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フロンティアAI時代におけるセキュリティ戦略再構築の視点

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ガートナージャパン株式会社は2026年7月23日、セキュリティ・リーダーが持つべき視点とアクションに関する提言を発表しました。Anthropic MythosをはじめとするフロンティアAIの攻撃利用が議論される中、IT全体の活動が非決定論的となり、マシン・スピードで生じる脅威への対抗が急務となっています。国内外の拠点やサードパーティを含めた包括的な管理と、プロアクティブな防御体系への切り替えが求められています。

今回は、フロンティアAI時代における脅威の非決定論化と優先順位の再構築、面的リスク評価とランタイム・ディフェンスによる動的防御の実装や、部門間の認識ギャップ解消とプロアクティブな防御体系への転換、そして、今後の展望について取り上げたいと思います。ChatGPT Image 2026年7月23日 19_06_22.png

フロンティアAIの台頭に伴うセキュリティリスクの地殻変動

Gartnerが2026年7月に実施した調査によると、Anthropic MythosのようなフロンティアAIのサイバー攻撃利用に関する報道を受け、多くの組織がセキュリティ取り組みの優先順位を見直しています。対策強化の方向性として上位に挙げられたのは、国内外の拠点やサードパーティを含めたセキュリティ・リスク・マネジメント、および基本となる脆弱性マネジメントです。これらに続いて、先制的サイバーセキュリティ、セキュリティ・オペレーションでのAI活用、継続的な脅威エクスポージャ管理であるCTEMが挙げられています。

従来型のセキュリティ対策は、自社内の本社環境や限定された境界線を防護することに重きを置いていました。しかし、高度なAI技術がサイバー攻撃に流用される局面においては、攻撃の進入経路がサプライチェーン全体へと広がります。単一の組織内にとどまらない広範な環境を対象とした管理体系への移行が進み始めています。ガートナーのアナリストである礒田優一氏は、脆弱性マネジメントの対象を国内外の拠点や外部パートナーまで拡張し、CTEMへと取り組みを進化させる必要性を指摘しています。先行して攻撃に備える意識の高まりは、セキュリティ戦略の根本的な再構築を促す要因となっています。

非決定論的システムがもたらすマシン・スピード脅威の構造

AIや生成AI、AIエージェントの浸透に伴い、IT環境におけるすべてのアクティビティは非決定論的な性質を帯びるようになっています。出力や動作の予測が困難である性質はAIの利便性をもたらす一方で、想定外のリスクや新たな脅威を次々と生み出す要因ともなります。さらに、攻撃者がAIを技術基盤として導入することにより、サイバー脅威は人間が手動で対処できる速度を超え、マシン・スピードで発生する事態に至っています。

このような環境変化に対して、従来のリアクティブな防御設計では対応が困難です。ガートナーのアナリストである矢野薫氏は、流動的な脅威に対処するためには企業側が攻めの姿勢を持つことが重要であるとしています。従来の境界型防御や定期的な事前評価だけでは、リアルタイムに生成・変化する脅威を防ぎきれません。ITシステム全体の非決定論的な挙動を前提とした上で、即座に対応可能な防御構造へ切り替えることが、企業の継続性を担保する判断基準となります。自動化された攻撃には自動化された防衛手段を組み合わせる発想が不可欠であり、セキュリティのアーキテクチャ全体に動的な柔軟性を組み込むことが求められます。

実効性を阻む現場の脆弱性認識ギャップと統制上の課題

技術主導の防御策を推進する上で大きな障壁となるのが、組織内における脆弱性への認識の隔たりです。ガートナーの調査結果では、AIに対するリスクをより身近に感じ、利便性などのメリットよりもデメリットや脅威を警戒する声が増加傾向にあります。しかし、専門知識を持つセキュリティやIT部門と、業務でAIを利用する非IT部門との間には、リスクの深刻さや対策の必要性に対する認識ギャップが存在しています。

