結果から方法を考える 納得の提案はそうやって作られる
「社長からメインフレームを辞められないかといわれてねぇ。どうすれば良いだろうか。」
情報システム部長にこんな相談を頂いた。
「メインフレームを辞めることですか。それとも、IT予算を削減することですが。社長が臨んでいるのはどちらなんですか?」
私のこんな質問に彼は次のように答えた。
「それは予算を削減することですよ。ただ、メインフレームのアウトソーシングや運用管理が予算のかなりを占めているので、どうしても目立ってしまって、社長もそういうことを言い出したようだ。」
私は次のように話した。
「メインフレームは停まることのないとても信頼できるシステムです。アプリケーションも安定しています。もしこれをPCサーバーに移行すれば、数千本のプログラムを単純に移行するだけで数億では足りないでしょう。しかも、メインフレームのような信頼性はありません。新しく作り替えるわけですから予期せぬトラブルも心配です。大金をかけて移行して、新しい付加価値も生まれず、システムも不安定になる。情シスがものすごく苦労しても何も報われないどころか、減点評価されてしまう。そんなプロジェクトをほんとうにやりたいと思いますか?」
もちろんノーだ。そこで、いまのシステムはそのままにコストを下げることにした。詳細は割愛するが、現状を変えることなく年間数億円のコスト削減に成功した。ただ、新たな業務ニーズに応えるためにはメインフレームで稼働している既存システムでは限界がある。いずれはシステムを全面的に刷新する必要があり、そこで新たな投資が必要であることも社長に伝えておいた。
お客様の「あるべき姿」はメインフレームを辞めることではなく、コストを削減すること。昨日のブログでも書いたが、お客様の「あるべき姿」を合意し、その実現を目指さなければお客様の満足にはならない。
こんなケースもある。
「若手中心の合宿研修をしたいのですが、以前私も受けさせて頂いたITのトレンドや営業スキルの研修をお願いできないでしょうか。」
あるITベンダーの社長からこのような相談があった。
「ご意向は分かりました。ところで、なぜこのような研修をしたいのですか。別の言い方をすれば、この研修でどのような結果を期待されますか。どんな研修をするかは重要なことではありません。研修が終わった後に、受講者がどのような状態になっていることを期待されているのでしょう。」
彼は、次のように応えた。
「自発性がないというか、言われた仕事はちゃんとやってくれるんだけど、自ら仕事を作るとか、工夫するとか、十分じゃないと思っています。任せた仕事もひとつひとつ確認しなければなりません。安心して、仕事が任せられないんですよ。この点を何とかしたいと思っていて、この研修もそのためにできればいいなぁと思っています。」
私は次のように答えました。
「安心して仕事を任せたい。ならば、任せて安心な自分になるために何ができるかを考え、自分で気付かせること。そして、そのための目標やアクションプランを作る研修としてはどうでしょうか。」
そのための研修を実施することとなった。
お客様が求めているのは結果であって手段ではない。しかし、手段の議論ばかりに時間を割き、結果は成り行き任せでは相手の満足など得られない。徹底して、結果を議論して相手と合意することだ。結果が出せるのであれば、手段は任せてもらえばいい。もちろん手段についても「なるほどこのやり方なら結果が出せる」と相手を納得させられる説明がなくてはならない。
結果から方法を考える。そして、そのロジックを相手に納得させることだ。機能や性能を自慢するのではなく、結果を得るための物語を紡ぐことに十分な時間をかける方が賢明だろう。
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人工知能に関連した記述を増やしたこと、および、ITや情報システムの基礎的な知識については、「新入社員のための研修教材」として切り出し、そちらでより詳しく解説しています。
【サービス&アプリケーション編】(204ページ)
*スマートマシンと人工知能について、資料を刷新致しました。
- 2045年までのスマートマシンのロードマップを追加しました。P.119
- スマートマシンが労働にもたらす影響について追加しました。p.126-128
- 自動運転車の動向について追加しました。p.129-130
- 人工知能についてのページ順序を変更しました。
- 従来の機械学習とディープラーニングの違いを図表に組み込みました。p.149-150
【ビジネス戦略編】(86ページ)
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