

次回の日程が5月16日(火)からに決まりました。詳細日程や正式なお申し込みにつきましては、こちらをご覧下さい。

第25期は、IoTやAI、クラウドといったテクノロジーの最前線を整理してお伝えすることはもちろんのこと、ビジネスの実践につなげるための方法についても、これまでにも増して充実させてゆきます。
また、アジャイル開発やDevOps、それを支えるテクノロジーは、もはや避けて通れない現実です。その基本をしっかりとお伝えするだけでなく、ビジネスに結びつけてゆくための実践ノウハウも、第一人者の講師をお招きし、お伝えします。
さらにIoTやモバイルの時代となり、サイバー・セキュリティはこれまでのやり方では対応できません。改めてセキュリティの原理原則に立ち返り、どのような考え方や取り組みが必要なのか、やはりこの分野の第一人者にご講義頂く予定です。

さて、2009年から今年で8年目となる「ITソリューション塾」の成り立ちについて、少しだけ紹介させて頂きます。

「自社製品のことは説明できても世の中の常識は分からない」

当時、SI事業者やITベンダーの人材育成や事業開発のコンサルティングに関わる中、このような人たちが少なくないことに憂いを感じていました。また、自分たちの製品やサービスの機能や性能を説明できても、お客様の経営や事業のどのような課題を解決してくれるのかを説明できないのままに、成果をあげられない営業の方たちも数多くみてきました。
このようなことでは、SI事業者やITベンダーはいつまで経っても「業者」に留まり、お客様のよき相談相手にはなれません。この状況を少しでも変えてゆきたいと始めたのがきっかけで、既に1500名を超える皆さんが卒業され、昨年からは大阪と福岡でも開講しています。

ITのキーワードを辞書のように知っているだけでは使いもものにはなりません。お客様のビジネスや自社の戦略に結びつけてゆくためには、テクノロジーのトレンドを大きな物語や地図として捉えることです。そういう物語や地図の中に、自分たちのビジネスを位置付けてみることで、自分たちの価値や弱点が見えてきます。そして、お客様に説得力ある言葉を語れるようになるのだと思います。

ITソリューション塾は、その地図や物語をお伝えすることが目的です。

ご参加をご検討頂ければと願っております。

最新版(4月度)をリリースしました!

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA

LIBRA_logo.png

最新版【2017年4月】をリリースいたしました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*クラウドについてのプレゼンテーションをインフラ編から独立させました。
*使いやすさを考慮してページ構成を変更しました。
*2017年度新入社員研修のための最新ITトレンドを更新しました。
*新しい講演資料を追加しました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
クラウド・コンピューティング (111ページ)
*「インフラとプラットフォーム編」より分離独立
【新規】クラウドによるコスト改善例 p101-108

開発と運用(68ページ)
【新規】管理運用の範囲 p.37
【新規】サーバーレスの仕組み p.40

インフラとプラットフォーム(211ページ)
*クラウドに関する記述を分離独立
【新規】多様化するデータベース p.127
【新規】クラウドデータベース p.156-158

IoT(101ページ)
【新規】IoTはテクノロジーではなくビジネス・フレームワーク p.16
【新規】LPWA主要3方式の比較 p.52

人工知能(103ページ)
【新規】自動化と自律化が目指す方向 p.14
【新規】操作の無意識化と利用者の拡大 p.21
【新規】自動化・自律化によってもたらされる進歩・進化 p.22

テクノロジー・トピックス (51ページ)
【新規】RPA(Robotics Process Automation) p.17

サービス&アプリケーション・基本編 (50ページ)
*変更はありません

ビジネス戦略(110ページ)
*変更はありません

ITの歴史と最新のトレンド(14ページ)
*変更はありません

【新入社員研修】最新のITトレンド
*2017年度版に改訂しました

【講演資料】アウトプットし続ける技術〜毎日書くためのマインドセットとスキルセット
女性のための勉強会での講演資料
 実施日: 2017年3月14日
 実施時間: 60分
 対象者:ITに関わる仕事をしている人たち

【講演資料】ITを知らない人にITを伝える技術
拙著「未来を味方にする技術」出版記念イベント
 実施日: 2017年3月27日
 実施時間: 30分
 対象者:ITに関わる仕事をしている人たち

詳しくはこちらから

LIBRA_logo.png

新刊書籍のご紹介

未来を味方にする技術

これからのビジネスを創るITの基礎の基礎

  • ITの専門家ではない経営者や事業部門の皆さんに、ITの役割や価値、ITとの付き合い方を伝えたい!
  • ITで変わる未来や新しい常識を、具体的な事例を通じて知って欲しい!
  • お客様とベンダーが同じ方向を向いて、新たな価値を共創して欲しい!
人工知能、IoT、FinTech(フィンテック)、シェアリングエコノミ― 、bot(ボット)、農業IT、マーケティングオートメーション・・・ そんな先端事例から"あたらしい常識" の作り方が見えてくる。2017年1月6日発売
斎藤昌義 著
四六判/264ページ
定価(本体1,580円+税)
ISBN 978-4-7741-8647-4 Amazonで購入
未来を味方にする技術

人工知能、IoT、FinTech(フィンテック)、シェアリングエコノミ― 、bot(ボット)、農業IT、マーケティングオートメーション・・・ そんな先端事例から"あたらしい常識" の作り方が見えてくる。

Comment(0)