現場におけるシャドーAIの利用や不適切なAI運用の広がりは、可視化や検知の取り組みだけでは制御しきれません。ガートナーのアナリストである鈴木弘之氏は、部門間の壁やコミュニケーションの課題を乗り越える必要性を強調しています。セキュリティ部門が脅威を認識していても、非IT部門側で適切なセキュリティ行動が伴わなければ、脆弱性は放置されることになります。また、自律的に動作するAIエージェントの管理においては、従来の固定的な統制ルールが通用せず、現場の運用とセキュリティ統制との間で摩擦が生じる事例も想定されます。

AI SPMと先制的サイバーセキュリティによる防御軸の転換

マシン・スピードの脅威や非決定論的リスクに対応するための代替アプローチとして、新たな技術群の活用と先制的サイバーセキュリティへの転換が検討されています。リスク評価の観点では、ユーザーの利用実態を把握した上で、AI SPMなどのツールを活用してクラウド、データ、アイデンティティ領域を面的に監視する手法が基本姿勢として提示されています。事前の脆弱性チェックをすり抜ける脅威に対しては、AIアプリケーションの実行時に評価を行うAIランタイム・ディフェンスや、自律的に防衛を行うガーディアン・エージェントの導入が有効な選択肢となります。

さらに、プロンプト・インジェクションやハルシネーション、AI不正利用といった事象への対策として、攻撃が発生してから対応するリアクティブな手法から、攻撃を事前に予測して阻止するプロアクティブな防御へシフトすることが推奨されます。先制的サイバーセキュリティには、自動化された動的ターゲット防御や予測型脅威インテリジェンス、自動化されたエクスポージャ管理が含まれます。従来手法に頼り続ける戦略と、高度なテクノロジを試行錯誤しながら積極的に組み込む動的アプローチとの間で、企業の防衛能力に明確な差が生じると考えられます。

組織の壁を越えたセキュリティ基盤の再構築と戦略的推進

フロンティアAI時代において競争力を維持するためには、システム追加にとどまらず、組織構造と運用プロセスを統合的に再構築することが重要です。ガートナーが提言する即座に行動すべき施策として、脆弱性に関する部門間の認識ギャップ解消、ペネトレーション・テストなどの検証手法の高度化、そして先制的サイバーセキュリティ技術の導入が挙げられています。攻撃側がAIを活用する現状を踏まえ、防衛側もAIを使いこなすスキルを修得し、攻撃手法を先行して学ぶ姿勢が必要とされます。

この転換を実行に移すにあたり、経営陣や事業部門責任者は、セキュリティを予算消費や管理業務として捉えるのではなく、事業継続性を支える戦略的投資として位置づける必要があります。自社組織内にとどまらず、国内外の拠点や外部パートナーを包括する管理範囲の拡張を進め、CTEMの実践を通じて脅威エクスポージャを継続的に削減する態勢を整えることが望まれます。縦割り組織の弊害を排除し、AI技術を柔軟に使い続ける取り組みを進めることが、激化するサイバー環境における持続的な防御基盤を形成する鍵となります。

今後の展望

フロンティアAIの高度化とAIエージェントの普及が進む中、サイバー攻撃と防衛の攻防はさらなる自動化と高速化のフェーズへ移行することが予想されます。サードパーティを含めた供給網全体の脆弱性管理と、AIランタイム・ディフェンスやガーディアン・エージェントをはじめとする先進的技術の適用が連動することで、企業のセキュリティ防衛線は従来の点から面へと根本的に再編されていくと考えられます。

組織内の部門間ギャップを解消し、敵味方の双方で活用が進むAI技術を恐れずに正しく使いこなす変革を推進できるかどうかが、今後の企業レジリエンスを分かつ要素となります。進化する脅威環境に対し、先頭に立ってプロアクティブな防衛体系を構築し続ける柔軟な姿勢を持つことが、企業の信頼性と持続的成長を担保する上で大きな鍵を握ることになるでしょう。

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