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【図解】コレ1枚でわかる「ソリューション」という言葉の本当の意味

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「ソリューションという言葉を安易につかわないほうがいい」

ソリューションという言葉を使うことに抵抗があるとか、あえて使わないようにしているという方が、いらっしゃるようです。

このような意識の背景には、「他人の課題を解決できるなどと偉そうなことを言うべきではない」という正義感とでもいうか倫理観とでもいうか、そんな意識があるのかもしれません。また、「ソリューションという言葉の意味があいまいで、自分で自信を持って使えない」という方もいらっしゃるのかもしれません。

どちらにしても、「ソリューション」という言葉を十分に納得できないままに使うことに抵抗があるという、きわめて真摯な思いが背景にはあるのでしょう。

確かに、IT業界では、この「ソリューション」という言葉が、安易に使われているようです。

本来、「ソリューション」とは、「お客様の課題を解決すること、あるいは、その解決の手段」です。しかし、実態は、「わが社のソリューションは・・・」と称して、自社の商材を「ソリューション」という言葉に読み替えているだけの人も少なくありません。

それでは、どう考えても、「お客様の課題」の解決ではなく、「自分たちのノルマを達成し、売り上げを上げる」ための「自分の課題」を解決する行為に過ぎません。「ソリューション」という言葉が、このような安易な使われ方をされることにも、抵抗感を感じる方はいらっしゃると思います。

では、IT業界の中で使われる「ソリューション」とは、いったいどういう意味なのか。歴史的な背景をも振り返りながら、考えてみたいと思います。 

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「ソリューション」の字義は、「解決または、解決策」です。では、何を解決するかといえば、お客様の課題を解決することです。ならば、解決すべき対象である「課題」とは、なんでしょうか。

「課題とは、お客様がこうありたいと"望んでいる姿(あるべき姿)"と"現状"との"ギャップ"」です。

たとえば、"あるべき姿"が、「売上高を100億円にする」と考えているお客様がいらっしゃったとしましょう。しかし、このお客様の"現状"は、「売上高が80億円」です。とすると、「20億円足りない」という"キャップ"が存在します。すなわちこれが、「課題」となるわけです。もし、あるべき姿と現状が一致しており、ギャップがなければ、課題は存在しないことになります。

このギャップを解消することが「課題を解決する」ことであり、その手段を「解決策=ソリューション」と考えれば、課題とソリューションの関係をすっきりとご理解いただけるのではないでしょうか。

ですから、「ソリューション」を提供するためには、まずお客様の望んでいるあるべき姿と現状を明確にする必要があります。お客様とこれらについての話もせずに、冒頭「わが社のソリューションは・・・」と演説することが、いかにソリューションという言葉からは程遠いものであるかは、いうまでもありません。

プロダクトやサービスなどの商材は、「お客様の課題を解決(=ソリューション)するための手段であって目的ではないのです。

お客様は、プロダクトやサービスをほしいわけではありません。また、あなたの会社を採用したいわけではありません。自分たちの課題を解決したいのです。その課題を解決してくれる確実な手段を提供してくれるのであれば、結果として、あなたの会社を採用してくれるはずです。この順序がひっくり返っては、いないでしょうか。

ところで、IT業界でソリューションという言葉が使われるようになったのは、1980年代頃ではないでしょうか。このころのソリューションは、プロダクトより上等なもの、あるいは、「わが社は、他社とは違いますよ」というキャッチフレーズとして、「ネットワーク・ソリューション・カンパニー」とか、「トータル・ソリューションをお届けします」というような使われ方をしていました。

それ自体何も間違えではありませんが、なんとなくあいまいなままに使われていたように思います。そのひとつの転機になったのが、1990年代の半ば、IBMの定義したソリューションの意味です。

かつてIBMは、メインフレーム(大型汎用品ピューター)が事業の柱でした。しかし、世の中がメインフレームからミニコンやオフコンへと関心が移る中、IBMは、メインフレームのアーキテクチャの一貫性をウリに、プロセッサーから端末、ソフトウェアを含むすべてのコンポーネント、そして、開発、保守にいたるまで、IBM一社に任していれば、その組み合わせを一切保証し、安定的な運用をお約束しますといって対抗していました。

確かに、デファクト・スタンダードやオフープン・スタンダードというものは、怪しいものでした。多くのベンダーが、わが社の製品は、これらにすべてに準拠して作られていますというのですが、いざ組み合わせてみると、うまくつながらないこともしばしばです。そんなことをクレームすると、「どうも、相性が悪いようです」となんだかよくわからない答えしか返ってきません。しかし、コストの安さと自由度の高さは如何ともしがたく、この「ダウンサイジング」の流れは、ますます広がっていったのです。

しかし、組み合わせの一切をメーカーに任せることができたメインフレームと違い、メーカーが異なるミニコンやオフコンの組み合わせは、ユーザー自身が、責任を持たなければなりません。

確かに、TCA(Total Cost of Acquisition = 取得のコスト)は、大幅に下がりました。そして、各部門の裁量で部門マシンが増殖してゆきました。しかし、その結果として、組み合わせや運用にかかわるユーザーの負担やTCO(Total Cost of Ownership)は、むしろ増えてゆきました。

そんなころ、IBMのCEOになったのがルイ・ガースナーです。彼は、IBMとしては、初めての社外からのCEOで、IBM社内では「コンピューターの常識を知らない人物だ」と、ささやかれたものです。

そんな彼は、このお客様の現状をみて、「お客様の課題」を解決しないのは、おかしいと考え、「IBMだけではなく他社の製品も含め一切の組み合わせに責任を持つ」と宣言し、それをソリューションといい始めたのです。そして、このソリューションを実現するサービス事業を「システム・インテグレーション」と定義したのです。

「ソリューション」という言葉をどう解釈するかは、人それぞれです。このIBMの解釈が唯一の正解というわけではありません。ただ、この解釈には、「ソリューション」の本質についての教訓が込められているように思います。

余談ですが、IBM時代のガースナーはこの「ソリューション」の概念をさらにすすめ、お客様の課題解決に貢献するためにはサービスやソフトウェアへとシフトしていかなければならないとし、コモディティ化とダウンサイジングによって収益率が低下するハードウェア主体のビジネスの転換を推し進めていったのです。

さて、このことからも分かるように、「ソリューション」とは単一の商品を意味するものでもなければ、プロダクトより上等なものというキャッチフレーズでもありません。

「お客様毎の個別の課題を起点として、これを解決するための手段(プロダクトやサービス)の組み合わせを提供すること」

このように考えて見ては如何でしょうか。

どうでしょうか、ソリューションとは何かが、少しははっきりしたでしょうか。このようなことが分かっていれば、「ソリューション」という言葉も、もっと自信を持って使えるようになるのではありませんか

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