自分たちの見えているものは先が見えている。見えないものに目をこらしてこそビジネスは生まれる
「私たちのビジネスはお客様の3年後に責任を持たなければなりません。」
新入社員研修で「最新のITトレンドとビジネス戦略」という講義を行っています。その冒頭で彼らに伝える言葉です。
「私たちが提案し、提供するシステムはお客様の3年後のビジネスを支えています。そのシステムがその時代のニーズにそぐわないとすれば、なぜこんなシステムを提案したのかと言われるでしょう。皆さんはお客様からの信頼を失うことになります。」
ビジネスが将来にわたって成長し、その成長の傾斜を維持するためには、今必要とされることに対処し、いまのテクノロジーで実装するだけでは実現できません。その先のニーズに応え、新しいテクノロジーを提供する取り組みが必要になるはずです。
いま、IT業界は、プログラマーやSEの不足が深刻化しつつあります。それは、リーマンショックの煽りで、本来やるべき開発をこれまで控えてきたことへの反動であり、マイナンバーや大手銀行の勘定系システム構築に関わる大型案件の増加にあります。
それとても、今年から来年に書けて需要の尽きる話です。その後は、人余りになり、収益を圧迫し、短期的には、SI事業者に大きな負担を強いることになるかもしれません。しかし、中長期的に考えれば、生産年齢人口の減少が、この余剰人口を吸収してくれる可能性も否定できません。しかし、それは、同時に、人月ビジネスの存続をますます難しくすることになります。
いずれにしても、これまでの収益モデルは成り立たなくなることを覚悟しなければなりません。これは決してIT業界だけの問題ではなく、飲食業や建設業のような労働集約型の産業は、同様の課題を抱えているのです。
しかし、こういう課題に目を向ければ、そこに解決すべきテーマがあるとも言えます。そこにソリューションを提供できれば、ビジネスになるはずです。
「人間の手が導かなくとも杼(ひ)が布地を織り上げ、ばちが竪琴をかき鳴らすなら、親方はもう職人がいらなくなるだろう。」
米MITの研究者達が著した『機械との競争』という本の冒頭に書かれていたアリストテレスの言葉です。この本には次のようなことが述べられています。
「経済の成長が雇用の拡大を生みだしていない。それはITやロボットなどのテクノロジーが、人の雇用を吸収してしまうからだ。」
移民を受け入れ、人口の増加している米国は、それに見合う雇用を創出できないでいるというのです。これは、米国にあっては、大きな社会問題であり、ネガティブに捉えるのは、当然のことかもしれません。しかし、少子高齢化が進む日本では、むしろ大きな成長のチャンスなのかもしれません。つまり、我が国では、ロボットやAIなど、人の労働力を機械に置き換えることへの需要は、今後確実に増えてくるはずです。プログラミングやシステム運用もまた、徹底した効率化や自動化をすすめなければ、需要を満たせなくなるかもしれません。「機械との競争」ならぬ、「機械との共創」が、日本の成長を支えてくれることになるはずです。
それは、同時に人間のやるべき役割を変えてゆくことを求められるでしょう。そして、ビジネスのあり方も変わり、収益構造も変えてゆかなければなりません。そして、仕事についての価値観をも変えてゆくことが求められるでしょう。
「そんなことができる人間なんか、うちにはいないよ」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。しかし、そんな人は、どこにもいないのです。だからこそ、チャンスなのです。
COBOL全盛だった時代、JavaやWeb開発ができる人材など、いなかったと同じように、それを追いかけてこそ、人は育つのです。
自分達が見えているものなんて、もはや先が見えています。だからこそ、見えていないものに目をこらし、見えるようにならなければ、そのときが来たときに何も見えないままで、右往左往するだけでなのです。
知っているつもりの知識から、実戦で使える知識へ
まだ、残席あります!
- 5月17日(火) 18:30より
- 毎週2時間 全11回
- 定員80名
- クラウド・コンピューティングと仮想化との違い、または両者の関係を説明してください。
- 「セキュリティ対策」という言葉がありますが、そもそも何をすることなのでしょうか。その目的と具体的な対策について説明して下さい。
- IoTとビッグデータ、アナリティクスの関係を説明してください。
- RDB(リレーショナルデータベース)が広く利用されている一方で、NoSQL(Not Only SQL)と言われるデータ管理の仕組みが注目され、利用が拡大しています。その理由とNoSQLの適用領域について説明してください。
- アジャイル開発やDevOpsが注目されています。それはどのような理由からでしょうか。従来までのやり方と何が違い、あなたのビジネスはどのような変化を求められるかを、その理由とともに説明して下さい。
あなたは、以上の質問に答えられるでしょうか。
「お客様に相談しお願いする存在ではなく、お客様に相談されお願いされる存在になること」
これは、私なりにイメージする営業やエンジニアのあるべき姿です。そのためには、
「お客様の相談に応えられる体系的な知識とそれを説明できる能力を持つこと」
これに尽きると思います。ですから、こういう質問に答えられることは、お客様に相談されるための前提であり、そういう安心感というか、信頼感があるからこそ、ITに関わることならまずは相談される存在になれるのです。
もちろん、これ以外にも様々な能力の総合力が必要であることは言うまでもありませんが、ITを生業にしている以上、この点においてお客様以上の知識と説明できる能力がなければ、プロとしての基本をクリアできているとは言えません。
自分商材について説明できても、他社の商材や世の中のITの常識のなかで、「自社の商材の位置づけを説明できない」
それで、お客様はあなたに相談するでしょうか。
「知ってるつもり知識から、説明できる知識へ」
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*定員に達しました締め切りとなります。もし、まだ決定ではないけれど、ご参加のご意向がありましたら、まずはメールにてお知らせください。参加枠を確保させて頂きます。
