伝わるプレゼン・チャートの作り方
「中身が大切、見た目は二の次」
プレゼンテーション・チャートについて、このように考える方もいらっしゃるようですが、私はこれについては承服しかねます。
伝えようとするメッセージを突き詰めれば、自ずと枝葉は落とされ幹だけが残ります。その残った幹の言葉をどのように配置するかをさらに突き詰めることで、伝えたいメッセージの文脈や構造を描くことができるのです。つまり、配置の仕方もまた大切なメッセージなのです。
そういうことを突き詰め、結果として美しいと感じられたとき、自分の伝えたいメッセージは完成するのです。つまり、見た目の「美しさ」は、そのチャートが完成したかどうかの客観的判断基準といえるでしょう。
もちろん「美しさ」は主観的な感覚です。だれもがそれを美しいと感じてくれる保証はありません。だからといって、自分で美しいと感じられないものをそのまま世の中に出してしまうのは、あまりにも無責任ではないでしょうか。せめて自分の基準に照らし合わせ、「美しい」と感じられるレベルに仕上げることが、礼儀ではないかと思います。
自分なりに美しいと感じたチャートも、世間の目に晒せば、ご批判を頂くこともあります。それを真摯に受けとめ、改めて反芻することで自分の「美しさ」についての感性を磨いてゆくことができるのだと思います。
また、表現のスタイルは人それぞれです。自分なりの「美しい」のスタイルを作り、自分なりの「美しい」の基準を作り上げていくことです。そして、それを評価できる自分の感性を磨いていくことが、「伝える」という行為において、大切なのだと言うことを自覚することが、プレゼンテーションのスキルを磨くことになるのでしょう。
では、どのようにして、そういうチャートを作っているのかをご紹介したいと思います。
このチャートは、「2016年のITビジネス戦略を牽引するキーワード」をテーマにまとめたものです。詳しい解説は、こちらに掲載いたしましたので、よろしければご覧下さい。
毎年、正月にこのようなチャートを作っています。それは、自分が今年何を勉強し、何を伝えてゆかなければならないかを考えるためです。しかし、「今年のキーワード」といっても何が重要なのかは混沌としています。そういうとき、はじめからパワーポイントやワードなどを使ってしまうと、どうしてもそのツールの「使い方の制約」に拘束され発想が制限されます。そこで、まずは手描きの殴り書きで発想を広げます。そんな最初のチャート(?)はこんなものです。
思いつくままにキーワードを並べ、何とかうまく配置できないかと試行錯誤です。そんなことをやっているうちに、なんとなく「構造」のようなものが見えてきました。
そして、「いい感じ」の下書きが出来上がりました。真ん中の黄色いところは、ポストイットを貼って修正したところです。
それをパワーポイントに描き写し、仕上げの試行錯誤の結果として完成したのが、このチャートです。
私なりに、「美しい」と感じることができました。ならば、これで良いだろうということで完了となります。
全てのチャートについて、これだけの下書きをしている訳では、もちろんありません。中には、最初からパワーポイントに描いてしまうものもあります。ただ、ほとんどは、取りあえず1枚、2枚の下書きを作ってみます。そうやって、自分の頭の中にある曖昧なイメージを「見える化」し、そのイメージが「わかりやすい」か、あるいは、「間違えはないか」といった検証をすることにしています。
頭の中にあるイメージなんてものは、所詮は自分に最適化されたイメージであり、自分には分かっても他人には分からないものがほとんどです。だから、まずは下書きをして、自分を第三者に置いて描いた絵を批判し、課題を洗い出すことにしています。「ここはわかりにくいのではないか」、「自分の知っていることを前提にしてはいないだろうか」、「わかりやすい論理構造をしているだろうか」といったことを、その下書きを眺め、いろいろといじくりながら「これなら伝わるだろう」というところまで、磨いてゆきます。
ご参考になりましたでしょうか。
やり方は、人それぞれ、絵のスタイルも様々です。そうでなければ、世の中は面白くありません。ただ、どのようなやり方であっても自分なりのこだわりを持ち続けることができれば、「伝わる」チャートが描けるようになり、結果として、プレゼンテーションで話す言葉も磨かれてゆきます。
「伝えたという自分の満足ではなく、伝わったという相手の真実を大切に」
ことしも、そういう仕事をしていければと思っています。
ご参考 >【図解】コレ1枚でわかる2016年を牽引する2つのキーワード
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今月の目玉は、IoTと人工知能についての記述を大幅に刷新したことと、これからのビジネス戦略について、新たなチャート&解説を追加したことです。是非、ご確認下さい。
*全ての資料(529ページ)は全て無料で閲覧頂けます。
【インフラ&プラットフォーム編】(246ページ)
・見栄えや誤字の修正を行いました。内容の変更はありません。
【アプリケーション&サービス編】(199ページ)
*IoTと人工知能について、大幅に資料を刷新致しました。
IoT
・「IoTとは何か」を新規に追加しました。P.14
・CPS(Cyber Physical System)についての記述を追加、修正致しました。p.17-20
・自動運転車について新たなチャートを追加しました。p.23
・モノのサービス化について新たなチャートを追加しました。p.28
・IoTに関する事例動画を刷新しました。p.49-52
人工知能
・8ページの新規プレゼンテーションを追加し、全体のストーリーを変更しました。p.139-153
【ビジネス戦略編】(84ページ)
・「テクノロジードリブンの時代」を追加致しました。 p.3
・「ビジネスの変革を牽引するテクノロジートレンド」を2016年版に差し替えました。p.4
・「ポストSI時代に求められるスキル」を追加しました。p.5
・社会構造の変革に関する記述を追加しました。p.6-8
・「顧客価値と共創優位」を追加しました。p.9-10