【図解】コレ1枚でわかる4つのアーキテクトと経営者の役割
ITを活かした経営や事業を行うためには「アーキテクト」の存在が不可欠です。「アーキテクト」とは、建築家、設計者という意味で、建築現場で作業する大工とは違い、仕組みや構造の設計、必要な機能や技術の選定、施工会社の技術を目利きするといった仕事を担います。ITの分野でも同様の役割を担う人が必要になります。
もはやITは「一から作る」時代ではありません。やりたいことを実現するための様々な機能が、クラウド・サービスやパッケージ・ソフトウエアとして提供されています。また、システム開発の生産性を劇的に高めるツールや自動化の仕組みも充実してきました。それらを目利きし、自分たちのやりたいことをいち早く実現するための組合せを作ることが大切になってきます。その役割を担うのがアーキテクトです。
作ることの実務は、外部の専門家たちに任せることもできます。しかし、「どのようなビジネスを作るか」そして、それを「どのようなテクノロジーをつかって実現するか」を決めるのは、経営や業務を理解したアーキテクトの役割です。
ここでは、どのようなアーキテクトが必要となるかを整理します。また、ITを活かすための経営者の役割についても考えます。
ビジネス・アーキテクトとテクノロジー・アーキテクト
「ITに精通した経営や業務の専門家」がビジネス・アーキテクトです。これに対し、「経営や業務に精通したITの専門家」がテクノロジー・アーキテクトです。どちらも「役割」ですから、同じ人が両方の役割を果たせればそれに越したことはありませんが、現実には簡単なことではないでしょう。ならば、経営や事業部門にビジネス・アーキテクトを、情報システム部門にテクノロジー・アーキテクトを配置することが現実的かもしれません。
ビジネス・アーキテクトは社員として、自社の経営や業務に精通し、社内の人たちと相談や交渉ができる人材であることが前提です。そんな人材にITについての専門的知識を学ばせることです。プログラミングやシステム構築のスキルを持つ必要はありません。詳細な製品知識も不要です。ただ様々なテクノロジーの価値や実践事例、テクノロジーやデジタル・ビジネスのトレンド、その活用方法について知っておかなければなりません。また、その変化を追いかけながら、自分たちのビジネスにITをどのように活かせばいいのかを考えることが役割です。
テクノロジー・アーキテクトも社員であることは望ましいのですが、外部の専門家に協力を仰ぐことも可能です。彼らはITの専門家であることが前提です。テクノロジーの最新トレンドに精通し、ITベンダーの取り組みや製品、サービスについても精通しておく必要があります。プログラミングやシステム構築についての実践経験があり、一定レベル以上のスキルは持っている必要があります。そんなテクノロジーについて体験的で実践的な知識を持ち、製品やサービス、ベンダーのスキルを目利きできなくてはなりません。そんな彼らが、経営や業務について学び、新しいテクノロジーを使うことで、自分たちのビジネスをどのように変革できるのかを提言する役割を担います。
この両者が自分たちのITを作り育ててゆく責任を負うことになるのです。こういう人材を持つことは、これからの経営や事業を支える上で、これまでにも増して大切になってゆくことを理解しておかなくてはなりません。
セキュリティ・アーキテクト
個人情報にアクセスできる人を技術的に限定することは難しいことではありません。また、誰がいつその個人情報にアクセスしたかの記録を確実にとることも容易に実現できます。しかし、定期的にアクセス記録を確認する業務手順がなければ、権限を与えられた人が個人情報を盗んだとしても分かりません。
インターネットを介して提供されるサービスでどのような情報をお客様から取得するか、あるいは提供するかは技術の問題ではなく業務の問題なのです。また、取得した情報をどのように取り扱うのかも業務側で決めなくてはなりません。また、「情報として何を守るのか」を決めるのも業務側の話です。「情報は全て完全に守られなければならない」とすれば、それには膨大な費用がかかります。
「仕組みとしてのIT」は、業務の手順や手続きをITによって実現することです。セキュリティ対策も業務とITの両方の目線から考えてゆかなければならないのです。そのためには、サイバー・セキュリティについての専門的知識を持ち業務プロセスについても精通した専門家である「セキュリティ・アーキテクト」という役割も必要になるでしょう。
データ・アーキテクト
IT使ってビジネスの革新を模索し、これを実現するのが「ビジネス・アーキテクト」と「テクノロジー・アーキテクト」です。こうして実現した情報システムは膨大なデータを生みだします。このデータを分析し、ビジネスに役立つ洞察や知見を引き出す専門家が、「データ・アーキテクト」です。
彼らは、経営や業務上の課題を正しく理解し、データに内在する関係や傾向を統計的な知識や手法、あるいは人工知能などを駆使して分析し、課題解決の手段や問題の原因、最適化の方法を探り出します。
例えば、次のような仕事です。
- ECサイトへのアクセスから生みだされる膨大なデータから顧客がどう行動するかのパターンを推論し、最も売り上げが上がるページの配置や商品の紹介方法を提案すること
- ソーシャルメディアで交わされている会話を分析し自社の商品の評判やクレームなどを見つけ出すこと
- 製造工程での計測データやその後のクレーム対応状況から、製品の欠陥や不具合を見つけ出すこと など
彼らがこのような役割を果たすためには、次の3つのスキルが求められます。
- データ分析のための統計学の知識とこれを使いこなす解析スキル
- 業務や経営の課題を整理し、わかりやすく表現・説明できるコンサルティン・スキル
- データを解析するためのプログラムを書くことや解析ツールを使いこなすためのITスキル
ITがこれまでにも増して経営や事業と一体化してゆけば、そこから生みだされるデータは、経営や事業の実態そのものです。そのデータを生みだされるままに死蔵し活用しないというのは、なんともったいないことでしょうか。それ以上に、様々なリスクや課題を見逃すことにもなりかねません。
ITが生みだすデータはもはや企業内部に留まりません。インターネットやクラウド、IoTを介してお客様の属性だけではなくその利用シーンをもデータとして捉えます。膨大なデータ(ビックデータ)が集まってきます。データは膨大であればあるほど、埋蔵される価値は大きなものとはなりますが、ビジネスに役立つ洞察や知見を見つけ出すことは難しくなります。だからこそ、それを分析するための統計学や人工知能に精通し、ビジネスの価値に転換できる専門家である「データ・アーキテクト」が必要になるのです。
経営者
経営者がここに紹介した「アーキテクト」になる必要はありません。しかし、ITの価値を正しく理解し、そういう人材を育て、確保することは経営者の責任です。「ITと一体化したビジネス」が経営を支える基盤となり、競争力を牽引する役割を担うようになれば、その重要性はますます高まってゆくでしょう。
「ITが分からないから」という言い訳で思考停止にならないことです。エクセルやパワーポイントが使いこなせないことと、ここで申し上げている「ITの価値を正しく理解」することとはまったく次元の異なる話です。
もはや経営はIT抜きでは語れないこと、そしてITの使い方次第で経営や事業が大きく左右されることを自覚しなければなりません。
「ITは分からないので専門家に任せておけばいい」
「ITの連中は業務のことに口出しするな」
「こちらで業務は考えるから情報システム部門はその通り作ればいい」
もはやそんなことを言っている時代ではないのです。ITは経営や事業と一体で取り組んでゆくべきことだということを受け入れなくてはなりません。
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- あらゆるものをつなげる:インターネット
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