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さて、この教科書を作った理由ですが、
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【最新版リリース】ITのトレンドとビジネス戦略・最新版【2016年4月】
【インフラ・プラットフォーム編】(267ページ)
- PaaSの内容を更新しました。
- APIエコノミーについての解説を追加しました。
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【サービス・アプリケーション編】(218ページ)
- IoT
- M2M/IoTの発展経緯とCSP(Cyber-Physical Systems)を訂正しました。
- 機器のイノベーションとビジネス戦略を追加しました。
- スマートマシン
- スマートマシンとは何かを簡単に説明するチャートを追加しました。
- 人工知能と機械学習を追加しました。
- 人工知能の4レベルを追加しました。
- ニューラルネットワークの原理を追加しました。
- 開発と運用
- アジャイルとDevOpsの関係について訂正および新たなチャートを追加しました。
- これからのサイバーセキュリティ対策について新たなチャートを追加しました。
【ビジネス戦略編】(91ページ)
- ポストSI時代に求められる人材について内容を改訂しました。
- 常識崩壊の時代を追加しました。
- ITとの正しい付き合い方を追加しました。
閲覧は無料です。ダウンロード頂く場合は会員登録(500円/
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まずは、どのような内容かご覧頂ければ幸いです。
「ポストSIビジネスのシナリオをどう描けば良いのか」
これまでと同じやり方では、収益を維持・拡大することは難しくなるでしょう。しかし、工夫次第では、SIを魅力的なビジネスに再生させることができます。
その戦略とシナリオを一冊の本にまとめました。
「システムインテグレーション再生の戦略」
- 歴史的事実や数字的裏付けに基づき現状を整理し、その具体的な対策を示すこと。
- 身の丈に合った事例を紹介し、具体的なビジネスのイメージを描きやすくすること。
- 新規事業を立ち上げるための課題や成功させるための実践的なノウハウを解説すること。
また、本書に掲載している全60枚の図表は、ロイヤリティ・フリーのパワーポイントでダウンロードできます。経営会議や企画書の資料として、ご使用下さい。
こんな方に読んでいただきたい内容です。
SIビジネスに関わる方々で、
- 経営者や管理者、事業責任者
- 新規事業開発の責任者や担当者
- お客様に新たな提案を仕掛けようとしている営業
- 人材育成の責任者や担当者
- 新しいビジネスのマーケティングやプロモーション関係者
- プロジェクトのリーダーやマネージャー
往々にして、私たちは、イノベーションを「"新しい技術"による革新」と捉えがちです。しかし、本来の意味に立ち返れば、"新しい技術"そのものが不可欠なのではなく、
「"新しい技術"も含め、既存の技術や仕事のやり方などの様々な要素を、これまでとは違う視点で捉え、新しい組合せにより変革を実現すること」
そう捉えるべきでしょう。
ITビジネスに置き換えて考えれば、
「これまでの仕事のやり方を、より強力なITという蒸気機関に置き換えて、業務やビジネスの課題を解決するためのテクノロジーと業務プロセスの「新結合」を実現すること」
これが、イノベーションと言うことになります。こう考えてみると「ソリューション」が目指すもの、そのものではないでしょうか。
新しいテクノロジーそのものを生みだすことも「イノベーション」と言われます。最近話題の人工知能や量子コンピューターなど、かつては想像もつかなかったことが実現しようとしています。クラウドやモバイルもまた、そういうテクノロジー・イノベーションの成果と言えるでしょう。しかし、このようなテクノロジー・イノベーションを生みだすことは、容易なことではなく、誰にでもできることではありません。
一方、そこで生みだされた成果をも組み入れ、ビジネス・プロセスやビジネス・モデルの新結合、すなわち、ビジネス・イノベーションを生みだすことは、誰にでもチャンスがあります。
「JINS PC」をご存知の方は多いと思います。発売から2年で、販売累計本数300万本を突破したパソコン用メガネです。このビジネスの成功は、まさにビジネス・イノベーションにありました。
これまで、メガネの需要は、「目の悪い人」に限られていました。この常識を打ち破り、「目の健康な人」、すなわち「PCを使う全ての人」に、市場を拡げたのです。
必ずしも、最先端のテクノロジーが使われているわけではありません。しかし、既存の技術をうまく使い、新しい市場との「新結合」を実現するビジネス・イノベーションを生みだしたことが、この成功の理由と言えるでしょう。
ビジネス・イノベーションへの取り組みを怠ってはいないでしょうか。自らの新規事業のためだけではなく、お客様のビジネス・イノベーションをお手伝いすることにも、私たちは役割を果たしていかなければなりません。これこそが、「ソリューション・ビジネス」の目指すものだと思っています。
機器やソフトウエア・パッケージを提供しているだけでは、「ソリューション・ビジネス」とは言えません。お客様の仕事を深く考察し、自らの商材を既存の仕事の中に持ち込み、「新結合」をもたらすことで、新しい価値を生みだすことが、「ソリューション・ビジネス」のあるべき姿なのです。
innovationの語源を調べると15世紀のラテン語innovatioに行き着きます。inは「中へ」、novaは「新しい」、これらを組み合わせて、自らの内側に新しいものを取り込むという意味になるのだそうです。お客様に対して、その役割を果たすことができてこそ、私たちは、ソリューションを提供できたと言えるのです。
「自分達はお客様にイノベーションを提供できているだろうか。」
市場の先行きが不透明さを増す中、この言葉を真摯に問い続けてゆくことが、今までにも増して求められているように思います。