【図解】コレ1枚でわかる「権限委譲」
営業部長が、自分の部下に「この案件については、君に任せる。頼むよ!」と仕事を任せました。部下も張り切って、「分かりました!頑張ります。」とニコニコしながら意欲をみなぎらせています。そして、数日後、こんな会話がありました。
営業部長:「注文手続き、まだ進んでいないようだけれどもどうなっているの?」
担当営業:「山田課長に話をしたのですが、社内の手続きがまだなので、あと2、3日待ってくれないかとのことでした。」
営業部長:「この間、この件で設備工事を請け負っているM社の営業と別件で話をしたとき決裁がのびているので、まだ2~3週間かがかかるらしいと聞いたよ。(強い口調で、感情的に)なぜ、君は、そんな話も知らないんだね。君の話とは矛盾するじゃないか。」
さて、みなさん、どう思われるでしょうか。
「部長、それはないでしょう。もし、そんな情報が入っていたなら、なぜ彼にすぐに知らせないのですか?彼に任せたのなら、彼に全てを伝えるべきです。今になってそんなことを言うのはおかしいですよ。」
私ならそう申し上げると思います。こんなことをされると任された部下は意欲を失います。同時にこの営業部長は、この発言で自らの信頼も大きく損ねてしまうでしょう。
叱咤激励のつもりだったのかもしれませんが、少し意地悪に考えるならば、自分の方が、情報収集能力に優れていることを見せつけたかったのかもしれません。どちらにしても、この営業部長は、権限委譲のなんたるかを理解していことは確かなようです。
「権限委譲」とは、自分がやるべき仕事を切り出し、部下に委ねることです。一方で、失敗は自分が引き受けることを覚悟しなければなりません。
部下は仕事を任されたことを誇りに思い、やり遂げようと努力します。任された仕事が、彼の能力や経験を越えているからこそ、「やり遂げてみせる」という意欲が生まれるのです。彼が既に持っている能力の範囲で仕事を任せるのでは、仕事を押しつけられた、また仕事が増えたと感じるだけですから、彼にとっては、なんら成長の機会にはなりません。
一方では、不安もあります。「失敗したらどうしよう・・・」と。だからこそ、失敗の責任は自分にあることを任せた側は明確に伝え、一緒になって成功することを望まなければ、彼の成長のチャンスを奪うことになるのです。
権限委譲とは、単なる負荷の分散ではありません。責任を負わせ、意欲を高め、成長の機会を与えることです。
松下幸之助曰く、「権限委譲」とは「任して任さず」だそうです。
「好きでやりたいと思っている人に自分の仕事の一部お任せする。ただし、任せた以上はあまり口出しをしない。失敗しそうなときははっきり注意する。例え失敗しても、その責任は全て経営者自らが負う」
とも語っています。
「君に任せたよ」と言っておきながら、失敗の責任を負わない。「せっかくあいつに任せたのに、期待を裏切られたよ」。そういう人に限って「私は部下を信頼して仕事を任すようにしているんですよ」というのです。これは、「権限委譲」ではなく「責任放棄」です。
また、任せておきながら、細かいことにまでひとつひとつ指示をする「マイクロマネージメント」も、任された方としてはたまったものではありません。
「彼らは、言ったことがチャンとできない。だから細かく指示しないと失敗する。私の言うとおりやっていれば、失敗はしない。」
だから、失敗は彼らの責任(?)ということになるのでしょうか。これでは部下は意欲を持てません。
「まかせてくれたんじゃないんですか?だったらもっと自由にやらせてもらえませんか?」
彼の部下は、きっとそう思うに違いありません。
「責任放棄」と「マイクロマネージメント」。このふたつを同時に行い、それを「権限委譲」といってはばからないようでは、部下は育ちません。
もちろん任されたほうは、その結果に対してなんとしてでもやる、つまりはコミットしなければなりません。好きなようにやって、結果はどうでもいいという訳ではありません。自分がコミットできないのであれば、「権限委譲」を受け入れてはいけないのです。
任す方も任される方も、それぞれに自分の責任を果たす。そんなお互いの約束と信頼があってこそ、「権限委譲」はうまくゆくのです。
「最近の若い者は、言ったとおりのことをなかなかできなくて困りますよ」
「せっかく任せたのにできないなんて、彼にはがっかりです」
そんな営業マネージメントの嘆きを聞くことがあります。しかし、本心からそう思っているようでは、部下との信頼関係はお寒いものです。部下との信頼関係ができていないことを自ら公言しているようなものです。
「権限委譲」を部下の育成に役立てたいと思うのであれば、部下の見方、そして自分との関係をしっかりと築くことです。そして、誰のために、何のために権限委譲を行うのか。そのことをはっきり意識して、行動することが大切です。
最後に、「権限委譲」を行う上での考慮点をまとめておきます。
権限委譲で陥りやすい問題点
- 合意がないままの指示命令 → 本人の応諾を求める
- 業務内容や達成基準が曖昧 → 内容や達成基準を明確にして合意する
- 権限、判断はマネージメントに残す → 判断をゆだね、相談の機会を与える
- 詳細にわたり確認し、指示を与える → 達成状況について報告させる
- 報告、状況把握を怠る → 報告を求め、状況把握に努める
- シニア営業にばかり委譲する → 能力に応じて適宜委譲する
- 志願者を募る → マネージメントが専任する
- 情報を隠す → 情報をオープンにして共有する
- 相談の機会を与えない → 相談できることを明言し率先して時間を作る
権限委譲してはいけない業務
- 人材配置、評価などの人事に関わる業務
- 個人的問題への対応
- 事業戦略、中長期目標の設定 など
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目次
- 第0章 最新ITトレンドの全体像を把握する
- 第1章 クラウドコンピューティング
- 第2章 モバイルとウェアラブル
- 第3章 ITインフラ
- 第4章 IoTとビッグデータ
- 第5章 スマートマシン